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花のイラストがある白とピンクの表紙

書籍名

持続可能な社会のための環境教育シリーズ 8 湿地教育・海洋教育

著者名

朝岡 幸彦、笹川 孝一、 日置 光久 (編著)

判型など

150ページ、並製

言語

日本語

発行年月日

2019年9月12日

ISBN コード

978-4-8119-0560-0

出版社

筑波書房

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

湿地教育・海洋教育

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地球の表面は、陸域と水域に分けられる。水域は陸域より広い面積を占めており、湿地と海洋に分けられる。湿地は、大地上にオアシスのように点在し、そこでは多様な生物が生息し、豊かな生態系を提供している。そこから流れ出す水は、あたかも動脈や静脈のように大地を巡り、その末端は海洋に接続している。海洋は、地球上の水の97%以上を有する巨大な水瓶であり、生物や地球環境に決定的な影響を与えている。湿地も海洋も、我々人間にとって必要不可欠なものであるにもかかわらず、あまりにも当たり前でアプリオリな存在として認識されてきた歴史がある。
 
本書は、2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsの理念を受けた「持続可能な社会のための環境教育シリーズ」の中の1冊である。読者は、なぜ「湿地教育」と「海洋教育」が1冊の書籍で同列に扱われるのか疑問に思われるかもしれない。湿地と海洋というとずいぶん異なるもののように感じられるかもしれないが、人との関わりという視点から見てみると、地球上の表層に存在する「水 (水域)」として統一して考えることができるのである。ここで「湿地」とは、wetlandのことを指し、天然であるか人工であるか、永続的なものであるか一時的なものであるかに関わらず、また流水か静水か、淡水か汽水かを問わない。具体的には、湖沼、湿原はもちろん、水田、河川、温泉など多様な形態が存在する。
 
SDGsの17のゴールを眺めてみると、直接「海」、「水」と言う文言が出てくるのは「14 海の豊かさを守ろう」と「6 安全な水とトイレを世界中に」の2つである。しかしながら、例えば「2 飢餓をゼロに」における農作物の増産、「3すべての人に保健と福祉を」における衛生施設、感染対策、「5 ジェンダー平等を実現しよう」における水アクセスの問題、「13 気候変動に具体的な対策を」における洪水、台風、高潮対策、「15 陸の豊かさも守ろう」における水と緑の保全など、「水」は多くのゴールにつながっていることがわかる。

地球表層における「水」の存在形態である「湿地」と「海洋」を統一的に捉えることにより、SDGsの各ゴールを関係づけ、その理念の実現を図ることができるのである。

 

(紹介文執筆者: 教育学研究科・教育学部 特任教授 日置 光久 / 2020)

本の目次

はじめに
序  章 SDGsにおける湿地教育・海洋教育
第1章 湿地教育の教育学を考える
第2章 水のつながりに生きる学び
第3章 CEPAにおける体験学習の役割
第4章 学校教育における海洋教育の展開
第5章 「海洋教育」という物語
第6章 タンチョウ保護と共生のための湿地教育
第7章 ツルに関わる環境教育・活動の意義―鹿児島県出水市―
第8章 地域づくりと「湿地の文化」教育
終  章 エコロジストが考える地域の人づくり

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