features
令和5年度役員等の紹介
features

新役員等の略歴と就任挨拶

新理事・副学長、新執行役・副学長、新執行役、新副学長、新副理事の略歴および就任に当たっての挨拶を掲載します。

機能拡張する大学を支える

このたび、150周年記念事業、社会連携、産学協創を担当する理事・副学長を拝命いたしました。東京大学は法人化以降、教育、研究に加え社会貢献を主要なミッションとし、その機能を拡張してきました。社会連携、産学協創は機能拡張そのものであるとともに教育研究を支える基盤としての成長を遂げています。日本も世界も東京大学も、今、大きな転換点を迎えていると感じており、この時代にキャンパスの壁を乗り越え、多くの皆様と対話し活動を広げていくことに大きな責任を感じるとともに、楽しさも感じています。また、東京大学は明治10年(1877年)4月12日、東京開成学校と東京医学校とを合併して創設されました。4年後の2027年には創立150周年を迎えます。皆様とともにこの記念すべき節目を祝うとともに、過去を見つめなおし、未来を語る機会としたいと考えております。

私自身は海洋のプランクトンを研究してきた者で、研究面では社会とのつながりは太くありませんでした。社会連携担当の執行役を2年間勤めてきましたが、かなり背伸びしてきた感があります。今年度からは、150周年、産学協創が加わり不安は大きいのですが、全力で職務に向き合う所存ですので、皆様のご協力をお願いいたします。

理事・副学長 津田 敦 TSUDA Atsushi
津田 敦の顔写真
昭和57年3月
北海道大学水産学部卒業
昭和59年3月
本学農学研究科修士課程修了
昭和62年3月
本学農学研究科博士課程修了、農学博士
昭和63年11月
本学海洋研究所助手
平成8年4月
水産庁北海道区水産研究所室長
平成15年4月
本学海洋研究所助教授
平成23年4月
本学大気海洋研究所教授
平成25年4月
本学総長補佐
平成27年4月
本学大気海洋研究所所長
令和3年4月
本学執行役・副学長
専門分野:
生物海洋学
研究内容:
1) Tsuda, Atsushi 他25名 "A mesoscale iron enrichment in the western subarctic Pacific induces large centric diatom bloom." Science 300 (2003): 958-961.
趣味:
バードウォッチング

東京大学の未来を見据えて

このたび教育改革、キャンパス長期構想、大学総合教育研究センター担当の執行役・副学長を拝命いたしました。どれも、大学の未来を見据えた長期的な視野を持って、対処しなければならない事項です。

教育改革で重視すべきことは、教育の信頼性の確保と教育および教育支援方法の改革です。学生の資質に合った教育方法、教育の成果を測る試験や成績評価、東京大学の教育水準の信頼性を確立しなければなりません。ICT技術の発達により、学習者個々の状況に寄り添った教育方法の選択が可能になりつつあります。他方で、ICT技術を悪用する方法も巧妙になってきています。これまでの教育方法や評価方法をそのまま維持することは、難しくなりました。そのためには、どのような改革が必要なのかを皆様と共に考えていきたいと思います。現在開発されているUTokyo One(UTONE)は現状を打破する可能性を秘めています。ただ、これを全学展開するにはソフト自体を改善するだけでなく、教育システム自体を改革することも必要です。

キャンパス長期構想で重視すべきことは、キャンパス内の不動産の使い勝手・価値・整備の向上に加え、周辺地域を含む学外との協創によるエリア価値や大学価値の向上です。地域とのかかわりも増えてきていますが、それを体系化し大学の価値向上への歩みを進めていかねばなりません。今後の東京大学を考えるとき、社会と共に価値を維持し、創造していくことが大切です。任務遂行に努力していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

執行役・副学長 浅見泰司 ASAMI Yasushi
浅見泰司の顔写真
昭和57年3月
本学工学部卒業
昭和62年5月
ペンシルヴァニア大学地域科学専攻博士課程修了(Ph.D.)
昭和62年5月
本学工学部助手
平成2年10月
本学工学部講師
平成4年10月
本学工学部助教授
平成13年4月
本学空間情報科学研究センター教授
平成22年4月
本学空間情報科学研究センターセンター長
平成24年4月
本学工学系研究科教授
平成29年4月
本学工学系研究科副研究科長
令和2年4月
本学副学長
専門分野:
都市計画学、不動産学、空間情報科学
研究内容:
1) H. Nishi, Y. Asami, H. Baba & C. Shimizu “Scalable spatiotemporal regression model based on Moran’s eigenvectors” International Journal of Geographical Information Science, 37(1) (2023): 162-188. 2) M. Suzuki, S. E. Ong, Y. Asami, C. Shimizu “Long-run renewal of REIT property portfolio through strategic divestment” Journal of Real Estate Finance and Economics, 66(1) (2023) 1-40.
趣味:
パズル、テニス

愛され、頼られる東大を目指して

この度、コミュニケーション機能強化推進担当の執行役・副学長、広報戦略本部長を拝命しました。

国際的認知度はともかく、東大のことを知らない日本人はまずいないと思いますが、世間一般の東大に対するイメージは必ずしも実態とあっておらず、誤解されていたり、知られていない部分も多いと思います。東大の持てる力を社会のために十分に活用できていないかもしれません。

私は、東日本大震災後に岩手県大槌町のセンターに赴任し、津波や地震の海洋生態系への影響を調べるとともに、被災したセンターの復旧にあたりましたが、ある時、地域の方から「東大が何をやっているのか分からない、地元の役には立たない」と言われ、大きなショックを受けました。これをきっかけに、どうしたら地域に貢献できるか、愛される研究所になれるかをセンター教職員一丸となって考え、社会科学研究所の皆さんとともに「ローカルアイデンティティ」と「対話」をキーワードにしたプロジェクト「海と希望の学校 in 三陸」を始めました。その後、大気海洋研究所の所長を拝命し、こんどは大気海洋科学で地球環境問題を解決すること、大気海洋科学のファンを増やすことを考え、所の教職員と一緒にいろいろな改革を行いました。

今回、東大全体のコミュニケーション機能強化と広報の担当を仰せつかりましたので、東京大学がより多くの皆さんにさらに愛され、頼りにされる存在になるための仕掛け作りを皆さんと一緒に考えたいと思います。ご指導、ご協力いただきますようお願いします。

執行役・副学長 河村知彦 KAWAMURA Tomohiko
河村知彦の顔写真
昭和61年3月
本学農学部卒業
昭和63年3月
本学農学系研究科水産学専攻修士課程修了
昭和63年4月
水産庁東北区水産研究所研究員
平成6年10月
博士(農学)学位取得
平成12年7月
本学海洋研究所助教授
平成24年5月
本学大気海洋研究所教授
平成26年4月
本学大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センター長
令和元年4月
本学大気海洋研究所所長
専門分野:
海洋生態学、水産資源生物学
研究内容:
1) Takami H., Won NI. and Kawamura T. “Impacts of the 2011 mega-earthquake and tsunami on abalone Haliotis discus hannai and sea urchin Strongylocentrotus nudus populations at Oshika Peninsula, Miyagi, Japan.” Fisheries Oceanography 22 (2013): 113-120. 2) Kawamura T., Roberts RD. and Takami H. Importance of periphyton in abalone culture. Periphyton: Ecology, Exploitation and Management. Wallingford (UK): CABI Publishing, 2005.
趣味:
バードウォッチング、昼休みサッカー、カタツムリ採集

社会変革を先導する挑戦者の育成

このたび、スタートアップ、知の価値化を担当する執行役・副学長を拝命いたしました。スタートアップ支援やアントレプレナーシップ教育などを分担いたします。

これまでの3年間、工学系研究科長・工学部長を務めて参りました。この間、企業や地域との連携を中心とした社会連携、さらに系統的なアントレプレナー育成プログラムの構築などに力を入れて研究科の教育研究活動を進めてきました。

申し上げるまでもなく現代社会が直面する課題は困難さと複雑さを増しています。気候変動に伴う自然災害の大規模化、新型コロナウィルス感染症の長期化、地政学的な緊張の高まり、エネルギー危機など難題が、わたくしたちの想像を超えるスピードで変化し続けています。社会に横たわる課題の本質を見抜き、新しいアイデアで具体的な解決方法を構想し、そして自ら行動する。この一連のアクションこそが、アントレプレナーシップといえます。将来どのようなキャリアを選択しようと、アントレプレナーシップ・スピリッツは重要です。アントレプレナーシップ教育を推進し、多くの部局と連携しながら、より良い未来の実現にむけて社会変革を力強く先導する人材の育成ならびにスタートアップの支援に貢献して参りたく存じます。みなさまのご理解とご支援を何卒よろしくお願いいたします。

執行役・副学長 染谷隆夫 SOMEYA Takao
染谷隆夫の顔写真
平成4年3月
本学工学部電子工学科卒業
平成9年3月
本学工学系研究科電子工学専攻博士課程 修了
博士(工学)
平成9年4月
本学生産技術研究所助手
平成10年4月
本学生産技術研究所講師
平成12年1月
本学先端科学技術研究センター講師
平成14年5月
本学先端科学技術研究センター助教授
平成15年5月
本学工学系研究科助教授
平成21年4月
本学工学系研究科教授
令和2年4月
本学工学系研究科長・工学部長
専門分野:
半導体工学
研究内容:
1) Someya, T., Bao, Z. & Malliaras, G. “The rise of plastic bioelectronics.” Nature 540 (2016): 379–385
趣味:
散歩、写真撮影

活力を発揮すればこその多様性へ

2021年度の東京大学入学式で教養学部長として式辞を述べたわたしは、聖アウグスティヌスのことばを引用しました。それは、もし万物がみな同じであったなら、万物は存在しないことになるであろうということばでした。

ここには万物の多様性が語られています。あなたとわたしとが同一であったなら、あなたもわたしも存在しないことになる。あなたが存在し、わたしが存在するためには、あなたとわたしとの非同一性が必要である。これを万物に敷衍して述べれば、そこには万物の多様性が必要である。

このたび、学術長期構想を主担当として、執行役・副学長に就任しました。本学における研究の多様性。これについては論を待ちません。他方で教育、とくに学部教育については、学生の同質化傾向が夙に論じられてきました。

わたしが構想するのは、同質化傾向に屈することなく、みずからの個別性を発揮しようとする学生を育成することです。他者と同一であるがゆえに存在しないことになってしまうのではなく、他者と違うからこそみずからも、そして他者をも独自の存在として活かすことができるような学生を育成することです。たんなる雑多なものの寄せ集めでなく、それが活力となるような多様性。そういう学生を育成するために、どのような教育が必要なのか、そしてまた、そのような教育を施すためにはどのような学生を入学させるべきなのか、学術長期構想という観点から考えたいと思います。

執行役・副学長 森山 工 MORIYAMA Takumi
森山 工の顔写真
昭和59年3月
本学教養学部教養学科卒業
昭和61年3月
本学社会学研究科修士課程修了
平成6年7月
本学総合文化研究科博士課程修了
平成12年4月
本学総合文化研究科助教授
平成24年4月
本学総合文化研究科教授
令和3年4月
本学総合文化研究科長・教養学部長
専門分野:
文化人類学
研究内容:
1) 森山 工『贈与と聖物──マルセル・モース「贈与論」とマダガスカルの社会的実践』東京大学出版会,2021年. 2) 森山 工『「贈与論」の思想──マルセル・モースと〈混ざりあい〉の倫理』インスクリプト,2022年.

資産運用は、低金利の終焉とともに新たな局面へ

このたび、35年間務めた資産運用業界を離れ、初めて資産オーナー側の執行役・資金運用担当に就任いたしました。ファンドマネジャーとして、先進国、新興国のグローバル株式・債券への投資や、資産配分の決定を行ってきました。平成12年からは各社で最高投資責任者(CIO)として、運用部門のマネジメントも担当し、合併統合の実務を3度経験しました。ブラックロック社では、中長期経営戦略が明確で、ガバナンス体制の強い日本企業20社強に集中投資する「ガバナンス・フォーカス・ファンド」を設定、運用を担い、企業経営者との対話エンゲージメントを進めました。

世界の金融市場では、インフレ率と経済活動が安定し、金融資産の収益率が高い投資環境“The Great Moderation(偉大なる安定期)”が約20年続きましたが、終焉を迎えました。ポスト・コロナ時代は、グローバリゼーションの停滞、地政学リスクの高まり、中国を筆頭に主要国の高齢化に伴う生産人口の減少などから、インフレ、市場変動率の上昇との共存が必要になります。日本でも、日銀による長期金利上限の修正・撤廃が予想されています。こうした新しい投資環境の中では、伝統的な資産配分から、より柔軟で耐性のあるポートフォリオ構築が求められます。財務部資金運用チームとともに、金融市場の不確実性が高まる中、リスク調整後のリターン最適化にむけて挑戦していきます。

執行役 福島 毅 FUKUSHIMA Takeshi
福島 毅の顔写真
平成3年5月
Columbia Business School 修了 MBA
昭和62年8月
日興證券投資信託委託(現日興アセットマネジメント)
平成7年2月
日本バンカーストラスト信託銀行(現ドイチェ・アセットマネジメント) 平成12年より常務執行役員CIO
平成20年10月
明治ドレスナー・アセットマネジメント(現明治安田アセットマネジメント)執行役CIO
平成27年3月
GIキャピタル・マネジメント CIO
平成28年5月
ブラックロック・ジャパン 取締役CIO
専門分野:
CFA/Chartered Alternative Investment Analyst
趣味:
大相撲観戦、鉄道の旅、食べ歩き

熊野の歴史に学びつつ

この度、地域連携・渉外活動促進担当の副学長を仰せつかりました。この二年間、人文社会系研究科長・文学部長として、和歌山県熊野地方の中核都市新宮市との地域連携活動を中心としつつ、人文学を応用・活用しての各種連携活動の推進可能性を模索して参りました。今年度からは、既に様々な部局が展開して来られた様々な地域連携活動の更なる発展と、個々の地域連携活動間の更なる連携を図ることを課題としたいと思っております。

部局長就任時に、理事の方から、文学部も寄付活動により積極的に取り組んだらどうか、と言われた際には途方に暮れたものですが、社会連携本部にお世話になりつつ、試行的にではありますが、いろいろと推進する方向に舵を切って参りました。今般、その社会連携本部に身を置くことになり、些か戸惑ってもおります。しかし、地域連携活動を展開してきた熊野は、古来「勧進」を重視してきたことで知られています。「勧進」とは英語で言うところのファンド・レイジングにあたります。熊野は古くから全国に向けて様々にその魅力を発信しつつ、勧進に成功し、かつては蟻の隊列のように人々が熊野に詣でたと言い、「蟻の熊野詣」と呼ばれたようです。古来、あらゆる人々を受け入れ、かつ様々にその魅力を喧伝してきた熊野の歴史に学びつつ、人文学的な観点を盛り込んでの地域連携・渉外活動推進に微力を尽くせればと願っております。どうぞよろしくお願いいたします。

副学長 秋山 聰 AKIYAMA Akira
秋山 聰の顔写真
昭和61年3月
本学文学部卒業
平成元年3月
本学人文科学研究科修士課程修了
平成5年3月
本学人文社会系研究科博士課程単位取得満期退学
平成7年2月
フライブルク大学哲学部博士課程修了
平成7年4月
電気通信大学電気通信学部助教授
平成9年4月
東京学芸大学教育学部助教授
平成18年4月
本学文学部助教授(19年~准教授、23年~教授)
令和3年4月
本学人文社会系研究科長・文学部長
専門分野:
美術史学
研究内容:
1) 秋山聰『聖遺物崇敬の心性史 西洋中世の聖性と造形』講談社 2009年(2018年) 2) Akira Akiyama, Relic or icon? : the place and function of imperial regalia., In: The nomadic object, Brill 2018, pp,430-447
趣味:
西洋古典音楽鑑賞(とりわけヘンデル、ハッセ等のバロックオペラ)、古社寺を訪ね、修験の道を歩くこと、磐座探訪等

学術の進化と東京大学

2年間医学系研究科長・医学部長を務めさせていただき、この4月からは副学長として少し違う立場で東京大学の運営のお手伝いをさせていただくことになりました。担当は「生命系国際協創、ライフサイエンスイノベーション、WPI(IRCN)」と少し長いので、内容がわかりにくいかもしれませんが、医学や生命科学に関連した東京大学のアクティビティーを更に活性化し、国際性を高めるためのアイディアを出し、それを実現することが重要なミッションなのだと理解しています。生命の不思議さは長い進化の過程で多様性を獲得しつつ、生物種は競争しながらも共存し、動的な調和を維持してきた所にあると思います。過去には地球規模の気候変動のような危機的状況も経験しながら、しぶとく生命は性質を変化させ、相互に助け合い、繁栄を継続してきました。SDGsは人類にとっての重要な課題ですが、地球上の生物が何億年にもわたるsustainable developmentを実現してきたことは驚異です。生物をお手本にして学術も多様性を拡大しつつ、競争と調和により次の段階へと進化していく必要があります。東京大学の生命科学研究の多様なリソースや人材を活用して、次世代型研究の見本となるような活動を生み出していければと思います。

副学長 岡部繁男 OKABE Shigeo
岡部繁男の顔写真
昭和61年3月
本学医学部卒業
昭和63年9月
本学医学部助手
平成5年5月
米国国立保健研究所客員研究員
平成8年6月
工業技術院 生命工学工業技術研究所 主任研究官
平成11年4月
東京医科歯科大学医学部教授
平成19年9月
本学医学系研究科教授
令和3年4月
本学医学系研究科長・医学部長
専門分野:
神経細胞生物学
研究内容:
1) Y. Sugiyama 他4名. “Determination of absolute protein numbers in single synapses by a GFP-based calibration technique.” Nature Methods 2 (2005): 677-684. 2) Y. Kashiwagi 他6名. “Computational geometry analysis of dendritic spines by structured illumination microscopy.” Nature Communications 10 (2019) 1285.
趣味:
鍵盤楽器演奏

試される大学の総合力

GX連携とフード/アグリイノベーションを担当することになりました。いずれも私たちが直面している地球規模課題そのものであり、相互に関連しています。

GXに関しては温室効果ガスの排出削減が大きな目標となっています。最近では生物多様性保全の観点も重視されるようになってきました。食料は言うまでもなく人類の生存に必須です。耕地の拡大、肥料や農薬の利用、機械化、これらに適合した品種の作出によって食料生産は効率化され、世界人口の増加を支えてきました。ところが、食料の生産、流通、消費の過程で、温室効果ガスの排出や生態系の破壊、水資源の過剰利用など、私たちは大きな環境負荷を与え続けています。

良質なエネルギーと良質な食料を持続的に生産し、公正に分配することが求められており、今すぐにグローバルな視点で解決しなければなりません。その一方で、それぞれの地域の持つ風土や歴史、社会構造に適した解決策を構築する必要があります。

これらの課題は多元的であり、それぞれの要素はしばしばトレードオフの関係にあります。トレードオフを回避するための知恵を、本学が持つ総合力で生み出していくことが社会から要請されています。大学構成員のみなさまの力を結集することのできるような場を作ることに、少しでも貢献したいと考えております。よろしくご協力をお願い申し上げます。

副学長 堤 伸浩 TSUTSUMI Nobuhiro
堤 伸浩の顔写真
昭和58年3月
本学農学部卒業
昭和63年3月
本学農学系研究科博士課程修了
昭和63年4月
日本学術振興会特別研究員
平成2年1月
本学農学部助手
平成8年4月
本学農学部助教授
平成14年8月
本学農学生命科学研究科教授
令和元年4月
本学農学生命科学研究科長・農学部長
専門分野:
植物分子遺伝学
研究内容:
1) Hideki Takanashi, Mitsutoshi Shichijo, Lisa Sakamoto, Hiromi Kajiya-Kanegae, Hiroyoshi Iwata, Wataru Sakamoto, Nobuhiro Tsutsumi. “Genetic dissection of QTLs associated with spikelet-related traits and grain size in sorghum.” Scientific Reports 11:9398 (2021)

不易と変化が共存する学びの場から都市へ

この度、産学協創推進、資産活用推進、都心サテライト拠点を担当する副学長を拝命しました。私自身は都市工学を専門とし、2016~2020年度にはキャンパス計画室長を務めさせて頂きました。大学キャンパスは都市と同様に永遠に未完成であり、伝統的な不易の空間と時代の要請に合わせてつくり変えていく変化の空間が共存する創造的活動の場です。加えて、メタバースなどのサイバー空間を含め、いまや大学キャンパスの概念は変革を遂げようとしています。

かつて滞在したウィーン工科大学は明確なキャンパスを持たず、ウィーンの街なかに施設が分散しており、いわば都市がキャンパスでした。シラバスも書店で販売しており、学ぶ意欲の高い市民が学生と共に大学の授業を聴講していました。欧州最古の大学があるボローニャ、サラマンカなどの欧州都市では明確なキャンパスを持たない大学も少なくありません。それに対し、一般にこれまでの日本の大学は主として従来のキャンパスの境界の中で高度な教育研究活動を集約させてきましたが、本学でも藤井総長の下、UTokyo Compassの方針に基づき、新たなキャンパス像を創造することになると思います。社会人を含め誰もが学びやすい環境を求めて都市に積極的に出ていくと共に、都市と一体となった起業の場や民間企業との産学協創の場づくりを目指すことになると思っております。そのために微力を尽くして参りたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

副学長 出口 敦 DEGUCHI Atsushi
出口 敦の顔写真
昭和59年3月
本学工学部都市工学科 卒業
平成2年3月
本学工学系研究科博士課程 修了
平成2年4月
日本学術振興会 特別研究員
平成4年4月
本学工学部都市工学科 助手
平成5年4月
九州大学工学部建築学科 助教授
平成18年1月
九州大学大学院人間環境学研究院 教授
平成23年4月
本学新領域創成科学研究科社会文化環境学専攻教授
令和3年4月
本学新領域創成科学研究科 研究科長
専門分野:
都市計画学、都市デザイン学
研究内容:
1)『 ストリートデザイン・マネジメント』(共編著、学芸出版社)、2)『都市計画の構造転換』(共編著、鹿島出版会)、3)『Society 5.0』(日立東大ラボ編著、日本経済新聞出版社)
趣味:
ラグビー、スポーツ観戦

インクルーシブな大学をめざして

このたび副学長を拝命し、相談支援研究開発センター、ガバナンス改革推進戦略、ハラスメント防止を担当することになりました。

このうちガバナンス改革推進戦略は、一昨年度に執行役・副学長、昨年度に総長特別参与として担当した業務の延長となります。本学は現在大きな転換期を迎えつつありますが、本学が教学と経営の両面でさらなる発展をとげる基盤として、本学の伝統をふまえた自律的で機能的なガバナンスのあり方を検討、整備するお手伝いをさせていただきます。

相談支援研究開発センターの業務ははじめてとなりますが、これまで自身の研究の一部として行ってきた法律相談・法的支援の研究の知見でも、相談支援体制の強化は、真にインクルーシブな社会を構築するうえで重要な要となる施策と位置づけられています。藤井総長のもと、UTokyo Compassでは、「多様性と包摂性」および「世界の誰もが来たくなる大学」を基本理念として掲げていますが、本学における相談支援体制の充実・強化はこれらの基本理念の具体化と深く結びついています。ハラスメント防止もまた、多様なバックグランドをもつ構成員が、相互の人格と生き方を尊重し、のびのびと活動を行っていくうえで重要であることはいうまでもありません。多様性と包摂性を備えた東京大学を実現し、「世界の誰もが来たくなる大学」の理念をさらに「世界の誰もが来て良かったと思える大学」にまで発展させることをめざして微力を尽くしたいと思います。

どうぞ宜しくお願いいたします。

副学長 佐藤岩夫 SATO Iwao
佐藤岩夫の顔写真
昭和56年3月
東北大学法学部卒業
昭和57年4月
東北大学法学部助手
平成4年4月
大阪市立大学法学部助教授
平成12年3月
博士(法学)(東北大学)
平成12年10月
本学社会科学研究所助教授
平成17年10月
本学社会科学研究所教授
平成30年4月
本学社会科学研究所所長
令和3年4月
本学執行役・副学長
令和4年4月
本学総長特別参与
令和5年4月
本学相談支援研究開発センター特任教授
専門分野:
法社会学
研究内容:
1) 佐藤岩夫『司法の法社会学Ⅰ:個人化するリスクと法的支援の可能性』『同Ⅱ:統治の中の司法の動態』信山社,2022年 2)佐藤岩夫『市民社会の法社会学:市民社会の公共性を支える法的基盤』日本評論社、2023年
趣味:
建物鑑賞、山歩き

米国の総合大学での経験も活かして

このたび、副学長を拝命しました。財務戦略、国際エグゼクティブ教育、東京カレッジを担当します。

UTokyo Compassにあるように、自律的で創造的な大学活動のためには、経営力の確立が不可欠です。その経営力の重要な一部が財務戦略です。財務担当理事の相原先生を少しでも助けることができれば幸いです。令和3年4月から2年間、経済学研究科長を務めていた時には、藤井総長や相原理事のご支援の下、経済学研究科の財務基盤の確立に努め、余剰資金を本部で信託運用してもらう仕組などを作って頂きました。今度は全学レベルの財務基盤発展にお役に立てればありがたく思います。

国際エグゼクティブ教育は、その具体的な内容はこれからですが、リカレント教育をはじめとする社会連携担当理事の津田先生、国際担当理事の林先生、教育担当理事の太田先生、そして学生支援担当理事の藤垣先生とご相談しながら、作っていくのを楽しみにしております。

東京カレッジの方は、その副カレッジ長も、この4月から拝命しましたので、本部と密接に連絡をとって、このユニークな機構の発展に努力したいと思います。

経済学研究科長在任中の経験だけではなく、令和元年9月に本学に赴任する前に所属した米国の総合大学での経験も活かしつつ、任務遂行のために努力する所存です。どうかよろしくお願いいたします。

副学長 星 岳雄 HOSHI Takeo
星 岳雄の顔写真
昭和58年3月
本学教養学部卒業
昭和63年6月
Massachusetts Institute of Technology, Ph.D. in Economics
昭和63年7月
University of California, San Diego, Graduate School of International Relations and Pacific Studies, Assistant Professor
平成6年7月
同 Associate Professor
平成12年7月
同 Professor
平成14年7月
同 Pacific Economic Cooperation Professor of International Economic Relations
平成24年12月
Stanford University, Freeman Spogli Institute for International Studies, Henri and Tomoye Takahashi Senior Fellow
令和元年9月
本学経済学部教授
令和3年4月
本学経済学研究科長・経済学部長
専門分野:
金融、マクロ経済学、日本経済論
研究内容:
1) The Political Economy of the Abe Government and Abenomics Reforms (Co-edited with Phillip Lipscy) Cambridge, UK; Cambridge University Press, 2021. 2) The Japanese Economy, 2nd Edition (Co-authored with Takatoshi Ito) Cambridge, MA; MIT Press, 2020.
趣味:
ゴルフ、スポーツ観戦

学外組織との協働による知のプラットフォームの構築

このたび、学術経営戦略、国際協創、放射光施設、イノベーションコリドーを担当する副学長を拝命いたしました。UTokyo Compassは、「対話による創造」が謳われており、学内にとどまらず、学外組織との協働による知のプラットフォームの構築およびその活動推進は重要な課題です。

その中で、2018年にスタートした「つくば-柏-本郷イノベーションコリドー」構想は、柏IIキャンパスを拠点として、この5年大きく発展しました。今後も、OPERANDO-OIL(先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ)活動や産学官民連携棟における新しい学融合研究活動の推進、TIA(つくばイノベーションアリーナ)の活動支援など、産学官民の交流拠点としての活動を推進する予定です。

さらに本学では、国際連携を真に進めるため、東京大学の海外拠点を作り、本学の研究者らが海外の研究者らと共に知のプラットフォームを立ち上げ、互いの強みを生かした世界最先端のユニークな研究や次世代育成を推進し、国際協創の場とすることを目標としています。そして、これらの活動を進める上でも、研究データを活用しながら、学術経営戦略としてリサーチインテリジェンス機能を強化することも重要です。

これらの課題に対し、部局長、総長特任補佐の経験を生かして、皆様と協力しながら諸活動を進めていく所存ですので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

副学長 森 初果 MORI Hatsumi
森 初果の顔写真
昭和59年3月
お茶の水女子大理学部化学科卒業
昭和61年3月
お茶の水女子大大学院理学系修士課程修了
昭和61年4月
本学物性研究所文部技官
平成元年4月
(財)超電導工学研究所研究員
平成4年3月
理学博士学位取得(東京大学)
平成13年9月
本学物性研究所助教授
平成22年4月
本学物性研究所教授
平成30年4月
本学物性研究所長
令和4年4月
総長特任補佐(副学長待遇)
専門分野:
分子性固体科学
研究内容:
1) M. Ito, H. Mori* et al., “Ambipolar Nickel Dithiolene Complex Semiconductors: From One- to Two-Dimensional Electronic Structures Based upon Alkoxy Chain Lengths”, J. Am. Chem. Soc. 145 (2023): 2127-2134. 2) T. Isono, H. Mori* et al., “Hydrogen bond-promoted metallic state in a purely organic singlecomponent conductor under pressure”, Nature Commun. 4 (2013): 1344(1-6).
趣味:
スロージョギング、音楽鑑賞

多様な働き方の推進に向けて

このたび、多様な働き方の推進、人件費分析担当の副理事を拝命いたしました小寺孝幸と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

本学では、藤井総長のもとに、UTokyo Compassの基本理念において、「世界の誰もが来たくなる大学」の実現を目指し、教職員の働き方の再点検を進め、雇用のシステム整備に取り組む方針が掲げられております。

新型コロナウイルスの流行は、これまでの働き方を大きく一変させ、在宅勤務の本格的な導入につながりました。本学では、当初の感染予防対策としての運用からさらに歩みを進め、令和4年4月から、ウィズコロナ、ポストコロナに対応した働き方として、適切な労務管理のもとに、より柔軟に在宅勤務が可能となる制度の運用が開始されました。

令和5年度からは、職員の定年年齢の段階的な引上げが行われます。雇用の安定を確保するための人件費財源に留意しつつ、職員が個々の事情に応じた多様な働き方を選択でき、将来の働き方がより具体的にイメージできるキャリアパスを構築していくことが課題と考えます。

多様な働き方の推進に向けて、教職員一人ひとりが仕事を通じて生きがいを感じ、意欲・能力を発揮できる環境づくりに、微力ではありますが、少しでも貢献してまいりたいと思います。皆様のご支援とご協力をよろしくお願いいたします。

副理事 小寺孝幸 KODERA Takayuki
小寺孝幸の顔写真
昭和60年4月
本学採用
平成23年4月
教養学部等総務課長
平成25年12月
東京学芸大学総務部人事課長
平成28年4月
経済学研究科等事務長
令和2年4月
教養学部等事務部長
趣味:
旅行、野球観戦

新たな組織の拠点として

このたび、総長業務支援統括担当の副理事を拝命いたしました高橋です。

教員、職員、学生という立場が異なる多様性のある構成員にて形成され、それぞれが自由に意見し、広く大学の活動に参画する事ができる特有の文化を持った大学にて、これまで、本学の職員として主に教育研究推進業務を行う学生支援、社会連携や法人業務を行う事務部門に従事してまいりました。

本学は、東京大学憲章の理念や目標を具体化するために、藤井総長のもと、「対話から創造へ」「多様性と包摂性」「世界の誰もが来たくなる大学」を基本理念としたUTokyo Compassが策定されました。

また、東京大学憲章やUTokyo Compassの方針をさらに発展させる取り組みとして、新たな大学モデルの構築を行うべく方向に舵を切り進んでおります。

新たな大学モデルの構築を行うには、教員、職員、学生の構成員からまた部局としての意見等の声に耳を傾け、対話を基本路線とすることが、最も大切な事と思います。

総長業務支援統括担当として、新たな組織の拠点の一助になればと考えております。

また、これまでの経験を活かし、総長をはじめ、理事及び副学長の皆様のお役にたつことができればと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

副理事 高橋喜博 TAKAHASHI Yoshihiro
高橋喜博の顔写真
平成元年4月
本学採用
平成23年4月
教養学部等学生支援課長
平成27年4月
本部学生支援課長
平成30年4月
本部社会連携推進課長
令和3年4月
生産技術研究所事務部長
趣味:
サーフィン、登山
features

退任の挨拶

前年度で退任さ退任の挨拶れた執行役・副学長と副学長の挨拶を掲載します。

コミュニケーションと入試改革

前執行役・副学長 武田洋幸

この2年間、執行役・副学長としてコミュニケーション機能強化推進と入試改革に取り組んでまいりました。

コミュニケーションについては、従来の「広報」に収まらない、様々なステークホルダーとの双方向コミュニケーションを目指しました。「総長対話」で司会を務めるなか、総長が強調されてきた対話の価値を実感しました。また、部・課を横断するコミュニケーションチームを結成して、キャンペーンを展開しました。そして研究成果の発信に加え、大学と社会とつなぐことに力点を置き、公式Twitterで「今日は何の日」シリーズを立ち上げたこと、時事的な内容の研究成果をタイムリーに配信する体制を構築できたことは思い出深いです。それぞれまだ道半ばですが、大学が分断されがちな社会の懸け橋となることに少しでも貢献できたとすれば幸いです。

入試については、推薦入試(学校推薦型選抜)の実施と改革に取り組み、制度改革の定着と説明会活動の強化に努めました。コロナ禍が続くなか、何とか踏みとどまれたのではと思います。

最後に、私は3月をもって本学を退職し、私立大学に籍を移しますが、協力していただいた教員と職員の方々に深く感謝するとともに、外から本学の発展を見守りたいと思います。

いま産学協創は加速度的発展段階に

前副学長 吉村 忍

気づいてみると6年間も産学協創担当の副学長を務めていました。この間、産学協創のゼロからの立上げ、浅野地区の産学協創拠点の計画づくり、基盤づくり(企業懇談会、ラボ長会議、UTokyo Compass、コーディネート人材要件、利益相反マネジメント、GXシンポジウム等)に関わりました。ご一緒した企業は日立、NEC、ダイキン、住友林業、三井不動産、日本ペイント、クボタ等、テーマもエネルギー・環境、まちづくり、空気・空調、コロナ感染対策、木と森林、食・水と多岐にわたり、FSI本部ラボイニシアティブ座長も務めました。正直なところ、教員や企業の皆様に産学協創の意義を理解いただき、ビジョンづくりを行い、産学協創ならではの研究プロジェクト等を組成していくこと、それらを東大、企業、社会のいずれにとっても価値あるものに一緒に作り上げていくことは容易ではありませんでした。しかし、それらは、知的にも社会的にも刺激的でクリエイティブな経験であり、楽しみながら参加していました。いま産学協創はUTokyo Compassのもと定常的発展、加速度的発展段階に入りつつあり、今後は一教員として貢献できればと思います。これまで、本部役員・職員の皆様、部局長の皆様、教員の皆様には多大なご支援をいただき心よりお礼を申し上げます。