【Campus Voice】東京大学柏キャンパス一般公開2020同時開催イベント 「未来をのぞこう!」イベントレポート

写真:講演者・パネリストのみなさん(佐藤克文先生はオンラインでの参加)

今回は10/25(日)に東京大学柏キャンパス一般公開に合わせて行われた女子中高生向けのイベント、「未来をのぞこう!」に学生スタッフとして参加してきました。イベントの様子についてお伝えします。
 
2020.10.25
リポート/学生ライター
工藤 龍(工学部計数工学科 4年)

「未来をのぞこう!」とは?

「理系に進みたいけど、迷っている」
「将来理系に進んだらどんな生活になるのか、わからない」

「未来をのぞこう!」は、そんなふうに考えている女子中高生のみなさんのためのイベントです。理系分野で活躍する女性の方々や現役の研究者との交流を通して、理系を選択した人のリアルな日常の様子・最先端の研究を知ってもらうことを目的としています。女子中高生のみなさんの理系進路選択を応援したい、という思いから開催されています。

例年は、柏キャンパス一般公開に合わせて柏キャンパスで行われていましたが、今年はオンラインでの開催となりました。

前半は研究者による講演で、後半は理系を選択した女性や研究者によるパネルディスカッションという構成になっています。理系に進学することの魅力や理系に進んだ人の実情がよくわかるイベントでした!
  • 未来をのぞこう!ポスター

前半:理系で学ぶことの魅力

はじめに、「ウィズコロナ時代を支える新世代リケジョとは」と題して講演が行われました。講演者は、新領域創成科学研究科の大谷美沙都准教授と蜂須賀知理特任講師です。
 
お話は「なぜ理系に女子を増やしたいのか?」という疑問からスタート。日本の理工系は、国際的にみても女性の割合が小さく多様性がないが、多様性は重要だから女性を増やさなくてはいけない、というお話でした。多様性の重要さを生物学の例を使ってわかりやすく説明されていたのが、興味深かったです。
 
続いて出てきたのは、コロナウイルスの感染者数推移のグラフ。一見感染者数が大きく増えているように見えますが、それは本当なのか?といったことや、3月頃に研究者たちが急に感染拡大の危険性を訴えるようになったのはなぜなのか?といったことを説明してくださいました。また、コロナウイルスはお湯を飲むと死ぬなど、コロナウイルスに関係した様々なデマについても触れ、それらは科学的な証拠があるのかどうかを自分でチェックすることで見分けることができる、とのことでした。このように、グラフを正確に理解したりデマを見破ったりする能力は、理系で学ぶ中で身に付くもののようです。
 

 
理系で学ぶことでとても重要な力が身に付く、ということがよく伝わってくるお話でした!

後半:理系のリアル

続いて後半は、パネルディスカッションです。
 
パネリストは、柏キャンパスで研究の経験があり、理系に進んだ人の実情についてよく知る3名をお迎えしました。株式会社リバネスの秋永名美さん、東京大学海洋研究所の佐藤克文教授、物性研究所の研究室に所属する大学院生の倉持華子さんです。
 

パネリストの倉持さんと秋永さん


パネリストの佐藤教授

 
今回のディスカッションでは「高校生のときに理系を選択した理由」「理系の大学生活」「卒業後の進路」のように、これまでパネリストの方が経験してきたことを時間の流れに沿って伺いました。
 

なぜ理系を選択したのか

倉持:元々は歴史が好きだったが、歴史を知るよりも歴史を作る側になりたいと思い、理系を選びました。

秋永:もともと物理や数学は苦手だったのですが、実験が好きだったので理系に進学しました。

佐藤:私は家族や親族に理系の科学者や研究者が多く、自然と理系を選択しました。

みなさんそれぞれ異なるモチベーションで理系を選択したようです。「歴史を作る側になりたい」というのはとてもかっこいいですね!
 

どんな大学生活を送っているのか・送っていたのか

倉持:毎日キャンパスに通い、研究室で実験をしたり、ディスカッションをしたりしています。キャンパス内にお寿司屋さんがあるので、そこにたまにみんなで行きます!

秋永:私は大学院から分野を変えて、修士課程から柏キャンパスに来ました。もともとは物理系だったのですが、科学と社会のつながりを知りたく、サステナビリティ学を学ぶことにしました。在学中は、世界中の多様な研究者と出会えたことがとてもいい経験になりました。

佐藤:私の研究室は男女が半々で、子育て中の学生もいます。いろいろな人がいる環境で、みなのびのびと研究しています。

柏での研究生活は環境も良さそうですし、たくさんの人と出会えそうでとても魅力的ですね!
 

大学を出た後の進路選択について

倉持:私は卒業後、就職することにしています。就活のために情報収集する中で、様々な職業で理系の人材は必要とされているのだなと感じています。

秋永:私は現在、株式会社リバネスというところで働いています。この会社は「異分野に橋渡しをして新たな知識を生み出す」ということをテーマにしていて、先端の科学や研究を伝える実験教室、執筆、そして海外と日本をつなげる活動など、様々なことを行っています。最初は、物理学やサステナビリティ学で学んだことを仕事につなげるイメージが持ちづらかったのですが、その専門性の中で学んだ基本的な考え方は今とても役に立っていると感じています。

佐藤:今まで見てきた女性には、船酔いしにくいという特性を活かしてクジラの研究に打ち込んでいる方、一緒に研究していたがいつの間にか宇宙飛行士になっていた方など、いろいろな活躍をしている人がいます。

卒業後の進路も多様で、とても素敵です。宇宙飛行士、すごいですね…!


 

中高生のみなさんに向けて一言

倉持:物理系は理系の中でも特に女子が少ないですが、女子であるという理由で何かハンデを感じたことはありません。自分の興味に従って進路を決めてください!

秋永:柏でサステナビリティ学を学べたことは、大きな糧になっています。みなさんもこれから様々なことを学んでください。

佐藤:自分の特性を見極め、自分の選択を大切にしてください。また、努力の方向性を間違えないことも重要です。



今回のパネルディスカッションのお話は、「自分の意思で進路を決めていくことが大切」とまとめられるのではないでしょうか。興味があれば大学生の間に留学することもできますし、一度選んだ分野でもやってみて違和感があれば、分野を変えることもできます。そのときそのとき、自分がやりたいことに基づいて進路を決めることで、結果的にもいいことがあるのではないかと思いました。

また、パネルディスカッションの後は質疑応答の時間でした。「部活を辞めるか迷っている」「英語はどうやったら話せるようになるか」などの質問に対して、みなさん自身の体験を踏まえて話してくださいました。時間の都合で取り上げられなかった質問については、こちらのホームページで回答を公開しています。ぜひ見てみてください!

参加者の感想

イベント後の参加者アンケートでは、次のようなコメントがありました。

「今までよく知らなかった柏キャンパスでの研究について知ることができ、また、登壇された方々のお話が全て興味深く、楽しかったです。様々な可能性についてよりよく知ることができました。」

「夢を叶えるために工学部に行きたい気持ちが高まりました。」

「進路はいつでも変更できるという話を受けて、自分のしてみたい様々な学問分野を深く学んでみたいと思いました。」

「今回のイベントでリケジョという立場からいろいろな話を聞いたことで、学校でも男子に対して萎縮したり劣等感を抱いたりすることなく自信をもって生活しようという思いが強くなりました。参加して本当に良かったです!」

参加者のみなさんは、理系を選択するということについてよりイメージができるようになったことがうかがえました!

おわりに

今回のイベントでは、東大の先生や学生から、実際の経験に基づくたくさんのお話をうかがうことができました。進路選択に迷っている中高生のみなさんにとっては、とても参考になったのではないでしょうか?興味を持った方は、来年のイベントに参加してみてください!またこのイベント以外にも、東大では­­女子中高生のみなさんへ向けたイベントがたくさん行われています。こちらのページにまとまっていますので、ぜひチェックしてみてください。

また、今回は初めてのオンラインでの開催となりました。雰囲気が伝わりにくかったり、実際の建物をみることができなかったり、デメリットがあることも確かですが、「チャット機能で質問するので、とても質問がしやすかった」「オンラインだったので会場に行くことが難しい地域からでも参加することができた」などの意見も聞かれ、オンラインならではの良さもまたあったようです。私自身は東北出身で、このようなイベントにはなかなか参加できなかったので、このようにオンラインで参加できることは地方の学生にとってはとても良いことだと感じました。

大学では、文系でも理系でも様々な経験をすることができます。自分の好きなことがわからない、という方もいるかもしれませんが、お話にもあったように、途中で方向転換することは全く問題ないことです。あまり気負わず、中高生のみなさんはぜひ自分の興味に沿った進路選択をしてください!