2012年5月22日
東京大学伊藤国際学術研究センター完成記念祝賀会 ご挨拶
株式会社セブン&アイ・ホールディングス名誉会長 伊藤 雅俊 様
本日は、伊藤国際学術研究センターの完成を記念し、東京大学にこのような盛大な祝賀会を主催して頂いたこと、そしてお忙しい中、多くの皆様に出席して頂いたこと、誠にありがとうございます。
このセンターの建設に協力させて頂きました経緯を簡単にお話しさせて頂きます。
東京大学、そして財務省のご出身で、現在は日本政策投資銀行の取締役常務執行役員の竹内洋さん、弁護士の裕子さんご夫妻が、小宮山宏前総長とのご縁をつなぐ機会を作って下さいました。
そして、私ども夫婦は、東京大学の「社会連携と国際交流拠点づくり」というお考えに共感して、協力させて頂きました。
実は、私は、関東大震災の翌年の1924年(大正13年)生まれで、今年、満88歳でございます。米寿を迎えた年に、当センターが完成したことを、大変嬉しく思います。
第二次世界大戦において、私よりも一年早く学徒出陣していった多くの方々は、戦死されました。今回、センターの建設に協力させていただいた理由の一つは、学問への志半ばにお亡くなりになった方々の思いに報いるためでございます。
二坪の洋品店から出発したイトーヨーカ堂が、世界のセブン-イレブンのフランチャイズ売上を含め、総額9兆円という世界有数の小売グループに成長できましたのも、多くのお取引先、社員、そして関係者の方々のお陰でございます。
私の父親違いの兄は、叔父の洋品店の「のれん分け」で、羊華堂浅草店を持った太平洋戦争開戦の前年の昭和十五年、母と十三歳年下の私を引き取り、自分は小学校までしか通っていないにも関わらず、旧制横浜商業専門学校にまで通わせてくれました。
終戦後、母と兄は、北千住に2坪の店を借りて、再出発しました。
千住の人々の温かい支援のお陰で、敷地150坪、売場面積40坪の店にまで、成長、拡大できました。しかし、私に「信頼と誠実」の大切さを教えてくれた、兄は、1956年(昭和31年)、44歳の若さでなくなり、私が、事業を引き継ぐことになりました。
その後の五十五年間を振り返えれば、日本経済の高度成長の流れに乗り、事業を拡大してまいりましたが、そこに貫くのは「謝恩の精神」でございます。
会社が大きくなっても、2坪の時代からの一人ひとりの「お客様のおかげ」「お取引様のおかげ」「働く社員のおかげ」といった「おかげ様」の精神を忘れずに商売を続けてまいりました。
私の社会に対する謝恩の気持ちを形にしたのが、この国際学術研究センターと言っても過言ではありません。
当センターを設計して頂いた東京大学名誉教授の香山先生、素晴らしい建物を建てて頂いた鹿島建設の皆様、東京大学の濱田総長、これからセンターを運営して頂く、鶴田統括長様をはじめとする事務局の皆様に、この場をお借りいたしまして、心から御礼申し上げます。
これから国際的にも、一層、難しい時代を迎えると思います。このセンターが、「社会連携と国際交流」の拠点として、益々、発展し、社会に役立つことを願っております。最後に東京大学の益々のご繁栄と、ご出席の皆様のご多幸を祈念して、ご挨拶とさせて頂きます。
ありがとうございました。