東大駒場友の会 秋の講演会「教育研究の中のジェンダー@Komaba@Disney@Nerima」

講演している能登路先生
駒場祭期間中の11月23日(土)に、東大駒場友の会の主催する秋の講演会が開かれました。雨が降って肌寒い中でしたが、会場となった駒場キャンパス内のファカルティハウスには、東大駒場友の会の会員である現役学生の保護者や卒業生、教職員、学生など70人ほどが参加しました。

2019.11.23
リポート/学生ライター
明畠 加苗(教養学部前期課程1年)

第1部・能登路雅子先生の講演 「教育研究の中のジェンダー@Komaba@Disney@Nerima」

第1部は東京大学名誉教授の能登路雅子先生による講演でした。能登路先生は「教育研究の中のジェンダー@Komaba@Disney@Nerima」というテーマで、ご専門のアメリカ文化研究から西部開拓と女性、ディズニー世界とセクシュアリティについて、さらに個人的な社会活動のご経験から、住宅空間のジェンダー化について話されました。
家族でアメリカ西部へと向かっていった女性が書いた日記や手紙から、西部開拓のときの一般女性の苦労が伝わってくること。白雪姫が掃除するシーンが1分ほどあるアニメに象徴されるように、家事労働をして従順に男性を待つというのが今までのプリンセス像だったこと。大正時代に建てられた分譲の「文化住宅」では主人と女性・子どもの使用スペースがはっきりと区切られていたけれど、そのような中でも女性は家事をして家のマネジメントの主導権を握っていたこと。
能登路先生の興味深いお話に、会場の参加者も引き込まれていました。1時間を超える講演でしたが、時間があっという間に過ぎていきました。

第2部・ラウンドテーブル 「駒場と『ジェンダー』――昨日、今日、明日…」

第2部は「駒場と『ジェンダー』――昨日、今日、明日…」というテーマでのラウンドテーブルでした。太田邦史教養学部長と4人の教員、そして教養学部に所属する4人の学生がジェンダーをテーマに意見を交わしました。
「私にとって今の東大は、女子に対して女子であることを求めてくる場所です」「東大の門をくぐった瞬間に、私はマイノリティーになります」「ジェンダーの問題は、東大においてマジョリティーである男子学生の問題でもあります」学生が熱い口調で語ります。中でも女子学生たちが語った実体験は会場の参加者に衝撃を与えました。女子が打者のとき外野の男子は3秒待ってからボールを取りに行くという、ソフトボールの授業での過剰とも思える特別ルールの存在。フットサルサークルでプレーヤーになりたかったのに、女子だからという理由でマネージャーの役割を強要された経験。東大に存在するジェンダー問題の根深さが伝わってきました。
4人の学生が話した後には、先生方が自身の専門分野の観点や東大で指導した際の経験からジェンダー問題について話されました。太田学部長は、「学生がジェンダー問題について普通に考えられるような環境づくりを協力して行っていきたい」と述べていました。質疑応答の時間には、登壇した学生から太田学部長に鋭い質問が飛ぶ場面もありました。
 
  • 話をする学生

茶話会

講演会終了後の茶話会は、参加者同士、また参加者と登壇者が交流する時間となりました。筆者も茶話会に参加し、参加者や登壇者の感想をうかがいました。
ラウンドテーブルに登壇した女子学生は、東大の現状を知ってもらいたいという思いから登壇したと話してくれました。東大女子の生の声を伝えることができたのは大きかったと言い、この会をきっかけに少しずつでも東大が変わっていってほしいという期待も口にしていました。
参加した保護者の方は、第1部の講演会はテーマが面白く聞いていて興味深かったと話していました。また、第2部のラウンドテーブルについては、学生の真に迫った話から思いが伝わってきた、そこまで大変な状況に置かれていることが衝撃的だった、とのことでした。
この茶話会は、お菓子とコーヒーを手に、保護者の方やOG、さらには教授ともじっくりお話できる貴重な機会となりました。
 
  • 参加者と交流する登壇者

筆者の感想

能登路先生の講演会は非常に面白く、ジェンダー学の存在によって歴史や文化を見る上での新たな視点を得ることができるのを感じました。特に、白雪姫の鏡が男性の声であることは女性の美の基準を男性が決定していることを表している、という見方は興味深かったです。
ラウンドテーブルで学生たちの語った体験や思いは、筆者自身も多かれ少なかれ感じてきたことであり、聞いていて涙が出そうになりました。違和感を覚えても声を上げることを躊躇してきた筆者としては、学内に存在するジェンダー問題について声を上げた学生たちと先生方の勇気に敬意を表したいと思います。この問題提起を無駄にはせず、マジョリティー、マイノリティー関係なくあらゆる人の力で多様性にあふれたキャンパスにしてほしいと思いますし、筆者もそれに貢献できたらと思います。