【Campus Voice】研究室インタビュー~ダイバーシティに富むフラット型のチームが魅力~(大学院理学系研究科合田研究室)<後編>




教員インタビューののちに、合田研究室のスタッフの方や学生さんを交えて座談会が開催されました。この座談会では、研究室におけるダイバーシティや、研究生活、女性研究員のあり方など、幅広い話題について話し合いました。その内容について、拙いながらご紹介していきますので、読んでいただけたら嬉しいです。
 
2020.12.15
座談会進行・インタビュー/学生ライター
津原 萌里 (教養学部2年)

合田研究室の自由な雰囲気

東京大学理学部・大学院理学系研究科の研究室の中でも特に女性や留学生の方が多く所属し、ダイバーシティに富んでいる合田研究室。構成員に上下関係はなく、フラットな関係が築かれています。はじめに、これらのことについて、構成員の皆さんがどのように感じているのかを伺いました。

「日本人にありがちな上下関係が嫌いなので、この研究室では誰とでも気兼ねなく自由にディスカッションができるのが良いですね。」
「合田研究室には様々な国から人が集まっているので、価値観が多様です。生活様式も考え方も人によってそれぞれ異なるので、研究内容についてはもちろん、日常的な話題についても会話が弾みます。」

伺ってみると、1週間に1度のグループミーティングの場だけでなく、いわゆる日常的な雑談の場でも普段は英語を使うそう。座談会中も、英語が飛び交いました。日本語の面白い言葉を留学生に教えることもあるそうで、和気藹々とした雰囲気が伝わってきました。
  • 座談会の様子

「ここに来たのは、この研究室でなら自分が成長できるかもしれないと思ったからです。」と赤峰さん。研究室のホームページで、学生を含めてメンバーみんなが成果を出しているのを見て、自分も積極的に研究を進めていくことができるのではないかと感じたそうです。

研究の楽しさ

研究の楽しさについて伺うと、「研究というのは、8割9割うまくいかないものなのですが、だからこそ、データを解析していて面白いことが見えてきた時は楽しいですね。世界で自分しか知らないことがあるということは非常にワクワクすることです。」と助教の平松先生が教えてくださいました。

「自分は、新型コロナウイルス感染症の影響で自粛していた期間で、自分が手を動かすことが好きなのだということに気づきましたね。」と話してくださったのはペンネーム:トランプ大統領さん。
また、「研究は、やることが尽きません。」「常に高いレベルの成果を求められているのは、大変なことではありますが、同時に非常にやりがいを感じることでもあります。」というコメントもいただきました。
  • 実験の写真

専門分野のダイバーシティ

合田研究室でのダイバーシティは、国籍やジェンダーにとどまりません。

合田研究室のメンバーが大学時代に専門的に学んでいた学問は、生物系、物理系、化学系はもちろん、音楽まで多岐にわたります。大学時代に生理学など、生物系の分野を学んでいたという石井さんは、「この研究室に入って、物理と生物を融合したプロジェクトをやらせてもらった」と話します。「自分の専門以外の分野についてよく知っている人と、一緒に話したり、研究したりするのがとても楽しいです。」と語ってくださいました。

「大学時代に学んだ専門をそのまま今研究に生かしている人ももちろんいますが、これまでの専門とはあまり関係のないことを今研究している人もいます。」と赤峰さん。「専門とは違う分野を研究するにしても、ちょっとしたことで自分の専門の知識が役に立ったり、考え方として参考にできたりすることは多いですね。」

新たな学び

  • 研究室での学び

それでは、分野融合的な研究をするにあたって、自分の専門以外のことをどうやって学んでいくのでしょうか。

「ダイバーシティを本当の意味で実現するためにも、勉強することは大事です。ダイバーシティを研究に活かすには、それぞれがユニークで秀でた能力を持ち合わせることが大切だからです。それに、たくさんの分野を勉強することは高校生や大学生のみなさんが思っているほど大変ではないかもしれません。勉強すればするほど、新しいことを学ぶのがどんどん簡単になっていくからです。」と平松先生。

分野が違っても、学問的な構造が似ていることは多い。そのため、新しいことを理解するスピードがどんどん速くなっていくそうです。

「今はプログラミングをはじめとするITスキルが研究に欠かせません。プログラミングも、この研究室に入って学んだことの一つですね。」と野口さん。プログラミング言語を適宜使い分け、研究を進めているという。「時間があるときや、乗り気な時に一度何かのプログラミング言語に触れておくだけで、必要な時にさっと知りたいことが調べられると思います。」

経験のダイバーシティ

「ここに集まっている人たちは、年齢も、これまでの人生も様々です。ジェンダーやナショナリティだけでなく、そういうダイバーシティがあるのも、この研究室の良いところだと思います。」と切り出したのは、アメリカからきたPetersonさん。大学を卒業して、すぐにこの研究室に入った方もいれば、社会人になって企業で働いたことのある方、お子さんがいる方もいるそうです。

「研究を進めていると、自分が知らなかった面白いことを他のメンバーが持ってきます。新たなことを学び続けられるのは、多彩なメンバー同士の刺激によるところが大きいです。」

女性で、研究者であること

  • 合田研究室の研究者

さらに、女性であり、かつ、研究をしているということに関してどのように感じているのかをお聞きしました。

ところが、「この研究室では、自分が『東大理系女子』であるということを意識したことはあまりないですね。」と、女性の学生さんであるK.R.さん、赤峰さん、野口さんはまるで申し合わせたように話します。
「私は、この研究室に、女性が多いから入ったのではなくて、この研究室の研究のやり方や、メンバーのフラットな関係に惹かれて入りました。」
合田研究室の階層性のない自由な構造が、結果的にこの研究室をダイバーシティ豊かにしているのかもしれません。
「研究をする上で、女性なのか男性なのかということは、あまり重要でないと思います。みんなが平等な関係を築いていれば、自分が発した意見がちゃんと議論されて研究に反映されていきますから。」

一方で、高校時代は理系で研究することを目指すことで良いことばかりがあったわけではなかったそうです。
「高校時代は、同調圧力が強かったですね。理系の女子はそもそも少なかったし、将来、研究をしたいということはあまり理解してもらえませんでした。」
「女性でも実現するのが簡単だという理由で、将来の職業や進路をお勧めされることが特に多かったです。」

それでも、高校生にはやりたいことを追求して欲しいと合田研究室のメンバーは語ります。

「高校生の時は、周りの目がどうしても気になって、みんなから外れたくないと思ってしまうと思います。でも、将来的に楽しく生きていくために、他の人にどう思われるかは気にせず、興味のあることや将来自分が本当にやりたいことを追い求めていって欲しいです。」
「高校生の時期はいくらでも失敗できる時期なので、失敗を恐れず、思いっきり挑戦をしてください。」

高校生へのメッセージ

最後に、高校生へのメッセージをいただきました。
「当たり前だと思われている概念を疑問視していくことから、新たな発見や考え方が生まれます。高校生の皆さんには、既定概念の破壊者になってもらいたい。」と合田教授。

さらに、学生さんからは、
「勉強だけでなく、スポーツなども是非やって欲しい。サイエンスの研究にはこれからチーム力が問われてくるし、自分が精神的に成長する良い機会になると思う。」
「適度なストレスを自分にかけて、将来にむけて頑張って欲しい。」
「学問的な興味は移り変わることもあります。このことを肯定的に捉えて、その時その時に面白いと思ったことを深く勉強して欲しい。」
というメッセージをいただきました。
  • スポーツで息抜き

あとがき

合田研究室の座談会を通して、個人として自分を見つめて、自分の興味を伸ばしていくことと、チームの中で意欲的に研究に貢献し、新たな刺激を受けていくことの両方が大事であるということを感じました。

今回、教員インタビュー、座談会で質問にお答えいただいた、合田教授をはじめ、合田研究室のメンバーの皆様、貴重なお話をお聞かせいただき誠にありがとうございました。

また、高校生の皆さんや学生の皆さん、ここまでこの記事を読んでくださってありがとうございました。東京大学には、このようなダイバーシティに富んだ研究室があり、そこでは、女性のメンバーを含めて多様なバックグラウンドを持つ方々が、積極的に研究に貢献しているということがお伝えできていたらと思います。また、何かこれから生きる上で、参考にできることをお伝えできているならば非常に嬉しいです。是非、これからも夢を追い続けてください!