【Campus Voice】「女子中高生・受験生を対象とした東大教育学部オンライン講演・座談会」イベントレポート

 


こんにちは!
今回は、2021年11月6日に開催された「女子中高生・受験生を対象とした東大教育学部オンライン講演・座談会」を取材させていただきました。

2021.11.6
リポート/学生ライター
大谷朗子(教養学部2年)

1. 日本全国から集まった参加者たち

今回のイベントはオンラインで開催され、約20人の女子中高生・受験生の皆さんが参加されました。オンライン開催ということもあり、全国各地からの参加もあったとのこと。ところで、参加者の皆さんはどのようにしてこのイベントを知ったのでしょうか? お伺いしたところ、以下のような回答をいただきました。

・東大教育学部のホームページから見つけた。
・高校の先輩で、東大の教育学部にいる方からの紹介。
・メールマガジンのイベント案内を見て知った。
・Twitterで知った。

みなさん様々な方法で情報収集しているようです。一方で学校生活や受験勉強の傍ら、定期的にwebサイトをチェックする時間がないこともありますよね。この記事を読んでくださっている中高生の皆さんも、情報収集の際はメールマガジンやSNSなども活用してみてもいいかもしれません。

2. 挨拶(教育学研究科長・教育学部長 小玉重夫教授)

まずはじめに、教育学研究科長・教育学部長の小玉重夫教授から今回のイベントの趣旨についてのお話がありました。

世界各国の男女格差を図るジェンダーギャップ指数。日本の2021年総合スコアは656でした。これは156カ国中120位に当たり、先進国の中では最低レベルでジェンダー平等が進んでいない国と言えます。特に東京大学は女性学生比率が20%前後と低迷しており、日本のジェンダーギャップ指数の足を引っ張っていると小玉先生は言います。

一方、このような厳しい状況下でも、東京大学教育学部の女性学生比率は38%を超えています。また、日本でのジェンダー平等実現において、教育が果たす役割も大きく、そういった点からも東京大学教育学部はジェンダー平等の推進において、先進的で中心的な役割を果たすべき立場にあるということです。

みなさんにはその輪にぜひ加わってもらい、ともに日本のジェンダー平等を推進していきたい、と小玉先生は力強いメッセージを伝えました。

3. 教員による講演(教育学研究科附属発達保育実践政策学センター 野澤祥子准教授)

続いて、教育学研究科附属発達保育実践政策学センターの野澤祥子准教授が、自身のキャリアや研究、そして東京大学の魅力について語ってくださいました。

そもそも教育学は、総合的・学際的・実践的な科学です。その上、東京大学教育学部は文科だけではなく、理科からも学生が進学する非常に学際的な学部となっています。そのような背景から卒業生の進路も多岐にわたり、大学院に進学する人もいれば就職する人、行政分野に進む人も多くいます。また、教員免許を取得して教師になる人もいます。



野澤先生は茨城県の高校卒業後、東京大学文科三類に入学しました。
地方出身である野澤先生ですが、東大での生活にはすぐになじむことができたといいます。なぜなら、東大は全国から学生が集まってくるから。様々な方言が飛び交う中で全国の友達ができる、非常に面白い環境だったそうです。競技ダンス部にも所属し、充実した学生生活を送っていました。

教育学部への進学を決めたのは、前期課程で受講した心理の授業に魅力を感じたことがきっかけ。進学後は教育心理学コースに所属し、幼児の自己主張の発達について学び、修士課程、博士課程へと進学。大学院生時代に結婚し、出産・子育ての傍ら博士論文を執筆するという経験も。その後、保育士を養成する大学に就職し、現在は発達保育実践政策学センターで研究・教育を行っています。



野澤先生の専門である幼児教育は近年注目を集めています。様々な状況の子どもがいる中で、福祉や医療とも連携しながら、生涯発達の基盤としてより良い施策を行うための研究を行っています。

「東大は多様な出会いのある環境。心惹かれた方はぜひ東大を受験して、そして教育学部を選択してほしい」と参加者に伝えました。

4. 卒業生による講演

今回のイベントでは3名の卒業生による講演もありました。
それぞれの経験をもとに、教育学部の魅力、進路の悩み、そして女性としてのキャリアまで幅広く語っていただきました。

江良水晶さん

岐阜県立岐阜高校出身。
文科三類に入学後、教育学部教育実践・政策学コースに進学。
2020年3月に卒業し、現在は図書館流通センターに勤務。卒業論文のテーマは「図書館がサードプレイスとなるには?」

東大を志望した理由
地元の大学に進学するか、東京の大学に進学するかは、人生における大きな分岐点であると考えていた。せっかくなら、沢山の人が集まる東京に出たいと思ったのがきっかけだった。塾の先生の後押しや、切磋琢磨できる仲間を見つけたことで、東大進学への意志が固まった。

東大での学生生活
大学での講義に加えて、部活やバイトにも打ち込んだ。その中で、様々な活動を両立しつつ将来を見据える東大生に多く出会い、刺激を受けた。もともと教育に興味があったため、前期課程から教育関連の授業を履修していたが、様々な分野の授業を受けられるという前期課程のメリットを生かし、多様な学問分野の授業も履修していた。専門分野と関わりのない授業も、興味関心に応じて履修できるのはよかった。教育学部への進学が決定してからは、社会教育学や図書館学、教育哲学などを受講し、幼稚園や中学校へのフィールドワークも経験した。

現在のお仕事

図書館流通センターは図書館総合支援企業で、委託を受けて図書館を運営したり、本を卸したりと図書館に関することなら何でも行っている。その中でも、新しく図書館をつくる際のサポートを行う部署に所属している。

中高生へのメッセージ

「振り返ってみても、大学選択は自分にとって大きな分岐点だった。だからこそ、中高生の皆さんも自分なりの理由をもって選択してほしい。その過程で、周りの意見を聞くことも大切だが、最後は自分自身が決めるという意識を忘れないでほしい。」
 

高田祐莉さん

埼玉県深谷市出身、埼玉県内の中高一貫校卒。
一度は他大学に進学したが、再度東大を目指し、合格。
後期課程から教育学部基礎教育学コースに進学。

卒業論文のテーマは「学校における排除と子どもの居場所づくり」

東大を志望した理由
当時応援していたアイドルが、東大受験をテーマにしたドラマに出演していたことがきっかけで東大に興味を持った。この経験から、興味を持つきっかけはどんな些細なことでもよく、大切なのは興味を持った後、いかに自分のやりたいことを明確にしていくかだと考えている。

東大での学生生活
サークル活動やボランティア活動を通じて教育学への興味が芽生えた。体験活動プログラムを活用し、院内学級への訪問や、地域の子どもたちと大学生の交流事業の立ち上げを行い、試行錯誤しながらプログラムを作り上げるという貴重な経験ができた。
※体験活動プログラムについて、詳しく知りたい方はこちらのサイトをご覧ください。

現在のお仕事
教育制度の観点から教育に関わりたいと考え、文部科学省で3年間勤務。現場との距離の近さを重視した結果、昨年4月に日本財団に転職。現在は子ども関係の事業に携わっている。

中高生へのメッセージ
「人との出会いがこれまでの自分の人生を創ってきたように感じている。ぜひ皆さんにも素敵な出会いがあるといいなと思っています。」

春日翔子さん

千葉県内の中高一貫校卒。
文科二類に入学し、教育学部身体教育学コースに進学。

卒業論文のテーマは「けん玉の技能を獲得する時に自己肯定感の高さが及ぼす影響」

東大を志望した理由
文理問わず広い関心があったので、大学に入ってから学部を選択できる東大のシステムに魅力を感じた。

東大での学生生活


東大では勉強が好きな同級生に囲まれて学生生活を送ることができた。同じクラスだった友人は法学部や経済学部に進学した人が多く、自分の専門と異なる分野で活躍する友人ができたことはよかった。

学外では、サッカークラブでボランティアをし、その中で、スポーツが心身に与える影響や生理学、医学療法などに興味を持ったため、後期課程は教育学部の身体教育学コースに進学した。女性の学生は学科に2人だけだったが、小さい学科だったこともあり男女関係なく仲が良かった。一方で、合宿形式の実習の時には、女性の友人や教員がもっといたらよかったなと思うこともあった。修士課程進学後は、神経科学を専門とした。日本学術振興会の特別研究員に採用され、博士課程にも進学した。

現在のお仕事
博士課程に進んだのち、慶応義塾大学理工学部の助教として学生の指導に関わった。その後、日本学術振興会の海外特別研究員制度を利用して、カナダでの研究を開始した。現在は、カナダのクイーンズ大学応用科学部電気電子コンピューター工学科で研究発展コーディネーターとして働いている。大学の先生たちの研究活動を多面的に支援することが主な業務であり、研究費の確保や資金管理等ファイナンス業務にも関わっている。

中高生へのメッセージ

「まずは英語の勉強が大切。英語ができるだけで選択肢が広がるので、積極的に英語学習に取り組んでほしい。そして、何か人生の分岐点に差し掛かった時には、周囲の意見に振り回されずに自分の可能性を尊重して選択してほしい。」


講演に続いて質疑応答の時間も設けられ、以下の質問が挙がりました。
 

どの大学も東京大学と同じような学部を持っていると思いますが、東京大学は他の大学とは違うと思うところは何ですか。

野澤先生:前期課程で多様な学問に触れた上で、所属する学部を選択できること。
江良さん:多様なバックグラウンドを持つ学生が群を抜いて多く集まっていること。
高田さん:文理問わずほとんどすべての学部がそろっており、色々な分野の人と交流できること。公務員志望の学生が多く、共に公務員を目指す仲間がいて心強かったこと。
春日さん:東大の女性学生はバイタリティーやアイデアがあり、心から尊敬する友人に出会えたこと。

5. 座談会

続いて、現役学生と参加者の座談会が開催されました。座談会で参加者がブレイクアウトルームに分かれて現役学生と交流しました。
ここでは、参加者の皆さんから寄せられた質問の一部と回答をご紹介します。

Q.今まで取った授業の中で一番印象的なものを教えてください。

A.前期課程でとった声楽の授業。プロの講師からマンツーマン指導を受けることができた。
前期課程でとったジェンダー論の授業。立ち見も出るほどの人気の授業。
教育学部の「教育方法論」という授業。ゼミのような少人数の授業で、受講者同士の仲もいい。

Q.昨年からコロナ禍でオンライン授業に切り替わったと思いますが、不便な点や工夫などはありましたか。

A.先生方は学生の顔が見えない分、チャットやGoogleフォームを使って学生の要望や質問を吸い上げるように工夫していた。

Q.東大で教員免許を取るのは難しいと聞いたことがありますが、実際に教育学部ではどのくらいの学生が教員免許を取得しますか。また教育学部以外では取得が難しいということはありますか。

A.教員免許を取るためには、教育学部を卒業するために必ず取らなければならない単位とはまた別に単位を取得しなければならないので、どうしても授業数は多くなる。ただ、教育学部は必ず取らなければならない単位数が他学部と比べて少ないので、比較的教員免許は取りやすいと思う。この点、他学部で教員免許を取得するのは大変かもしれないが、実際に教員免許を取得している他学部の友人も複数いる。

6. 参加者の皆さんからの感想

参加者の皆さんに今回のイベントの感想をお聞きしました。

東大生は1年生から4年生まで勉強尽くしで大変というイメージを持っていたのですが、忙しい時期とゆとりのある時期で波があるけど大学生活をエンジョイできるというお話を聞いたので、大学生活を楽しみたいという面でも良いなと思いました。

教育学部は教師になる人が行く学部というイメージだったので、様々なことが学べるということを知ることができてよかったです。

同じ東大の教育学部で学んだ方々でも多種多様な将来の選択肢があることを知って、東大は自分が将来活躍できる道を広げてくれる場所なのだなと感じました。

7. レポーターより

講演では「自分の意思で選択することの大切さ」への言及が多くありました。世間一般のイメージが必ずしも実態に即しているわけではありません。周りの意見にも耳を傾けつつ、最後は自分なりの理由をもって決断することが、悔いのない選択につながるのかもしれません。

今回のイベントでも、東大や教育学部に対するイメージが変わったとの声が多く聞かれました。東大では学部や研究科がそれぞれ多くの特色を持っています。ぜひイベント等に参加してその実態を知り、納得できる進路選択に生かしてみてください!