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今回、国際女性デーに関連するイベント(オンライン)を東京大学として初めて開くこととなりました。
本イベントには東京大学の学生・教職員合わせて600名以上の申し込みがあり、ダイバーシティへの意識・関心の高まりを感じられる中での開催となりました。2021.3.9
リポート/学生ライター 高橋 由侑奈(経済学部3年)
※登壇者の肩書きはすべてイベント当時(2021.3.9)のもの
東京大学国際女性デー特別企画 「企業と大学トップが語る インクルーシブ社会への道すじ」
藤井輝夫理事・副学長
4月から東京大学総長に就任予定の藤井輝夫理事・副学長による挨拶からイベントは開始しました。ダイバーシティ&インクルージョンを進めるためには、女性のみならず男性も、ジェンダー問題について真剣に考え行動をおこしていく必要がある、と藤井理事・副学長は話します。これを受けて、モデレータの石井菜穂子理事から、今回は女性だけの講演ではなく、男女両性の登壇者による前向きな議論をしたいとの発言がありました。そして、東京大学の現・次期総長、企業のトップ、また東大に入学した学生が最初に所属する教養学部の次期学部長がそれぞれの決意表明や、経験、これからのダイバーシティ&インクルージョン教育などを始め「今後どのようにインクルーシブ社会を作っていくべきか?」ということを、様々な視点から議論していきました。
企業の取り組み、30%Clubの活動等
最初に、各登壇者に企業・大学での取り組みや経験、思いをお話しいただきました。
最初は、味の素株式会社 代表取締役 取締役社長であり、30% Club※のアドバイザリーボードの一人でもある西井孝明社長からのお話しです。経営者の視点から、ダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)は重要な経営戦略の一つだと言います。
※30% Club:2010年に英国で創設された、取締役会を含む企業の重要意思決定機関に占める女性割合の向上を目的とした世界的キャンペーンです。14ヶ国で展開されており展開国の数は増え続けています。
最初は、味の素株式会社 代表取締役 取締役社長であり、30% Club※のアドバイザリーボードの一人でもある西井孝明社長からのお話しです。経営者の視点から、ダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)は重要な経営戦略の一つだと言います。
※30% Club:2010年に英国で創設された、取締役会を含む企業の重要意思決定機関に占める女性割合の向上を目的とした世界的キャンペーンです。14ヶ国で展開されており展開国の数は増え続けています。
西井孝明代表取締役 取締役社長(味の素株式会社)
味の素社は「うま味を通じて日本人の栄養を改善したい」という、うま味の発見者である池田菊苗博士と創業者である二代 鈴木 三郎助の思いから生まれ、創業以来一貫して、事業を通じて社会価値・経済価値を共創する取り組みを行ってきました。現在は、「アミノ酸のはたらきで食習慣や高齢化に伴う食と健康の課題を解決し、人びとのウェルネスを共創します」をグループのビジョンとしています。しかし今、健康状態だけではなく、生活への満足感などの数値で測りにくい要素も考慮する必要が出てきており、このためにD&Iが欠かせないと言います。相反する利害を考慮する必要がある際、D&Iが実現されていれば、多様な価値観のもとで判断でき、よりよい状態を作ることができるのです。また、現在味の素グループにおいて、海外では女性管理職が多く、日本では女性管理職が少ない状況であるため、女性のリーダーシップを発揮するための問題は日本固有のものであると推測され、日本全体がこの問題に向き合っていかなければならない状態です。
味の素社では、D&I推進のために、長い間取り組みを続けています。社内で独自に行った調査によると、男女間で自己効力感不足、評価に対する不平等感などのスコアに大きな差があり、「会社に入ってもキャリアが見通せない」と考える女性社員が多いということがわかりました。このような課題を解決し、よりよい会社にしていくためには、制度・仕組みの整備、動機付け、リーダーシップ発揮などの要素が一つでも欠けてはなりません。これまでも、女性人材の育成委員会の発足や、メンター制度による女性管理職希望者を増やす試みをしてきており、2019年には社内出身の初の女性取締役が誕生するなど、女性活躍推進に関して積極的に活動をしてきました。
2021年6月には女性取締役比率が27%になる予定です。30% Clubにも加入し、トリプル30宣言として「2030年、取締役の30%、ライン責任者の30%」を女性にすること目標として掲げています。
最後に、西井社長は、女性活躍推進にはリーダーシップ、制度・仕組み(インフラ)、動機付けに加え、慣行の打破が必須であり、これら全ての要素が達成される必要があると話されました。
味の素社では、D&I推進のために、長い間取り組みを続けています。社内で独自に行った調査によると、男女間で自己効力感不足、評価に対する不平等感などのスコアに大きな差があり、「会社に入ってもキャリアが見通せない」と考える女性社員が多いということがわかりました。このような課題を解決し、よりよい会社にしていくためには、制度・仕組みの整備、動機付け、リーダーシップ発揮などの要素が一つでも欠けてはなりません。これまでも、女性人材の育成委員会の発足や、メンター制度による女性管理職希望者を増やす試みをしてきており、2019年には社内出身の初の女性取締役が誕生するなど、女性活躍推進に関して積極的に活動をしてきました。
2021年6月には女性取締役比率が27%になる予定です。30% Clubにも加入し、トリプル30宣言として「2030年、取締役の30%、ライン責任者の30%」を女性にすること目標として掲げています。
最後に、西井社長は、女性活躍推進にはリーダーシップ、制度・仕組み(インフラ)、動機付けに加え、慣行の打破が必須であり、これら全ての要素が達成される必要があると話されました。
大学の取り組み
五神真総長
続いて、2015年に東京大学総長就任以来、ダイバーシティ促進のために様々な活動を行ってきた五神真総長のお話です。
五神総長は、日本の変革が進まない中、「社会変革を駆動する役割を大学が担う」というビジョンを掲げて行動してきました。その実現に向けて、まずは大学自身が能動的な経営体になる必要があると感じ、昨年10月には国立大学法人として初めて大学債を発行するなど、様々な改革を進めてきました。しかし、その中でも未達成だった最たるものとしてダイバーシティ、特に女性の活躍の場を広げることを挙げました。総長として海外の有力大学の学長と議論する中で痛感したことは、東京大学の学部生の女性割合が20%を超えないことは、グローバルに見ると病的ともいえる異常な状況であると言います。しかし、現状を当たり前として捉えてしまっている人々が多く、正常ではないという感覚を学内に伝えることが難しいと話しました。
五神総長は、女子学生の住まい支援制度の創設、女子学生や全国の女子高校生向けの座談会、女性教員の雇用増加、30% Clubへ大学総長としての率先した参加など、様々な取り組みを行ってきました。しかし、学部学生の女性比率はほぼ横ばいで推移し、女性教員も微増はするものの明らかに少ない状態のままです。日本の日常的な感覚がずれており、海外のスタンダードから取り残されている状態になってしまっているため、この異常さに対する危機感を持つべきだと強調しました。
6年間総長を務める中で、この問題に対する日本の変化の遅さを実感し、将来社会の中核を担うであろう東京大学の学生達に対し、多様性と包摂性(D&I)の考えを浸透させることがきわめて重要だと言います。D&Iの促進は、大学のみならず国家の経営戦略と言っても過言ではなく、今後教養学部ではD&Iの授業を必須にしようという働きかけも進んでいるそうです。
現在東京大学では、女性職員も増え、新しい取り組みを進めるための財源もできています。東京大学のダイバーシティはますます推進できる状態にあり、かつ、推進しなければならない状態でもあるため、次期総長である藤井先生に対する強い期待を持っていると話しました。
五神総長は、日本の変革が進まない中、「社会変革を駆動する役割を大学が担う」というビジョンを掲げて行動してきました。その実現に向けて、まずは大学自身が能動的な経営体になる必要があると感じ、昨年10月には国立大学法人として初めて大学債を発行するなど、様々な改革を進めてきました。しかし、その中でも未達成だった最たるものとしてダイバーシティ、特に女性の活躍の場を広げることを挙げました。総長として海外の有力大学の学長と議論する中で痛感したことは、東京大学の学部生の女性割合が20%を超えないことは、グローバルに見ると病的ともいえる異常な状況であると言います。しかし、現状を当たり前として捉えてしまっている人々が多く、正常ではないという感覚を学内に伝えることが難しいと話しました。
五神総長は、女子学生の住まい支援制度の創設、女子学生や全国の女子高校生向けの座談会、女性教員の雇用増加、30% Clubへ大学総長としての率先した参加など、様々な取り組みを行ってきました。しかし、学部学生の女性比率はほぼ横ばいで推移し、女性教員も微増はするものの明らかに少ない状態のままです。日本の日常的な感覚がずれており、海外のスタンダードから取り残されている状態になってしまっているため、この異常さに対する危機感を持つべきだと強調しました。
6年間総長を務める中で、この問題に対する日本の変化の遅さを実感し、将来社会の中核を担うであろう東京大学の学生達に対し、多様性と包摂性(D&I)の考えを浸透させることがきわめて重要だと言います。D&Iの促進は、大学のみならず国家の経営戦略と言っても過言ではなく、今後教養学部ではD&Iの授業を必須にしようという働きかけも進んでいるそうです。
現在東京大学では、女性職員も増え、新しい取り組みを進めるための財源もできています。東京大学のダイバーシティはますます推進できる状態にあり、かつ、推進しなければならない状態でもあるため、次期総長である藤井先生に対する強い期待を持っていると話しました。
窪川潤子代表取締役社長(クローダジャパン株式会社)
続いて、東京大学卒業生でありクローダジャパン株式会社 代表取締役社長を務める窪川潤子社長のお話です。窪川社長には、東大卒の女性に対し、社会はどう接してくるのか、不利になることが多いのか?などの多くの質問が寄せられました。窪川社長は、東大出身だといえば、男女問わず微妙な反応をされたり、東大女子に見えない!というのが褒め言葉になってしまったりと、東大女子ということにネガティブなイメージを持たれている現状についてお話をされました。
窪川社長が卒業し、社会に出た頃は、パワハラ、セクハラというワードもなく、社会規範もいまと全く違うところもあれば、変わらないところもあると言います。些細なことでは、お茶汲みをさせるかさせないか、ということに関し、会社内でもめたこともあったそうです。しかし、窪川社長は、自分にとって絶対に譲れない価値観ではないところで、性別に付随するイメージにより多少の判断がされてしまうことに対しては、スルーしてもいいのではとお考えになっているそうです。そして東大卒の女性であることによりもたらされる不利益があったとしても、確実に言えるのは、東大という確固としたブランドへの信頼が、「初めての女性技術者」であるとか、初めての○○とか、自分をスタートラインに立たせてくれたということもあるとお話しされました。良い仲間や先生に巡り会うことができ、東大生であったことに誇りを持っており、東大を出てよかったと思えることをもっと外に発信することで、女子学生比率をあげることができるのではとも考えると言います。
しかし、東大に入り、東大を卒業できてよかったと思う気持ちをもつ一方、世の中に無意識の偏見があることを忘れてはならないと語ります。窪川社長は、そのような偏見が存在していることを認めた上で、自分が身を置いた環境で、どの点においてギャップ解消のためにエネルギーを注ぐべきか、ということを考えるといいのではと話されました。全てのギャップ解消のために頑張るよりは、どの点を受け入れ、どの点は受け入れずに戦って行くのか、ということを賢く考えながらポジティブに生きられたら素敵だとお話しくださいました。
窪川社長が卒業し、社会に出た頃は、パワハラ、セクハラというワードもなく、社会規範もいまと全く違うところもあれば、変わらないところもあると言います。些細なことでは、お茶汲みをさせるかさせないか、ということに関し、会社内でもめたこともあったそうです。しかし、窪川社長は、自分にとって絶対に譲れない価値観ではないところで、性別に付随するイメージにより多少の判断がされてしまうことに対しては、スルーしてもいいのではとお考えになっているそうです。そして東大卒の女性であることによりもたらされる不利益があったとしても、確実に言えるのは、東大という確固としたブランドへの信頼が、「初めての女性技術者」であるとか、初めての○○とか、自分をスタートラインに立たせてくれたということもあるとお話しされました。良い仲間や先生に巡り会うことができ、東大生であったことに誇りを持っており、東大を出てよかったと思えることをもっと外に発信することで、女子学生比率をあげることができるのではとも考えると言います。
しかし、東大に入り、東大を卒業できてよかったと思う気持ちをもつ一方、世の中に無意識の偏見があることを忘れてはならないと語ります。窪川社長は、そのような偏見が存在していることを認めた上で、自分が身を置いた環境で、どの点においてギャップ解消のためにエネルギーを注ぐべきか、ということを考えるといいのではと話されました。全てのギャップ解消のために頑張るよりは、どの点を受け入れ、どの点は受け入れずに戦って行くのか、ということを賢く考えながらポジティブに生きられたら素敵だとお話しくださいました。
森山工大学執行役・副学長
続いて、4月から東京大学教養学部長に就任予定の森山工先生のお話です。先ほど五神総長のお話しにあった教養学部生に対するD&Iのための研修は非常に重要な取り組みであると話し、現場の教員や学生の声をすくい上げるのと同時に理事、役員たちの間でも議論されていて、これが噛み合う形で研修が実施されるため、より意義のあることであると考えるそうです。そしてこれを研修で終わらせず、教育の形にしたいと考えていると言います。ある程度の時間を要することにはなりますが、D&Iのために必要となるものを全学年必修で設定できないか、という道も探っているとのことです。
また、学部生の女性比率が低いことが問題となっていますが、大学院生をみると、8~9割を女性が占めるプログラムなどもあります。これは、勉強すること、研究することへの希望が女性の中にも確かにあるということを示しています。にもかかわらず学部生に女性が少ない理由を、森山先生は、中等教育までの社会の圧力の強さにあると指摘します。地方では地元の国立大学に現役で進学する女子学生が多いですが、ここに現れるものは、親や社会が、女子学生に課している自己認識の反映なのではないか、と考えているそうです。つまり、この課題には社会の考え方が大きく関係してきていると考えることができ、メディアと積極的に連携してシンポジウムをいくつも行い、日本社会のあり方を考えなくてはいけないと話しました。
また、学部生の女性比率が低いことが問題となっていますが、大学院生をみると、8~9割を女性が占めるプログラムなどもあります。これは、勉強すること、研究することへの希望が女性の中にも確かにあるということを示しています。にもかかわらず学部生に女性が少ない理由を、森山先生は、中等教育までの社会の圧力の強さにあると指摘します。地方では地元の国立大学に現役で進学する女子学生が多いですが、ここに現れるものは、親や社会が、女子学生に課している自己認識の反映なのではないか、と考えているそうです。つまり、この課題には社会の考え方が大きく関係してきていると考えることができ、メディアと積極的に連携してシンポジウムをいくつも行い、日本社会のあり方を考えなくてはいけないと話しました。
座談会
座談会の様子(写真左下は石井菜穂子理事)
登壇者の方々のお話を聞けたところで、ウェビナー参加者からの事前質問に答える形で座談会が進んでいきました。
日本で真にインクルーシブな社会を実現するための、本質的課題は何なのか? 今度どのような動きをとっていくべきか?
この質問に対し、初めに答えていただいたのは西井社長です。
先ほどお話の中で出たリーダーシップ、制度・インフラ、動機付けの3つのどれもが欠けてはいけませんが、女性にリーダーシップをとってもらうようにするにはまずは働き方改革をするべきだとお考えになるそうです。女性がライフイベントを持ちながら長時間働き続けるのは難しいことであり、そこでキャリアが終わってしまうこともあります。味の素社が実践している男性・女性・ベテラン・若手に関わらず全社員の勤務時間を短縮する取り組みでは、言葉だけでなく、実際に制度を変えてしまうほど大規模な改革であったので、ダイバーシティ促進への本気度を見せられたのではないか、とお話ししました。
また、社会的地位が高い人ほど偏見の中に生きてきたことがわからない傾向にあるといい、そのようなリーダーに対してアンコンシャスバイアスの研修を行うなど、上から考え方を変えることも重要だとお話しされました。
続いて五神総長が話します。
五神総長は東京大学の経営を任された身として、できることにどんどん取り組んで行くべきだと考えていたそうです。役員の36%を女性にするなど、女性活躍のためにもできることを進めてきました。アンコンシャスバイアスの中でも、悪意があるわけではなく、知らないからこそ解決されない問題もあるのでは、と感じたそうです。例えば、東大には男子校出身で、身の回りの女性は母親しかいない、というような学生が大勢います。彼らには、女性に関わる社会の問題を、自分のものとして考えてもらうことを教える必要があり、それは東大に入学した学生が最初に所属する教養学部の役割であると考えているそうです。
東大においては、事務職員には女性が多く、法人化後は採用試験の方法も変えて優秀な人材を獲得できていると言います。五神総長は人事制度改革の一環として、短時間勤務の職員を正規雇用とする制度を作り、女性が働きやすい環境を整えました。そのような状況を学生達に見せることが教育的にも重要だと考えたそうです。懸案である学部入学者の女性割合を増やすには時間がかかっていますが、五神総長は、学術的知見に基づく知識を共有することで、学内構成員のマインドセットを変えていくことが先決だと考えているそうです。
先ほどお話の中で出たリーダーシップ、制度・インフラ、動機付けの3つのどれもが欠けてはいけませんが、女性にリーダーシップをとってもらうようにするにはまずは働き方改革をするべきだとお考えになるそうです。女性がライフイベントを持ちながら長時間働き続けるのは難しいことであり、そこでキャリアが終わってしまうこともあります。味の素社が実践している男性・女性・ベテラン・若手に関わらず全社員の勤務時間を短縮する取り組みでは、言葉だけでなく、実際に制度を変えてしまうほど大規模な改革であったので、ダイバーシティ促進への本気度を見せられたのではないか、とお話ししました。
また、社会的地位が高い人ほど偏見の中に生きてきたことがわからない傾向にあるといい、そのようなリーダーに対してアンコンシャスバイアスの研修を行うなど、上から考え方を変えることも重要だとお話しされました。
続いて五神総長が話します。
五神総長は東京大学の経営を任された身として、できることにどんどん取り組んで行くべきだと考えていたそうです。役員の36%を女性にするなど、女性活躍のためにもできることを進めてきました。アンコンシャスバイアスの中でも、悪意があるわけではなく、知らないからこそ解決されない問題もあるのでは、と感じたそうです。例えば、東大には男子校出身で、身の回りの女性は母親しかいない、というような学生が大勢います。彼らには、女性に関わる社会の問題を、自分のものとして考えてもらうことを教える必要があり、それは東大に入学した学生が最初に所属する教養学部の役割であると考えているそうです。
東大においては、事務職員には女性が多く、法人化後は採用試験の方法も変えて優秀な人材を獲得できていると言います。五神総長は人事制度改革の一環として、短時間勤務の職員を正規雇用とする制度を作り、女性が働きやすい環境を整えました。そのような状況を学生達に見せることが教育的にも重要だと考えたそうです。懸案である学部入学者の女性割合を増やすには時間がかかっていますが、五神総長は、学術的知見に基づく知識を共有することで、学内構成員のマインドセットを変えていくことが先決だと考えているそうです。
数値目標(クオーター制など)は導入されるべきか?
続いての質問にまず回答されたのは窪川社長です。
窪川社長は、数値目標が適する、適さないことがあると考えており、個人的には数値目標には賛同していなかったと言います。人選の際に数値目標、というものが存在すると、能力ではなく女性だからという理由で選ばれてしまったと印象付けられてしまうことがあるからです。しかし、前例がないなどの理由のために機会がなく、就くべきポジションに女性が就けない、という状況がある中、数値目標は有効であるのではとお考えになるそうです。ポジションを用意することで社会の意識を変え、社会の仕組みをサポートするための数値目標であれば導入する意義はあるということです。
続いて森山先生の回答です。
森山先生は、クオーター制は諸刃の刃だと話しました。例えば、海外のドラマでは、黒人枠で大学に入学したという生徒に対し、その人は大学生という枠組みにおいて、黒人という条件を超えることはできない、一般学生にはなれないということがありました。次にフランスの事例の紹介です。フランスで議員にクオーター制を導入しようとする動きがありましたが、違憲判決を受けました。フランスフェミニストはこれに対しクオーターではなく、男女半々(パリティ原則)が好ましいと意見したそうです。このように、クオーター制ではうまくいかないことがあるのならば、他の道を探ってみる余地は残されているのではないかと考えるそうです。
続く西井社長のご回答では、環境を整えた上で、数値目標は必要だという意見が出ました。30%Clubで目標を掲げていますが、現在味の素社には女性は28%在籍しており、それ故に30%という目標を掲げたのだと言います。本来男女比率は半々になると考えておられますが、現実的な数値が30%であるので、2030年にそれを目指すということです。そして、その数字で割り振るわけではないが、数値として目標を決めることは、意義のあることであるとも言います。
以上のように、登壇者の方々にご自身の取り組みや、今後のD&Iに対する熱い想いを語っていただきました。
窪川社長は、数値目標が適する、適さないことがあると考えており、個人的には数値目標には賛同していなかったと言います。人選の際に数値目標、というものが存在すると、能力ではなく女性だからという理由で選ばれてしまったと印象付けられてしまうことがあるからです。しかし、前例がないなどの理由のために機会がなく、就くべきポジションに女性が就けない、という状況がある中、数値目標は有効であるのではとお考えになるそうです。ポジションを用意することで社会の意識を変え、社会の仕組みをサポートするための数値目標であれば導入する意義はあるということです。
続いて森山先生の回答です。
森山先生は、クオーター制は諸刃の刃だと話しました。例えば、海外のドラマでは、黒人枠で大学に入学したという生徒に対し、その人は大学生という枠組みにおいて、黒人という条件を超えることはできない、一般学生にはなれないということがありました。次にフランスの事例の紹介です。フランスで議員にクオーター制を導入しようとする動きがありましたが、違憲判決を受けました。フランスフェミニストはこれに対しクオーターではなく、男女半々(パリティ原則)が好ましいと意見したそうです。このように、クオーター制ではうまくいかないことがあるのならば、他の道を探ってみる余地は残されているのではないかと考えるそうです。
続く西井社長のご回答では、環境を整えた上で、数値目標は必要だという意見が出ました。30%Clubで目標を掲げていますが、現在味の素社には女性は28%在籍しており、それ故に30%という目標を掲げたのだと言います。本来男女比率は半々になると考えておられますが、現実的な数値が30%であるので、2030年にそれを目指すということです。そして、その数字で割り振るわけではないが、数値として目標を決めることは、意義のあることであるとも言います。
以上のように、登壇者の方々にご自身の取り組みや、今後のD&Iに対する熱い想いを語っていただきました。
最後に
松木則夫大学執行役・副学長
最後に、東大でD&Iを推進して来た副学長の松木則夫先生からご挨拶がありました。
東大での国際女性デーの企画は初めてでしたが、多くの参加者に参加してもらえたことに対し、大変喜びを感じていると言います。今後、このような企画・活動を引き続き行い、キャンパス内でもD&Iを進め、社会にも発信していきたいとの決意を話しました。社会で女性を待ち受ける状況はまだまだ厳しいものであると感じており、今回のイベントが女子学生の行動指針となり、男子学生や教職員の行動変化を促すことができたら幸いだと考えるそうです。
このように今回のイベントが、誰かの行動を少しでも変えることができたら、という思いを全ての登壇者の方々が抱きながらの閉幕となりました。
東大での国際女性デーの企画は初めてでしたが、多くの参加者に参加してもらえたことに対し、大変喜びを感じていると言います。今後、このような企画・活動を引き続き行い、キャンパス内でもD&Iを進め、社会にも発信していきたいとの決意を話しました。社会で女性を待ち受ける状況はまだまだ厳しいものであると感じており、今回のイベントが女子学生の行動指針となり、男子学生や教職員の行動変化を促すことができたら幸いだと考えるそうです。
このように今回のイベントが、誰かの行動を少しでも変えることができたら、という思いを全ての登壇者の方々が抱きながらの閉幕となりました。