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東京大学運動会応援部初の女性主将である杉田南実さんと、東京大学の今泉理事は、同じ部活の出身というきっかけから対談をすることとなりました。お二人はそれぞれの部活の思い出について、終始和やかに語られていました。
リポート/学生ライター
犬丸 わかな(医学部3年)
応援部に入ったきっかけは?
今泉:杉田さんが東京大学運動会応援部(以下応援部)に入ったきっかけは?
杉田:応援部の中には、リーダー、吹奏楽団、チアリーダーズの3つの部門があります。私はクラシックバレエやジャズダンスを習っていて、大学でもダンスをしたいと思い、チアリーダーズに入りました。応援部入部時には同期が20人くらいいたのですが、大学2年生になるとリーダー所属の同期がいなくなってしまいました。東京六大学野球の応援ではパートごとの持ち回りなどが決まっていたので、吹奏楽団の学生と2人でリーダーパートを兼任するようになり、3年生ではリーダーの仕事もするようになりました。4年生ではチアリーダーズとリーダーを兼任しながら主将を務めました。今泉理事が所属されていたころの応援部はどうでしたか?
今泉:私の入部当時は、チアリーダーズがバトントワラーズと呼ばれていましたが、2~3年生のときに現在の名称へと代わりました。当時は同じ部活でも3パートが明確に役割分担されていて、パートを超えて交わることはほとんどありませんでした。今は杉田さんのようにリーダーとチアリーダーズを兼任している人がいると聞き、コペルニクス的転回が起きたような気分です。
杉田:応援部の中には、リーダー、吹奏楽団、チアリーダーズの3つの部門があります。私はクラシックバレエやジャズダンスを習っていて、大学でもダンスをしたいと思い、チアリーダーズに入りました。応援部入部時には同期が20人くらいいたのですが、大学2年生になるとリーダー所属の同期がいなくなってしまいました。東京六大学野球の応援ではパートごとの持ち回りなどが決まっていたので、吹奏楽団の学生と2人でリーダーパートを兼任するようになり、3年生ではリーダーの仕事もするようになりました。4年生ではチアリーダーズとリーダーを兼任しながら主将を務めました。今泉理事が所属されていたころの応援部はどうでしたか?
今泉:私の入部当時は、チアリーダーズがバトントワラーズと呼ばれていましたが、2~3年生のときに現在の名称へと代わりました。当時は同じ部活でも3パートが明確に役割分担されていて、パートを超えて交わることはほとんどありませんでした。今は杉田さんのようにリーダーとチアリーダーズを兼任している人がいると聞き、コペルニクス的転回が起きたような気分です。
応援部時代の今泉理事
私が所属していたころの応援部は、リーダーが主導する部で、3パートは平等ではありませんでした。応援部の主将はリーダーからしかなれず、リーダーは男性だけだったので、女性が応援部の主将になることは考えられない時代でした。杉田さんが4年間他のパートの役割も兼任しながらやり通されたのを見て、時代の変化を感じました。ところで、杉田さんは旗手を担当したことはありますか?
杉田:私は旗手を担当したことがないですが、現在旗手を担当している女性の学生がいます。最近では、性別や力の差に関係なく持てるよう、小さめの旗を新しく作った大学もあると聞きます。今泉理事は4年生の時に旗手長(応援部の旗を司る役職)をされていたのですか?
今泉:そうです。どれだけ大きな旗を持てるかを、他大学と競っていました。旗は、てこの原理を使って持つので、実際の旗の重さの何倍も重く、体力が必要です。私の時には「旗を落としたら即坊主」という暗黙のルールがあり、私も坊主にしたことがありました。
杉田:今は坊主にするというルールはなくなりました。
今泉:当時は、坊主にするのが当たり前と思っていましたが、これも時代の流れですね。神宮(東京六大学野球が行われる明治神宮野球場)では、負けたらリーダーは明治公園のアスファルトの上で拳立て(拳を立てて行う腕立て伏せ)をずっとやっていました。
杉田: 東京六大学全体の傾向として、2代前から拳立ては禁止になりました。試合に負けた際には追加練習を行いますが、新型コロナウイルスの感染拡大防止対策もあり、大事な試合のときなどに限られて行われています。
杉田:私は旗手を担当したことがないですが、現在旗手を担当している女性の学生がいます。最近では、性別や力の差に関係なく持てるよう、小さめの旗を新しく作った大学もあると聞きます。今泉理事は4年生の時に旗手長(応援部の旗を司る役職)をされていたのですか?
今泉:そうです。どれだけ大きな旗を持てるかを、他大学と競っていました。旗は、てこの原理を使って持つので、実際の旗の重さの何倍も重く、体力が必要です。私の時には「旗を落としたら即坊主」という暗黙のルールがあり、私も坊主にしたことがありました。
杉田:今は坊主にするというルールはなくなりました。
今泉:当時は、坊主にするのが当たり前と思っていましたが、これも時代の流れですね。神宮(東京六大学野球が行われる明治神宮野球場)では、負けたらリーダーは明治公園のアスファルトの上で拳立て(拳を立てて行う腕立て伏せ)をずっとやっていました。
杉田: 東京六大学全体の傾向として、2代前から拳立ては禁止になりました。試合に負けた際には追加練習を行いますが、新型コロナウイルスの感染拡大防止対策もあり、大事な試合のときなどに限られて行われています。
みな平等な応援部へと変化
今泉: 新型コロナウイルスの影響はどのくらいありましたか?
杉田:合宿は私が1年生だった2019年以降は実施されていません。合同演舞会は開催されなかったり、開催されても規模が縮小されたり、無観客でした。六大学応援団によるステージ「六旗の下に」や旧七帝国大学合同演舞会などは今年から少しずつコロナ前の形に戻り始めました。
今泉:神宮球場に応援に行った際、チアリーダーズが応援を主導していたのが記憶に残っています。ボードを持った掛け声もチアがやるようになっていて、男女で役割を分けるのではなく、足りない部分をお互い助け合うという感じだったのも印象的でした。
杉田:そうですね。「部員はみな平等で、パートで優劣はない。全員で意見を出して進めるべき。」と前主将から引き継ぎました。
杉田:合宿は私が1年生だった2019年以降は実施されていません。合同演舞会は開催されなかったり、開催されても規模が縮小されたり、無観客でした。六大学応援団によるステージ「六旗の下に」や旧七帝国大学合同演舞会などは今年から少しずつコロナ前の形に戻り始めました。
今泉:神宮球場に応援に行った際、チアリーダーズが応援を主導していたのが記憶に残っています。ボードを持った掛け声もチアがやるようになっていて、男女で役割を分けるのではなく、足りない部分をお互い助け合うという感じだったのも印象的でした。
杉田:そうですね。「部員はみな平等で、パートで優劣はない。全員で意見を出して進めるべき。」と前主将から引き継ぎました。
応援部での杉田さん
今泉:実は応援部のOB・OG会である赤門鉄声会の現会長も女性なんですよね。現在、女性のリーダーはいますか?
杉田:本年、女性がリーダーパートに1人入部しました。昔は入りたくても入れなかったと思います。
今泉:杉田さんは、大出走(応援部部員が合宿中に山中を走るイベント)にも参加されたと聞いたのですが。
杉田:3年生の時、合宿代替行事で初めて参加しました。4~50キロ、山の中をずっと走りました。とても大変でした。毎日鍛えているリーダーの先輩たちは足が早く、どうしても差は出てしまいましたが、なんとか完走しました。
杉田:本年、女性がリーダーパートに1人入部しました。昔は入りたくても入れなかったと思います。
今泉:杉田さんは、大出走(応援部部員が合宿中に山中を走るイベント)にも参加されたと聞いたのですが。
杉田:3年生の時、合宿代替行事で初めて参加しました。4~50キロ、山の中をずっと走りました。とても大変でした。毎日鍛えているリーダーの先輩たちは足が早く、どうしても差は出てしまいましたが、なんとか完走しました。
今後の東大に期待すること
ー最後に、今後の東大に期待することをお聞かせください。
杉田:今の東京大学は、女性や地方出身者が少ないと感じます。私が応援部主将になったことも、色々なところで「女性だから」と取り上げられましたが、これが目立つことではなく、男女ともにリーダーがいることがもっとスタンダードになればいいなと思います。
今泉:女性や地方在住の人が東京大学を目指すことに対して、世間ではまだまだ高い壁があると思います。また、関東圏の男子校出身者が多く、入学前からの出身校や塾などの繋がりが目立つ東京大学に、居心地悪く感じてしまう地方出身者や女性たちもいるのかなと。東京大学は「誰もが来たくなる大学」を目指していますが、まだそれを実現出来ていないというのが現状です。現在行っている様々な取り組みにより、東京大学が出身地や性別などに関係なく、誰もが来たいと思える、世界中の人と繋がれる一つの大きなプラットフォームになればいいなと思います。
応援部では、かつてあんなに高い壁がパートごとにあったのに、それがなくなりました。そして、現役部員でも卒業生でも、女性がリーダーになる時代になったというのは非常に画期的なことです。まさにDiversity & Inclusionですね。時代の変化とともに、考え方にも変化が起きていて、これからも良い変化がどんどん進むといいなと思います。それとともに、自分以外の他者を常に全力で応援し続けるという先輩たちから引き継いだ「不易」が、今後とも後輩たちに変わらずに受け継がれていくことも望みます。
杉田:今の東京大学は、女性や地方出身者が少ないと感じます。私が応援部主将になったことも、色々なところで「女性だから」と取り上げられましたが、これが目立つことではなく、男女ともにリーダーがいることがもっとスタンダードになればいいなと思います。
今泉:女性や地方在住の人が東京大学を目指すことに対して、世間ではまだまだ高い壁があると思います。また、関東圏の男子校出身者が多く、入学前からの出身校や塾などの繋がりが目立つ東京大学に、居心地悪く感じてしまう地方出身者や女性たちもいるのかなと。東京大学は「誰もが来たくなる大学」を目指していますが、まだそれを実現出来ていないというのが現状です。現在行っている様々な取り組みにより、東京大学が出身地や性別などに関係なく、誰もが来たいと思える、世界中の人と繋がれる一つの大きなプラットフォームになればいいなと思います。
応援部では、かつてあんなに高い壁がパートごとにあったのに、それがなくなりました。そして、現役部員でも卒業生でも、女性がリーダーになる時代になったというのは非常に画期的なことです。まさにDiversity & Inclusionですね。時代の変化とともに、考え方にも変化が起きていて、これからも良い変化がどんどん進むといいなと思います。それとともに、自分以外の他者を常に全力で応援し続けるという先輩たちから引き継いだ「不易」が、今後とも後輩たちに変わらずに受け継がれていくことも望みます。
東京大学を目指す高校生へのメッセージ
ー杉田さんから、東京大学を目指す高校生にメッセージをお願いします。
杉田:不安や心配もあるかと思いますが、思い切って東京大学に飛び込んでみてください。そして、所属や性別にとらわれず、自分がやりたいことに挑戦して欲しいです。私自身、応援部を代表するのは重責でしたが、その分濃い経験が出来たと考えています。伝統を引き継ぎたい、仲間と最後まで頑張りたいという気持ちが4年間の原動力となりました。みなさんにも、ぜひ東京大学で打ち込めることを見つけてほしいです。
杉田:不安や心配もあるかと思いますが、思い切って東京大学に飛び込んでみてください。そして、所属や性別にとらわれず、自分がやりたいことに挑戦して欲しいです。私自身、応援部を代表するのは重責でしたが、その分濃い経験が出来たと考えています。伝統を引き継ぎたい、仲間と最後まで頑張りたいという気持ちが4年間の原動力となりました。みなさんにも、ぜひ東京大学で打ち込めることを見つけてほしいです。
追記:杉田南実さんが令和4年度学生表彰「東京大学総長賞」を受賞されました。おめでとうございます。(東京大学ダイバーシティ推進課)