夢を実現するため東大で天文学を学びたい

笠間さん
今回は卒業生へのインタビューを行いました。インタビューを受けて下さったのは、東大卒でリケジョの笠間縁さん。東大の理系ってどんなところ?学生生活ってどんな感じ?などなど、東大女子の先輩として、東大を目指す女子学生へ向けたメッセージをたくさん伺いました。
 
・笠間 縁(かさま ゆかり)さん
桜蔭中学・高校卒業、東京大学理科I類入学後、同大学大学院理学系研究科 物理学専攻 博士課程修了 博士(理学)。現職は三菱電機株式会社


2019.10.27
インタビュー/学生ライター白賀 可奈(教養学部前期課程 文科三類 2年)

天文学者になりたいという夢

子供の頃に、天文学者になりたいという夢を持っていた笠間さん。天文学者になりたいと思うようになった直接のきっかけをお聞きしました。
-天文学者になりたいと思うようになったきっかけを教えてください。
幼い頃によくプラネタリウムに連れていってもらったり、プレゼントに買ってもらった望遠鏡を持って、当時接近していたハレー彗星を見に富士山の五合目に連れて行ってもらったりなどで、星に興味を持つようになりました。そして中学校の卒業論文では、当時ニュースになった超新星爆発やニュートリノ検出などをテーマに書きました。その頃、東大で開かれた、超新星爆発についての一般向け講演会に、親に連れて行ってもらったのをきっかけに、宇宙の研究に強く興味を持ち、そこから東大を意識し始めました。

-すごいですね。では中学高校では天文に関わる部活動に所属されていたんですか。
天文部はあるにはあったのですが、活発な活動をあまりしておらず興味をひかれなかったので入りませんでした(笑)。
-そうなんですね。桜蔭の部活動は盛んなイメージがあったので意外です。
そうですね。先日、小学生の息子と一緒に、私立男子中学の見学に行ってきたのですが、天文部もすごく部活動が盛んで私のいた学校とは違うなと思いました。
-そうなんですね。私は公立中学出身で、サッカー部や陸上部などの運動部はあったけれど、そもそも天文部とかがなかったので羨ましいです。
天文部は世間的にもマイナーですよね(笑)。

 

東大への道のり

夢を実現するため東大で天文学を学びたいと決めた笠間さんですが、東大に入学するまでにどのような道のりを歩んできたのでしょうか。
-東大を目指そうと思ったきっかけを教えてください。受験勉強など入学するまでに苦労したことを教えてください。
東大を目指そうと思った直接のきっかけは、前にお話しました一般向けの講演会への参加です。私は宇宙を研究したいと思っていましたが、宇宙を研究できる大学が当時あまりなかったことと、親の希望で国立大学を目指していたので、東大・東工大などを視野に入れていました。親が自分の夢を応援してくれていたことや、理系の実験設備が充実していたことなどを考え、最終的に東大に決めました。
-ちなみに笠間さんのご両親は浪人することには賛成だったのですか。
どうでしょうかね。女の子だからあまり遠くに行かせたくない、ということはあったかもしれませんし、首都圏内に住んでいたので、わざわざ地方大学に行くことを親は想定してなかったみたいです。なので、私自身も浪人してでも東大に行くと決めていました。桜蔭は結構東大を目指す子が多くて、実際は1学年250人のうち浪人含め70人くらい東大に行きますね。周りにも目指している友達はたくさんいたので、東大は遠い存在ではなかったです。
-地方出身の子よりも目指しやすい環境にあったのですね。
そうですね。
-私も都内の学校に通っていましたので、やはり地方の学校と比べて情報集めには困らなかったです。卒業生のお話を聞く機会もあったのでよかったと思います。ちなみに受験勉強などに関して笠間さんは苦労した点はありますか。
中学高校生のときは遊びをそんなに知らなかったこともありますし、塾や講習に行くことは大変でしたが、周りの友人も受験のために頑張っていたので、私自身も受験勉強は苦ではありませんでしたね。特に答えが一つに決まっている数学と理科を勉強するのは楽しかったです。国語は答えがたくさんあって苦労しましたが(笑)。
-確かに国語などに関しては答えが参考書によってバラバラなものもありますよね。
そうですね。あとは、今考えると親はたくさんお金をかけてくれて大変だっただろうなあと思い、感謝の気持ちしかないです。
-そうですよね。
東大に入学後、笠間さんは一体どんな学生生活を送っていたのでしょうか。
-東大に入学後、サークルなど学生時代に打ち込んだことを教えてください。
これまでお話してきたように、元々天文に興味を持っていたので、大学に入って初めて天文部に入りました。天文部では星好きという同じ趣味を持つ人たちがたくさんいたので楽しく打ち込んでいましたね。合宿では先輩方も交えて自炊したり、夜空の星を見たり、すごく楽しかったです。駒場祭では半年間かけてドーム状のプラネタリウムを製作するなど、とてもいい思い出になりましたね。
-すごいですね。駒場祭で天文部のプラネタリウムは今でもやっているんですか。
やっていますよ。毎年好評で当日の入場整理券もすぐに配布終了してしまうので、もしよろしければ立ち寄ってみてくださいね。
-ぜひ行きたいです。私自身もイギリスに留学していた際に、グリニッジ天文台のプラネタリウムに惚れ込んで何回も行きました。また自然史博物館ではちょうど惑星についての展示会をやっていて、以来すごく惑星に興味を持つようになりました。
そうなんですね。本格的でいいですね。
-天文部の規模は大きいのですか。
そうですね、他大学からも来るので大きいですね。地文研究会という研究会で、天文部の他に、気象部・地理部・地質部の計4部が集まっていて、古くからある研究会です。天文部にはみんな宇宙が好きな人が多いのでそこでつながりもできました。私自身理科一類で入学して、宇宙を研究したいと考えたときに、理学部の当時のいわゆる物理3科(物理学科・天文学科・地球惑星物理学科)の違いや、どの学科に進めばいいのかを先輩に相談したりもしていました。
-すごい。いいですね。ちなみに天文部に女子は多かったですか。
そうですね。でも女子大の子が多かったです。文系の子達もたくさんいましたよ。
-面白そうですね。では天文部活動に打ち込んでいたんですね。
1、2年生の時はその天文部に打ち込みました。

同級生の今

笠間さんとともに学生生活を送ったリケジョたちは今、どのような分野で活躍しているのか。笠間さんにお聞きしました。                              
-同級生にはどのような仕事をしている方がいますか。
私は理学部の物理学科に所属していましたが、学部には女性が10人いました。学部卒業後10人の女性の内大半が大学院へ進学し、一部は銀行に就職した子もいました。修士修了後は約半分が外資系企業や銀行などに就職し、残りは私を含め博士課程に進みました。私は博士課程修了後に就職した稀なケースでしたが、博士課程へ進んだ女性の友人たちは今も主に研究職についていて、各地の大学の准教授になったりしています。

学生へのメッセージ

  • 笠間さんと白賀さん

最後に、東大女子の先輩として笠間さんから学生に向けたアドバイスを頂きました。

-勉強以外にも、高校生、大学生の時にやっておくべきだったなと思うことはありますか。
英語をもっと勉強しておくべきだったと思います。東大に入るための英語とは別に、やはり海外の方々と仕事をする時に会話力は必要だなと。留学などもしておきたかったなと思っています。
-仕事で英語を使ったりするのですか。
英語ができると海外に行けるなど道が広がりますよ。リスニングもできると会社から重宝されます。先輩からは以前、会議で相手の外国人が裏で話すヒソヒソ話を聞き取るのが重要なんだと聞きました。私には無理でしたが(笑)。あと最近では高校でも留学が増えましたよね。
-そうですね。私の高校でも留学に行ったり、留学生と交流したりする機会に参加する子はとても多かったです。今では小学生から英語を学ぶ機会もありますよね。
ええ。あと東大の女子学生の皆さんに伝えたいのは、男性より女性の方が優秀なんですということですかね。私の会社でも男性の中で働く女性はとても優秀です。就職活動の際、男性の多くは先輩とのつながりなどで応募してきますが、女性は自分のやりたい事をしっかりと持っていて光って見えます。でも会社側からすると、女性は結婚や出産の機会に辞めてしまうのではと危惧して、女性の採用数が少なくなってしまっているのだと思います。私も子供を生む前は深夜残業をしていましたが、出産後は保育園にお迎えのために残業は19時までという風にどうしても制約されてしまうんですよね。ですが、長時間ダラダラと仕事する若手の男性社員よりも、時間に制約のある中で効率よく働く女性を雇ったほうが、会社にとってコスパがいいのではないかとも思うんですよね。私の会社は女性が一割程度ですが、最近では子供を生むから退職するという女性は少なくなりました。私の会社にももっと多くの女性が入ってほしいと思っています。
-そうなんですね。ありがとうございました。

執筆者の感想

今回東大の卒業生にインタビューするのは初めてでしたが、貴重なお話をたくさん聞くことができて本当に良かったと思いました。幼い頃から天文学者になりたいという夢を持っていた笠間さん。その夢に向かって努力をし続け、今もいきいきと仕事に打ち込んでいると語った姿がとても印象的で輝いてみえました。私も笠間さんのようなかっこいい女性になりたいと思いました。皆さんも、夢に向かって何かに一生懸命打ち込む、そんな姿勢を大切にしてみてください。