【Campus Voice】7月19日開催『高校生と大学生のための金曜特別講座』

世界の経済の重心は、時代とともに変化していた

学問とは何でしょうか?また、なぜ学問研究は大切なのでしょうか?
受験生に限らず、人生で誰しもが一度はぶつかるであろうこの疑問には、様々な答えがあると思います。その一つ、学問研究の面白さや重要性をわかりやすく解説してくれる場が東京大学にあります。その名も『高校生と大学生のための金曜特別講座』です。
2019.7.19
レポート/学生ライター 川瀬 翔子(教養学部前期課程 理科二類 2年) 

『高校生と大学生のための金曜特別講座』とは?

今回ライターが参加したのは、様々な分野の専門家による講義を受けられる講演会、『高校生と大学生のための金曜特別講座』です。東京大学教養学部が主催するこの講座、今年でなんと17年目を迎えます。
事前の申込みは不要、無料で最先端の知見について講義を受けられるのですから、大変お得です。開催頻度は不定期ですが、各回金曜日の17:30から東京大学駒場キャンパスにて行われています。遠方の高校生のために、オンライン会議システムによるインターネット配信も実施されています。
開場時間の17:00から続々と人が集まり、5分前には200名ほど入れる会場がほぼ満席の状態でした。高校生、大学生はもちろん、小学生のお子さんを連れた親子から年配の方まで、幅広い年齢層の方が集っている様子でした。男女比はほとんど一対一で、今回のテーマ「グローバル化時代の中華世界:多様と流動のエチカ」への関心の高さが伺えます。
 
  • 駒場キャンパス18号館/近代的で綺麗な建物です

  • 今回の講座が2019年度夏学期の最終回でした

「グローバル化時代の中華世界:多様と流動のエチカ」中国と日本、今後の世界を見据えて

講師は東京大学教養学部教養学科・中国哲学がご専門の石井剛教授。21世紀に入って急速に成長してきた中国に焦点を当てて、ますます国際化する社会の中で多様な人々が共生するためのヒントを探ることを主題に据えてお話をされました。

「皆さんは、どこから来ましたか?」講演の冒頭、石井先生が質問を投げかけました。大学生の聴講者が「三重県から」と答えると、「その前は?」とすかさず質問が飛びます。「愛知県です」「その前は?」「お母さんのおなかの中です…?」「その前は?」「…」石井先生は、自分は祖父母までさかのぼれるけれどその先はわからない、とおっしゃいました。自分のRoot(根っこ)とRoute(通り道)を、自分を起点にして逆にたどっていくと、それは必ず1つではなくて、さかのぼればさかのぼるほど枝分かれが増えていきます。つまり、「どこから来ましたか」という質問への答えは「わからない」のです。

続いてスライドに現れたのは、ユーラシア大陸の地図です。よく見ると、いくつかの地点を結ぶ線が蛇のようにくねっています。「これは世界の経済の重心の遷移を表した地図です」と石井先生。1世紀の頃カスピ海付近にあった重心が、産業革命によってグーッと欧米・日本へと移動し、それが今また急速にアジア・中国付近まで戻りつつあることが読み解けます。「中国がここ百年ほどで目覚ましい発展を遂げていることは事実です」というお言葉を十分裏付けるものですね。

先生からのメッセージの中で最も印象的だったのは、「民族って何ですか。民族の枠は実はあいまいではないですか。これから先は、その枠にとらわれすぎず、地球に住む仲間として一緒に生きる道を模索することが大切なのではないでしょうか」ということです。
  • 満員の聴衆の前で、楽しそうにお話される石井剛教授

高校生に突撃インタビュー!

講座終了後、参加していた高校生の皆さんにインタビューさせていただきました!
埼玉県立所沢北高等学校ならびに神奈川県の横浜隼人高等学校に通う皆さんです。ご協力ありがとうございました。

Q.講座に参加した理由を教えてください。
高校1年生で理系に進学すると心に決めているけれど、視野を広げたいと思い参加した方、高校で所属する新聞部に記事を書くために参加した方、高校3年生でいよいよ受験に臨むにあたりモチベーションを上げるために参加した方、など様々でした。
 
Q.講座を受けて、どう思いましたか。感想を教えてください。
日中交流活動の一環として中国に行ったことがあるという横浜隼人高等学校3年生・Sさんは、知れば知るほど中国のことをもっと知りたいと思うようになる、と話してくれました。民族や経済を始め、ニュースの背後にある文化はなかなか簡単には見えてこないものでもあります。石井先生もおっしゃっていたとおり、「対話のための道を残しておくこと」「かならず対話の場を設けること」が本当に大切なことなのだと感じます。
 
Q.また参加したいと思いますか。次に参加するとしたらどのようなテーマの講義を聞きたいですか。
所沢北高等学校1年・Nさんは、薬学に興味があるので薬学の話を聞きたいと話してくれました。また、同じく所沢北高等学校3年・Oさんは、幅広い分野の最新の研究について知見を深めたいと教えてくれました。他にも、数学のn次元空間についての話が面白かったという意見や、将来は報道関係の仕事に興味があるので、メディアに関して大学で行われている研究があったら聞きたいという声もありました。
 

感想

講座が終わったあとの私の率直な気持ちを一言で表すと、「学問とは、なんて面白いんだろう」ということに尽きます。現代の社会に起きていることを取り出して様々な角度から分析してみることで、私たちは社会への理解を深めているといえるでしょう。この「理解を深めることの楽しさ」が学問研究の面白さということではないでしょうか。高校生、あるいはもっと早くからこのような学問の楽しさに触れることは、人生をより豊かなものに導いてくれるはずです。
もしこの記事を読んで少しでも興味を持ってくださった方がいらっしゃいましたら幸いです。ぜひ一度、金曜日の夕方の駒場キャンパスに足を運んでみてください!
 
「高校生と大学生のための金曜特別講座」概要
開催日時 不定期、金曜日の17:30~19:00
開催場所 東京大学駒場キャンパス18号館
対象・定員 高校生・大学生以外の方も大歓迎/定員約200名
申込方法 事前申し込み不要、先着順
※最新の情報については『高校生と大学生のための金曜特別講座』HPをご覧ください。