About周年事業とその想い「響存」

東京大学をかえりみる

東京大学が生まれたのは、日本が開国と維新をへて近代国家をつくろうとした時代でした。帝国大学という名の総合大学として、法・行政・科学・医学・産業・経済・文化・教育などさまざまな専門領域で活躍する人材を輩出するとともに、世界のアカデミアに伍する研究・教育に力を注いできました。埋もれた達成を知ろうとするだけでなく、忘れられた失敗や過ちから学ぶことも必要でしょう。世界が各国内外の分断や格差にわずらい、市場も社会や環境への負担を考慮せずには発展しえず、科学の実践が研究倫理や正義と不可分になった時代だからこそ、大学の存在意義がグローバルにも問われています。東京大学はなにをどのように変え、なにを守っていくべきか。あるべき未来をともに考え、歩んでゆきたい。

東京大学が生みだす

人類はいま、気候変動や異常気象、感染症パンデミック、情報技術や人工知能の急激なる発達、地政学的な不安定さの増大、自然資本やコモンズの持続可能性など、地球規模で生命史の深さを有する多くの課題に直面しています。これらの課題解決には、既存の学問分野をこえた総合知の醸成、未知や不思議にねばり強くいどむ精神の養成、共存をめざすダイバーシティとインクルージョンの実現が不可欠です。2004年の国立大学法人化に際し、自らを律する「東京大学憲章」を制定し、国内にとどまらず「世界の公共に奉仕する」ことを強調したのは、その原点のひとつでもあります。自由で自律的な探究が生みだす多様な成果を、積極的に発信してゆきたい。

東京大学でつながる

東京大学の成員は、いま所属している教職員と学生だけではありません。活躍する卒業生はもちろん、さまざまな職業・所属組織・立場・領域・年代・地域から関わる人びとも、東京大学の諸活動に不可欠のパートナーです。UTokyo Compassでもかかげたように、私たちは東京大学を閉じた孤高の組織としてではなく、社会と世界の多様な知と人とが出会い「対話」する場にしたいと願っています。社会と、世界と、人間と、自然と、過去と、未来とつながるなかで、課題解決の新たな力を生みだす。そうした活動を継続的に支える自律的な基金(UTokyo NEXT150)の充実も、場をつくる重要な基盤となります。みなさんとの絆をさまざまに結びなおす機会として、記念事業に取り組んでゆきたい。