令和6年度東京大学学部入学式 祝辞(宗岡 正二 東京大学校友会 会長)

令和6年度東京大学学部入学式 祝辞

只今、ご紹介頂きました宗岡でございます。東京大学校友会を代表致しまして、東京大学に入学された皆様方に、心からお祝いを申し上げたいと存じます。また、ご家族の皆様方にも、重ねてお祝いを申し上げます。本日は誠におめでとうございます。

新入生の皆さんは、この春の東京大学入学と同時に、全員が東京大学校友会の新たな仲間になられました。校友会会長として、新会員の皆さんを心から歓迎致します。

さて、簡単に私の自己紹介をさせて頂きますと、私は、1970年に本学の農学部農業経済学科を卒業し、鉄鋼メーカーである当時の新日本製鐵に入社致しました。社長・会長を経て、現在、日本製鉄 相談役を務めておりまして、2020年からは本学の全学同窓組織であります、東京大学校友会の会長も務めております。

校友会の概要や会費のお願いについては、本日配布しております冊子からご覧頂きたいと思いますが、皆さんには、ぜひ、校友会が開催する入学同期の学年会などにも積極的に参加頂き、東大校友会の多様性あるコミュニティで、本学の仲間との交友を広げて頂きたいと思います。

さて、これから皆さんは、比較的自由に学びの時間をつくることができる教養学部の前期課程で学ばれる訳ですが、この時期に皆さんには3つのことをお勧めしたいと思います。

1つ目は、リベラルアーツ、とりわけ教養としての歴史や文化を学んで頂きたい。そして多くの良書に親しんで頂き、多様な知に触れられる教養学部前期課程特有の良さを満喫して頂きたいということです。時空を超えて古今東西の賢人達と素晴らしい経験を共有することができ、皆さんの今後の人生の羅針盤になることと確信致します。

次に2つ目は、クラスや部活動・サークルなどで、できるだけ多くの友人を作ることをお勧めします。学生時代の友人は、将来、必ずや皆さんに有益なアドバイスや力を与えてくれる友人となるはずです。

最後の3つ目は政治に関心を持つことです。過去数回の衆議院議員総選挙の投票率は60歳代で70%前後に対し、10歳代で40%超、20歳代で35%前後と、若者の投票率は概ね半分程度となっています。これでは、老人の老人による老人のための政治しか実現されないことになります。将来、日本をどういう国にしていくのか、皆さんの意思をしっかり示す必要があるのではないでしょうか。

ご承知のとおり、我が国のみならず、国際社会は激動の中にあります。第二次世界大戦以降、これまで何とか維持されてきた自由で開かれた国際主義が、民主主義国家と権威主義国家との対立によって音を立てて崩れています。世界各地でのポピュリズムの蔓延、アメリカ大統領選挙に垣間見られる政治的分断、そしてロシアをはじめとする権威主義国家による民主主義国家への挑戦が、より深刻なレベルになっています。まさに世界において民主主義が存亡の危機にあると言ってもよろしいかと思います。

その国の政治や政治家のレベルは、その国の国民の知性や倫理観が反映されるとも言われています。政治から逃避し、批判だけすることは許されません。民主主義の下で多様な意見をぶつけ合うことで新たな知恵が生まれ、解決策が導かれるのです。これから皆さんには、皆さん自身が当事者として政治に関心を持ち、民主主義の力強い担い手となることを期待したいと思います。

さて、最後になりますが、皆さんがこの日を迎えられたのも、皆さんの努力だけで掴んだものではありません。これまで導いて頂いた恩師の先生方、そして、なにより、これまで皆さんを育み、支えてくれたご両親・ご家族に感謝するとともに、入学できた幸運にも心から感謝する気持ちを忘れないでもらいたい。そして、皆さんが心豊かな人間に成長して頂くことを心から祈念致しております。改めまして本日は誠におめでとうございます。

令和6年4月12日
東京大学校友会 会長
宗岡 正二

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