【Campus Voice】卒業生インタビュー ~多くのことにチャレンジしてほしい~(大学院情報理工学系研究科博士課程修了 浜田玲子さん)

浜田さんと金さん
浜田 玲子さん(写真左)
東京大学工学部電気電子情報系卒業、東京大学大学院情報理工学系研究科修了。博士(工学)。
研究員等の研究職を経て、2012年 Google にソフトウェアエンジニアとして入社。Google 検索の開発に携わる。

2019.11.27
インタビュー/学生ライター
金 沙利(総合文化研究科国際社会科学専攻 修士1年)
―東京大学に進学しようと思ったきっかけは何でしょうか。
大きく分けて、2つあります。1つ目は、自分が学び続けたいと思ったら、アカデミアの世界に進みたいと考えていたからです。研究の道に進むにあたって、適切な環境であると考えたため、志望しました。2つ目は、入学当初から学部を決めずに、入学後に学科を選べる点に惹かれたからです。実際に、私は進学選択のタイミングで専攻をかえました。

―進学選択のタイミングで専攻かえられたのですね。
高校生のときは、生物が好きだったのですが、大学では、生物の研究にも化学の知識が求められてくるようになり、自分が想像していた勉強とは違うなと感じるようになりました。そのため、この先何を学ぶか悩んでいたのですが、様々な授業を受けているうちに、工学系にも関心を持つようになり、最終的に工学部に行こうと決めました。

―高校生のとき、なぜ理系の進路を選択されたのでしょうか。
ある先生の言葉がきっかけとなっています。「文系と理系の進路選択をする際に、『数学』と『英語』どちらが好きかで選択する学生が多いけれども、『理科』と『社会』どちらに興味があるかで決めても良いのではないか。」自分の場合、理科と社会という二分で考えたときに、より自分が関心を持っているのは理系の科目であることに気づきました。実際に、数学や英語はどこにでも役に立つと考えているので、こういった基準で、進路について考えてみるのもひとつの方法だと思います。

―先ほど進学選択時に専攻をかえられたとおっしゃっていましたが、理系の中でも最終的に情報工学系を選択された決め手は何でしょうか。
はじめは、自分が工学にそこまで興味があると思ってはいませんでした。ただ、コンピューター/情報系の知識や技術があると、他の分野でも活かせるということを聞いていました。例えば、生命科学と遺伝情報の配列をコンピューターで解くなど、ですね。そのため、まず情報工学系を専攻して、ある程度学んだ後に、関心があるものを見つけることができれば、その研究に移ろうと考えていました。実際、自分に合わなかったら、転科してもいいかなと考えていましたね。

―実際に情報工学系に進まれてどうでしたか。
そんな軽い気持ちで入ったので、知識も全くなく、非常に苦労しました。最初は、元からプログラミングをやっている学生たちに全然ついていけず、落ち込んだ時期もありました。しかし、一生懸命勉強して、それでもダメだったら転科しようと決意した後、言い訳できないぐらい勉強に励みました。その結果、プログラミングの授業も十分理解が追いつくようになりました。授業の内容が理解できるようになると、勉強が楽しく感じるようになり、結局修士まで進むことになりました。修士に進学後、さらに関心を持って学んでみると、修士の2年が短いと感じるようになり、最終的には博士課程まで進学しました。
 
  • 工学部1号館

―長い期間、研究されてきたと思うのですが、修士や博士課程の研究の中で、今お仕事に生かされていることはありますか。
研究の内容そのものというよりは、研究の過程で身についたものが役に立っていると感じます。例えば、ディスカッションや研究テーマを設定すること、計画通りに研究を進めること。また、自分のアウトプットを他人にわかりやすく、説得できるようにプレゼンテーションすること。こういったことが、ビジネスの基礎的なトレーニングになっていたなと感じます。また、学部時代、情報工学を学んでいたので、専門用語などは基礎知識として身についてこともあり、現在の仕事でも役に立っています。

―現在、社会人として働きながら、どんなやりがいを感じていますか。
人々の生活を便利にすることに貢献できるという点にやりがいを感じています。私が従事するソフトウェアエンジニアリングは、自分が行った少しのシステム改善でも多くの人に届き、役立つことができます。また、チームで協力して、目標を達成したとき、達成感を感じられる点でもやりがいを感じています。多くの人が、プログラマーやエンジニアは、1人で仕事をしているイメージを持っていると思いますが、実際には1人でできることには限りがあるため、チームワークを大切にしながら、仕事をしています。
 
  • 浜田さん

―チームワークを重んじているとおっしゃっていましたが、そのほかに特徴的な Google の文化はありますか。
最近はダイバーシティ&インクルージョンという言葉が社会でもよく使われますが、Google では非常に大切にしています。私が入社したとき、これに関して驚いたことがあります。入社後、最初のチームのリーダーが男性だったのですが、その人は、お子さんの送り迎えのために、早く帰宅していました。その姿をみて、性別に関係なく、家庭のために時間をつくることができる環境があることを実感しました。もちろん家庭事情だけではなく、言語や文化の違いやそれによる壁をなくすためのトレーニングもあり、個人が尊重される環境を作るための制度も整っています。

―この先のキャリアプランについて、今のお考えがあれば、教えてください。
私は、正直なところ、将来のことをまだ明確には描いていません。でも、その時々で、面白いと思うことを一生懸命やって、それを積み上げていくことは大切にしたいと思っています。明確に「10年後にこうなりたい」といったものは決めていないですね。決めない理由の1つとしては、業界の変化の激しさもあります。IT業界は変化が非常に激しいです。Google も少し前までは存在しない企業でした。さらに面白いサービスや企業が出てきたときに、その価値に気づくことができるような、そして周りから一緒にやろうと誘ってもらえるエンジニアでありたいなとは思っています。

―今後の進路選択を悩んでいる学生の方々に伝えたいことはありますか。
何でも挑戦してほしいです。まず興味があることにチャレンジしてほしい。あまり興味がないと思っていたこともやってみたら、面白いこともたくさんあるので、自分の可能性を広げるために、とにかく多くのことにチャレンジをしてみてほしいですね。
実際に Google でも学生たちにチャレンジできる機会を学生たちに提供しています。理系や文系といった進路選択をする前の女子中高生を対象にソフトウェアエンジニアリングの仕事の魅力を伝える「Mind the Gap」というプログラムなどがあります。Google のオフィスツアーをしたり、実際にエンジニアの仕事の簡単な体験をしてもらったり。私たちは、そこでエンジニアという仕事の選択肢があることを知ってもらいたいと思っています。これからもコンピューター業界は拡大していくし、需要も増え続けることが予想されます。しかし、圧倒的に供給の数が不足しており、この業界で十分な機会を得ることができるはずなのに、その状況が活かされていない現状があります。それを変えるために、情報工学に触れることができるようなプログラムやインターンなどを実施しています。ぜひ、こういった機会を通じて、情報工学に多くの学生の方々に関心をもってほしいと考えています。
 
おわりに

いかがでしたでしょうか。今回、浜田さんには、高校時の進路選択から現在のお仕事のことまで、いろんなお話をしていただきました。進路選択での悩みや、専攻を選択した後の葛藤は、多くの方が共感できるものではないでしょうか。当時の悩みや葛藤を等身大でお話しくださりながら、一方で、現在の仕事の話を非常に楽しそうにしてくださる浜田さんはとても素敵でした。

筆者は、インタビューを通じて、周りの視線を気にすることなく、まず挑戦してみることを今後大切にしていきたいと思いました。今の自分が「できること」にこだわらず、「やりたいこと」を大切にしながら、一歩ずつ前進していきたいですね。また、多くの人が、「やりたいこと」を素直に表現したり、取り組めたりする環境を作っていきたいです。

インタビューを受けてくださった浜田さん、ご協力ありがとうございました。また、記事を最後まで読んでくださったみなさま、ありがとうございました。