【Campus Voice】研究室インタビュー~ダイバーシティに富むフラット型のチームが魅力~(大学院理学系研究科合田研究室)<前編>

写真:合田研究室の皆さん

皆さん、こんにちは!
新学年を迎えようとしているこの季節、「どの研究室に⾏こうかな」と考えている⼈も多いのでは?
今回はとっても個性豊かで魅⼒的な研究室、理学系研究科の「合⽥研究室」を紹介します!学⽣と研究員の4 割近くを⼥性が占め、留学⽣も多い合⽥研究室。その素顔を覗いてみませんか?
学生ライターによる合田先生へのインタビュー、研究室の皆さんとの座談会の2本立てでお送りします。

 
2020.12.15
インタビュー/学生ライター
礒貝 桃子(工学部都市工学科 4年)

合⽥研究室プロフィール

光量⼦科学を基盤とする分⼦イメージング法と分⼦分光法にマイクロ流体化学と計算科学(⼈⼯知能)を融合することで、⽣物学と医学において、ルイ・パスツールの名⾔「Chance(serendipity) favors the prepared mind(偶然は⼼の準備が出来ている者を好む)」を実現する技術「Serendipity-Enabling Technologies」の開発を行っています。

また、研究室で獲得した技術や知⾒を⽤いて、グリーンイノベーション領域及びライフイノベーション領域への展開を行っています。

具体的な研究テーマとしては、AIを用いた高速細胞分取装置の開発や、ラマン分光法による無標識分子イメージングなどがあります。


(研究の詳細は合田研究室HPへ:http://www.goda.chem.s.u-tokyo.ac.jp/index_jp.html



 

目次

前編:合⽥圭介教授に話を聞いてみよう!(本記事)
後編:合⽥研究室の皆さんに話を聞いてみよう!(次の記事へ
 

 

前編:合⽥圭介教授に話を聞いてみよう!

・教授プロフィール
北海道札幌市出⾝。1998年に渡⽶。2001年にカリフォルニア⼤学バークレー校(UCバークレー)理学部物理学科を⾸席で卒業。同年にマサチューセッツ⼯科⼤学理学部物理学科に移り、Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory (LIGO)に所属し、重⼒波検出器の量⼦強化について研究(LIGOは2017年にノーベル物理学賞を受賞)。2012年より東京⼤学⼤学院理学系研究科化学専攻の教授。

物心ついた時から、夢は科学者

(礒貝(以下、(礒))⼤学はアメリカに移られたとのことですが、アメリカで学ぼうと思われた理由は何な
のでしょうか?

(合田先生(以下、(合))⼤きく⼆つあって、⼀つはやりたい研究がUC バークレーにあったから。もう⼀つは、⾃分は札幌出⾝で、札幌も5⼤都市には⼊るけれども、機会の格差や情報の格差があると感じており、東京出⾝の⼈たちと対等に戦うには挑戦をしなければならないと感じたから。東⼤⽣も6,7割が関東出⾝ですよね。
(*2020年は合格者の約57%が関東出⾝)

(礒)私も三重県出⾝なので、⼤学進学を機に機会の格差・情報の格差を痛感しました!
 


(礒)科学にはいつ頃から興味を持たれていたのですか?

(合)物⼼ついた時から笑 ⼩学⽣の卒業⽂集には「科学者」と書いていましたね。

(礒)初志貫徹ですね…すごいです…

(合田研究室所属の学⽣(以下、学生))普通「サッカー選⼿」とかじゃないですか(笑)?

(合)⼩学⽣がなりたい職業ランキングみても、1位はサッカー選⼿とかだけど5,6位には科学者が⼊っているから、そんなに変わったことじゃないよ(笑)。
(*2020年に⾏われたある調査によると、⼩学6年⽣男⼦に⼈気の職業第4位に研究者が⼊っていました!)
  • 今回はオンラインにてインタビュー・座談会を行いました

社会風潮に流されない心の強さを

(礒)理系でありながら4 割近くが⼥⼦という合⽥研究室(*理学系研究科・理学部の女子学生割合は16.4%(東京大学HPより)。⼥性研究者に期待することや、将来の⼥性研究者へのメッセージはありますか?

(合)そもそも男⼦とか⼥⼦とかLGBTとかの枠で⾒ていないけれど、まず所感として男⼥の能⼒的な差はない。⼥⼦に限らずだけど、研究者は孤独だから、それに耐えられるようメンタルとフィジカルを鍛える必要はあるかも。科学者において、出る杭は打たれてなんぼ。

(学⽣)(笑)。 社会⾵潮や親の意⾒に流されない⼼の強さは⼤切ですよね。



(礒)私も親戚に医学部に⾏かないの、とか東京は危ないよ、とか⾔われましたけど、⾃分の⼈⽣は⾃分で決めたいですよね。

(合)⾃分の⼈⽣に責任持てるのは⾃分だけだからね。⾃分も早稲⽥⼤学を中退してアメリカに⾏くことを決めた時バッシングを受けたけど、成果を出した今となっては「あの時アメリカ⾏ってよかったね」って⾔われるから(笑)。
  • 合田圭介教授(研究室にて)

異分野融合型研究に求められるのはフラット型のチーム

(礒)合⽥研究室ではどのようなことを意識してマネジメントされているのでしょうか。

(合)異分野融合型研究の話をしましょうか。図1のように、1920年より前は、⼀般的に論⽂は⼀⼈で書くものでしたが、2012年には論⽂あたりの平均共著者数は5.3⼈に増加し、2030 年には7.5 ⼈にまで増えると予想されています。研究が複雑化してきたため、それに対応するために複数分野の研究者からなるチームが必要となってきていることの表れです。今後は多数の異なるバックグラウンド、経験、考え⽅を持った学際的・異分野融合チームを率いることのできる⼈が求められています。
論文ひとつ当たりの共著者数
図1:論⽂⼀つ当たりの平均共著者数
 

(合)このような局⾯で必要なのは、ヒエラルキー型ではなくフラット型の研究チームです。⼀⽅で⽇本の研究は、⼤学、研究所、企業のいずれにおいてもヒエラルキー型が多いです。その理由は、⽇本では縦割り⾏政の公的予算による研究が⼤多数である⼀⽅で、⽶国では公的予算と私⽴予算のバランスがあることが⼤きいですね。公的資⾦では、リスクの⼤きいフラット型を採⽤することは難しいですから。⽇経新聞の記事でも書きましたが、国の研究費分配の⽅法から抜本的に変えていかないと、⽇本で本当のダイバーシティに富んだ、異分野融合チームで研究を進めていくことは難しいでしょう。
 
ヒエラルキー型
図2:ヒエラルキー型               
フラット型
図3:フラット型


(津原(学生ライター))既に専⾨に学ばれている⽅、活躍されている⽅がたくさんいる中に⼊って、「⾃分は何に貢献できるのか」と思ってしまいます。求められる素質などあるのでしょうか。

(合)フラット型ならそもそも「若いから、経験がないから役に⽴たない」とはならないから⼤丈夫。シナジーを⽣み出す⼈、複数⼈の⾔うことを理解し、まとめられる⼈、⾃分の考えを⾔葉にできる⼈が求められるね。

(礒)それは研究に限らず、今社会に求められている素質とも⾔えますね!

理想はSelf-runningの組織

(礒)合⽥先⽣は研究室の運営に⼒を⼊れられている印象を受けますね。

(合)マネジメント能⼒はサッカー部のキャプテンやアメリカの研究室などを経験する中で積んでいきましたね。⻑期的に⾒てトライ&エラーしていくことが⼤切だと思います。Self-runningの組織が⼤事だと思っていますが、組織がしっかりしていれば後は勝⼿に機能します。だから、マネジメントをしっかりする必要があると考えますね。

(礒)ご⾃⾝の研究だけでなく、研究室が、そして研究が発展するために尽⼒されている姿、とても素晴らしいです!研究員の⽅が「着いていこう」となるのがわかります。
  • 学生ライター(礒貝)「自分の所属していない研究室の話を聞ける貴重な機会でした。」

研究室選びのポイントは?

(礒)この時期、「どの研究室に⾏こうかな」と考えている学⽣も多いと思いますが、研究室を選ぶ際のポイントなどありますか?

(合)当然だけど、まずは研究テーマ。でもこれだけで研究室を決めちゃう⼈が多いよね。それ以外にも、研究室の雰囲気が⾃分と合うか、研究室および研究そのものの発展性を⾒るべきだと思う。それを判断するにあたって、教授だけでなく⾊々な⼈が論⽂を出しているかは参考になると思う。数に着⽬しがちだけど、トップダウンで若い研究者が活躍できないのはそれこそヒエラルキー型で、ダメだからね。

(学⽣)合⽥研究室においては、HPの内容が充実しているのも良いと思いました。特に英語が記載されている研究室がほとんどなかったのですよね。

(礒)フラット型が意識されマネジメントされているという点で、合⽥研究室はうってつけですね!本⽇は貴重なお話ありがとうございました。

終わりに

合⽥先⽣の貴重なお話、いかがでしたか??
特に「ヒエラルキー型とフラット型」の話は、研究者はもちろんそれ以外の社会全体にも通じる話だと思いました。研究者になることに不安を感じている⼥性の⽅も、⼀度興味のある研究室を覗いてみてはいかがでしょうか。

続編の「合田研究室の皆さんとの座談会」もぜひご覧になってください!