「地方から東京、そしてアメリカへ。東大はとても刺激にあふれて楽しい場所でした。」

桜
今回は、東大の経済学部経営学科を卒業し、現在は米国の大学で経営学修士号を取得中のH.Yさんに「大学生活」や「卒業後の進路」などについてお話しを伺いました。
 
2019.12.16
インタビュー・構成/本部ダイバーシティ推進課


【プロフィール】
H.Yさん
出身:長野県
出身学部:経済学部経営学科(在学中に1年休学して留学し、2014年卒業)。
卒業後の進路:卒業後、コンプライアンス関係のコンサルティング会社でコンサルタントとして働き、その後プロフェッショナルサービスの会社に転職して経営企画の業務を行う。現在は米国の大学で経営学修士号を取得中。
 

東京に憧れを抱いていた高校時代

――― 中学生、高校生の頃の夢は何でしたか。
 
中学生の頃は色々なファッション雑誌を読むのが好きだったこともあり、美容師やスタイリストに興味がありました。高校生の頃は、会計士に少し興味を持っていました。何かしら手に職を持つことを志向していました。
 
――― そうなんですね、その頃興味をもっていたことについても教えてください。
 
子供の頃からずっと活字を読むことが大好きでしたし、映画を見ることも大好きでした。田舎で育ったこともあり、海外に行く機会もなかったため、なんとなく本や映画の中で出てくる東京に興味をもっていた気がします。
 
――― そんなH.Yさんが進学先に東大を選ばれたのはどういった経緯があったのでしょうか。
 
東京で生活してみたかったという気持ちが大きいです。私は子供の頃から、大学に進学するのは医者や教師など学位が必要な仕事に就く場合だけと言われて育ちましたが、大学卒業後の進路なんて当時の自分にはイメージできませんでした。東京の大学生活は楽しそうだし、卒業後の進路も広がりそうだけど、そんな理由で特に将来の展望もなく進学するのにお金を出してもらうのはなんだか申し訳ないと思ったときに、東大ならお給料が高いバイトもでき、三鷹寮などもあり、最悪親に支援を受けなくても通えるのでは、という気がしたのです。

――― なるほど。何年生頃から東大を進学先に考えていましたか。
 
私の高校は大学進学指導に力を入れており、1年生の頃から成績がよい生徒には東大の受験を考えることを進めていました。東大なんて雲の上の存在のような気がしていましたが、そうした進路指導のおかげで高校生活の早い段階からなんとなく頭の片隅に進路の一つとして東大が入りました。
  • 紅葉 キャンパス

――― 経済学部に進学した理由について教えてください。
 
受験時点で文科III類にしたのは、語学が好きで、女子生徒の割合が大きかったからです。進学振り分け(現在の進学選択)で経済学部に進学した理由は大きく3つあり、1)消費者行動理論、マーケティングなどに興味があったこと2)学部終了後は就職すること3)前期教養時代の経済科目の成績が悪くなんとなく悔しかったこと、があります。
 
――― そうなんですね、他の学部と迷いませんでしたか。
 
社会心理学と結構迷いましたが、よりビジネス寄りの心理学に興味があり、院に進学しないのであれば自分のように企業のことを全く知らない人間は就職活動の意識が高そうな人が沢山いる経済学部がいいかもしれないと思い、最終的に経済学部に進学しました。

留学を通じての友人との出会い

――― 大学時代の印象に残る思い出はありますか。
 
立ち上がったばかりのインカレサークル(他の大学の学生と交流できるサークル)で、人生で初めて体を使う集団競技に参加し、大会に出るために練習しました。何かをみんなで作り上げるとても良い経験になりましたし、いろいろなモチベーションの人が集う、フラットな組織を運営するのって大変だな、という学びにもなりました。
 
――― そのインカレサークルに入ろうと思ったきっかけについて教えてください。
 
1年生の時に友人の舞台や作品を見て、刺激を受けたからでした。入学して最初の1年はただただ東京生活を楽しんでいましたが、友人に感化され、ボケーっとしている自分に焦燥感を感じたことがきっかけでした。
 
――― 大学時代に留学もされていますが、なぜ留学しようと思われたのですか。
 
もともと、何年か働いてお金がたまったら留学してみたいと思っていましたが、私の在学中に東日本大震災があり考えが変わりました。チャンスがあれば直ぐにやってみようと思い、たまたま見つけた留学エージェントのプログラムに応募しました。
 
――― 直ぐに行動されたんですね。
 
大学4年の春に留学を決め、そのまま卒業せず通常の大学卒業のタイミングで休学して留学しました。留学を決めてからの2年間は、物凄く充実して楽しかったです。留学前に東大の中の留学生の方との言語交換プログラムに申し込み、結婚式に呼んで頂ける位仲良くなり、その友人の友人達に案内して貰いながら東南アジアを旅行したり、アルバイトもいくつも掛け持ちする中で自分の適性を考えたり、留学先で中東やヨーロッパ等、これまで関わったことのない人たちと友人になったり。
 
――― 留学をきっかけに色々な方との出会いがあったんですね。気持ちの変化などはありましたか。
 
それぞれの場で色々な進路を選ぶ人と知り合う中で、自分ひとりが食べていくなら、なんとでもなりそう、と進路に対して楽観的になることができました。
  • 夜景

――― 卒業後はどのような進路を進まれたんですか。
 
卒業後は、留学時に縁があった企業に入社しました。東大で色々なベクトルでとても優秀な友人に出会う中で、こういう人たちが大挙して目指すような進路はちょっと自分には無理だなと思いました。ですので、新卒で入ったのは比較的ニッチな世界の会社でした。
 
――― そうなのですね。そのお仕事の決め手はどこにありましたか。
 
その会社では、職位毎のトレーニングがグローバルで実施されており、かつ新卒入社組はクロスボーダーのプロジェクトでの活躍が期待されていたこと、領域特化型のコンサルティングをしており、色々な業界について学びつつも、専門性が身につきそうだったことに魅力を感じました。どこかに手に職志向というか、経験を積みながら何かを磨き上げるようなことにあこがれを持っていたのですが、一方で自分はとても飽きっぽいことにも気がついていたので、色々できそう、という面もある最初の仕事は面白いのではと思っていました。
 
――― 働く場所について、こだわりはありましたか。
 
自分は地元で暮らすより東京で暮らす方が合っていると感じたこと、そもそも地元でのジョブオポチュニティーは非常に限られていたことから、東京中心で働くことを希望していました。
 
――― なるほど。米国にお住いの現在はいかがですか。
 
大学時代にアメリカで生活してみて、社会人になってきちんと力をつけて日本以外の場所でも一定期間働きたいとも思っていました。色々なことが重なり、卒業後米国の大学院で学生として再度日本の外で学ぶ機会を得ましたので、このまましばらくは米国で働いてみようと思っています。
 
――― これまでに転職は経験されましたか。
 
転職は過去に1回、そして卒業後また別の会社で働く予定です。
 
――― それはどんな経緯があったのでしょうか。
 
最初の転職は、コンプライアンスの仕事をしていく中で周辺領域の財務や経営が面白そうだと感じたこと、仮にコンプライアンス的な仕事をするにしても、財務や経営の知識や経験がないと広がりがないと感じたからです。領域特化型に入ったのはよかったのですが、自分にはそこまでその特化領域の興味や適性がなかったことが働いてからわかりました。

東大では色々なベクトルの非凡さがあることを知りました

――― 今の夢は何ですか。
 
まずは、家族と仲良く健康に生活していきたいです。これからまた今までとは全く違う環境で働くことになるのですが、新しい職場で自分なりの貢献の仕方や仕事のスタイルを作っていきたいと思っています。
 
――― そうなんですね。将来日本でお仕事されることはお考えですか。
 
長期的な目標として、どこかのタイミングで日本に帰って、それまでの仕事の経験を生かして、何か小さくても日本の経済に役に立つような活動ができればいいなと思います。
 
 
  • 安田講堂

――― H.Yさんにとっての東大のよさについて教えてください。
 
東大に行って、色々なベクトルの非凡さがあることを知りました。社会的な使命感を強くもっている人、物凄くバイタリティがある人、数理的な思考力が凄い人、バランスよく何でもできることにおいて非凡な人等など。そういう人たちに囲まれる中で、自分の世の中での位置取りについて考える機会をもてたことはその後の色々な人生の選択によくも悪くも大きな影響があったと思います。
 
――― 東大での経験が人生の選択に大きな影響があったのですね。
 
東大は私がいたとき以上に学部も含め留学生の方が増えていると思うのですが、そうした方(特に、大学まで日本と関わりが薄かった留学生)と日本人の学生の方が上手く混じるようなサポートがあるといいと思います。(当時も今もあって私が知らなかっただけという気もしますが。)
それから、とても難しいことだと思いますが、色々な経済状況や家庭環境の人にとって、門戸が開かれている学校であり続けて欲しいなと思います。
――― 最後に、高校生へのメッセージをお願いします。
 
周りにあんまり東大に進学した人がいない環境から東大を目指す学生さんも沢山いると思います。入学してみると、都会の進学校出身の人たちは塾や学校でネットワークがあったり、凄く優秀で要領がよくてびっくりしたり、なんとなく焦りを感じたりすることもあると思うのですが、それまでの環境や経験と東大での学びが合わさることで開けてくるものがきっとあると思うので、自分は自分で学生生活を楽しんでください。入学してみるとなんだかんだで、東大はとても刺激にあふれて楽しい場所でした。