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第127回(平成30年春季)東京大学公開講座
「ディレンマ」
開催日時・プログラム
SCHEDULE/PROGRAM
時間 | 講義題目 | 講師 | 所属・職名 |
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12:50-13:00 | 開講の挨拶 | 石田 淳 | 企画委員長/総合文化研究科長 |
13:00-13:50 | 「意思決定のディレンマと制度設計:東京大学進学選択制度の事例」 | 尾山 大輔 | 経済学研究科 准教授 |
14:10-15:00 | 「医療イノベーションと規制のディレンマ」 | 永井 純正 | 医学部附属病院 講師 |
15:20-16:10 | 「持続可能な開発とディレンマ:成長と保護」 | 平尾 雅彦 | 工学系研究科 教授 |
16:20-17:10 | 総括討議 | 一木 隆範 | 工学系研究科 教授 |
時間 | 講義題目 | 講師 | 所属・職名 |
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13:00-13:50 | 「科学者の社会的責任とディレンマ」 | 藤垣 裕子 | 総合文化研究科 教授 |
14:10-15:00 | 「タバコをめぐるディレンマ」 | 中澤 栄輔 | 医学系研究科 講師 |
15:20-16:10 | 「情報セキュリティのディレンマ:暗号と量子コンピュータ」 | 高木 剛 | 情報理工学系研究科 教授 |
16:20-17:10 | 総括討議 | 松尾 宇泰 | 情報理工学系研究科 教授 |
時間 | 講義題目 | 講師 | 所属・職名 |
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13:00-13:50 | 「地球公共財の衝突―調整におけるディレンマ」 | 古城 佳子 | 総合文化研究科 教授 |
14:10-15:00 | 「温暖化で沈む環礁国のディレンマ」 | 茅根 創 | 理学系研究科 教授 |
15:20-16:10 | 「多民族化社会と教育のディレンマ」 | 額賀 美紗子 | 教育学研究科 准教授 |
16:20-17:10 | 総括討議 | 武田 将明 | 総合文化研究科 准教授 |
17:10-17:20 | 閉講の挨拶 |
インターネット動画公開
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2018年5月26日
2018年5月26日
2018年6月9日
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2018年6月9日
2018年6月23日
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■開講にあたって
たとえば、現在世代のための開発も、地球温暖化、オゾン層の破壊、生物多様性の喪失、酸性雨、砂漠化等の地球環境問題を深刻化させるなら、それは、将来世代のための地球環境の保護や地球規模の共有資源の保全とは両立しません。この両立しがたき二つの課題を両立させるために、環境保全にも配慮した節度ある開発としての「持続可能な開発」の理念が提唱されています。
また、エイズ(後天性免疫不全症候群)、エボラ出血熱、SARS(重症急性呼吸器症候群)など、国境を越えて広がる感染症の撲滅は国際社会の共通の利益とも言えるもので、それには、製薬企業による医薬品の研究・開発のみならず、患者に対する医薬品へのアクセスの保障も不可欠です。しかし、製薬企業による医薬品の研究・開発を動機付ける制度設計としての《知的財産権の保護》と、途上国に広がる多数の患者に安価な医薬品へのアクセスを保障することを可能にする《知的財産権の制約》とは容易に両立するものではありません。
さらに、一国の安全を確保するための軍備の増強や同盟の強化は、防衛のみならず攻撃の手段ともなりうるもので、選択された手段からその目的を正確に推論できません。それゆえに、自国の安全保障上の不安を拭いさることを意図した行動も、相手国の不安を掻き立てずには済みません。自国の不安の解消と相手国の不安の解消とが両立しない「安全保障のディレンマ」の下、守勢に立たされているという不安が、互いの不信を増幅する攻勢を生み出しているのかもしれないのです。
大学における学術研究には、このような人間社会のディレンマを自覚しつつ思慮深く行動を選択するにあたって欠かせない緻密な解析が期待されるところでしょう。しかしながら、実は学術研究も原子力の平和利用と軍事利用の例を引き合いに出すまでもなく、本来の研究目的の範囲を超えて利用されうる汎用性を持つので、それ自体ディレンマから逃れることはできません。
今回の公開講座では、「制度設計と技術革新のディレンマ」「学術研究のディレンマ」「地球規模のディレンマ」の3つのサブテーマを設定し、9名の研究者が人間社会と学術研究の「ディレンマ」をめぐり文理の枠を超えて多面的な考察を行います。どうぞご期待ください。
第127回東京大学公開講座企画委員会
委員長 石田 淳
(東京大学大学院総合文化研究科長)