東大でお待ちしております ~誰もが活躍できるキャンパスを目指して、松木則夫 男女共同参画室長より~

松木理事インタビュー
2019年7月より始動した【スペクトル-Campus Voice-】。
記念すべき第一弾は、男女共同参画室長を務める松木則夫理事へのインタビューです!
男女共同参画室ってどんなところ?どんな目的を持っているの?何をしているの?
そんな素朴な疑問への答えと、東大を目指す女子学生へのメッセージを、松木理事に聞いてきました。

2019.7.3
インタビュー/学生ライター 武 沙佑美(教養学部学際科学科地理空間コース3年)

在校生10人のうち8人、教授10人のうち9人は男性 なぜ?

――そもそも東京大学男女共同参画室とは、何をしているところですか?

 東大で、在校生や教職員が性別を問わず活躍できる環境を整備するために活動しているところです。東大の2019年現在の女性比率は、学部生19.3%、大学院生28.3%、教授7.6%。非常に男性が多い環境なのです(図1参照)。
 この性別の偏りは、純粋な能力差として理解することはできません。男女がほぼ同数いるはずなのにこれほど明確な偏りが生じる原因は、個人の能力差以外の部分にあります。


(図1)2003年~2018年の教授・大学院生・学部生の男女比率の推移
(各年『東京大学の概要 資料編』を基に執筆者作成)
 
――なぜ東大では男性がこれほど多くなってしまうのでしょうか?

 在校生の男女比率に差が出る大きな原因の一つは、大学受験の際に東大を目指す女子が少ないことにあります。「男子は良い大学に行って良い職に就いて、家を継ぐ。女子は家庭を守り、男子を支える」という性別の役割分担意識が、まだ日本社会に根強く残っていることが一因です。

男子は上京させたくても女子は手元に置いておきたい、遠く離れた東京で一人暮らしさせるのは心配だ、と思う保護者の方も多いようですね。

 この話をするとたまに、「入試においては最も大事なのは公正さなのだから、大学が当日の入試の点数以外の面で特定の人を応援すべきではない」と反論されることがあります。

ですが、今の日本の状況を外国と比較してみてください。例えば、アメリカの名門大学が共学化したのは1970年代。にもかかわらず、今日のそれらの大学の男女数はほぼ半々です。対する東大は、共学化してから70年以上たつのにこの男女比率。日本社会で女性が活躍できる場を増やすためにも、東大は変わらなければいけません。(図2参照)Gender Attainment Gaps. Literature Review and Empirical Evidence from IARU Universities, December 2018 を基に執筆者作成P17-34
  • (図2)世界の大学の女子学生比率 国際研究型大学連合(IARU)の加盟大学5つの女子学生比率を比較

――男女比率が偏ると、どのような問題が起きてしまうのでしょうか?

 やはり、男性が多い環境は女性にとって過ごしにくく、活躍の妨げとなってしまいます。
武さんもそう感じたこと、ありませんか?
 
――確かに、授業で自分以外の人がほとんど男性、という状況はよくありますが、雰囲気的になんだか発言が少ししづらいなど、違和感があります。あとは教員に男性が多いためか、泊りがけの実習の授業などで女性の引率者がいなくて少し不安になったりもしました。

 施設面でも、例えばトイレが汚い、街灯が少ないなど、女性にとって過ごしやすいとは言えないキャンパスになっていました。トイレは数年前に改装し、女子在校生から大好評でした。

 女性教員にとっても、男性中心の社会はとても不利にはたらきます。例えば研究者の場合、自分の研究を深める上で人間関係はとても大切です。親しくなった人と共同研究をしたり、研究について議論することで自分の研究を深めることができます。人間関係の構築には、共通の知人の存在、酒席での親交、同門であることなどが重要ですが、男性が大多数の集団では、女性は人間関係を広げにくくなってしまう。孤立しやすくなるのです。

テレビの「東大」を敬遠しないでほしい

――こうした問題に対し、男女共同参画室が行っている取り組みについて教えてください。
例えば、女性研究者の孤立については、どのような対策をとっていますか?


 女性研究者の支援としては、女性研究者同士のネットワークづくりを促すイベント、UTokyo Womenを開催してきました。講演会や分科会、交流会を通して、女性研究者同士で情報交換をしたり、本音を言い合う場となっています。このような機会を利用して、声を上げていただきたいとも思っています。

 他にも研究費の援助をしたり、新入りの女性研究者に相談相手となるような先輩の女性研究者を紹介する制度を起ち上げたりしています。
――では、女子学生を増やすための対策には、どのようなものがありますか?                                                                       
 
 女子学生に対する施策の一つとして力を入れているのは、地方圏の高校に対する広報活動。今年度は東大のポスターや説明会の案内を送付します。地理的に東大から遠い地方圏では、バラエティ番組などで紹介される「東大生」のイメージが強いからか、東大を特殊な存在、手の届かない存在と考えている学生が多いようです。
 でも東大は研究環境や教員をはじめ一流の教育設備が整っている。ステレオタイプ的な「東大」を敬遠するのはもったいないですし、ぜひ将来の可能性として視野に入れてもらいたいのです。

 また、東京から離れた場所に住む女子在校生に対する住まい支援や東大のOG組織であるさつき会による奨学金の給付などもあります。
 
 さらに、今年度からオープンキャンパスでは、身近に東大を目指す人が少ない学生とその保護者向けに、学生間・保護者間のネットワークづくりをするイベントを行います。保護者の理解がなければ子供も東大を目指すことはできないので、保護者同士が情報交換をし、安心して子供を東京へ送り出せるような仕組みづくりも重視しています。
  • オープンキャンパスでポスターを展示(総合図書館ライブラリープラザ)

――最後に、全国の女子学生にメッセージをお願いします。

 やはり優秀な学生には、その能力を自覚し、もっと伸ばしてほしい。成長する機会が性別などによって阻まれるのは、あってはいけないことです。

東大に入学すれば、日本一の研究環境で勉強することができますし、将来さまざまな分野の第一人者となるような人々と日常的に交流できます。東大生だからこそ参加できる授業やプログラムもたくさんあります。

卒業後も、卒業生とのネットワークは大変貴重なものとなるでしょう。東大に来ることのメリットは数え切れません。

勉強が好きな人、刺激的な環境で挑戦してみたい人、東大でお待ちしております。
  • 松木理事メッセージ

執筆者からの一言

 いかがでしたか?
東大が抱えている課題と、それに向け男女共同参画室が行っている取り組みについて、少し知っていただけたでしょうか。

 インタビューにもあった通り、東大の一番の魅力は「人」だと私も実感しています。ある分野の第一人者である先生から直々に講義を受け話し合うことができたり、一流の研究者と同じような設備を使って実験や研究ができたり、日常の愚痴から気になる社会問題、哲学的な問いまで何でも深く語り合える友人がいたり……。

こうした東大の良さをより多くの人に知ってもらえたらと思っています。