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やりたいことはあるのに資金がない若手研究者や職員に朗報です。東大基金がクラウドファンディングのプラットフォームに!!

この夏、東大基金のサイトが大幅リニューアルを果たしました。一番のポイントは、40を越える基金プロジェクトの全てにクラウドファンディング機能を搭載したこと。東大基金全体がクラウドファンディングのプラットフォームとなったのです。支援者としての活用はもちろんですが、実はこれは、何かやりたいことをあたためている教職員にとっては非常に使いがいがあるリニューアルです。サイトはどう変身したのか。そして東大におけるクラウドファンディングの姿とはどんなものなのか。ご確認ください。

プロジェクトを選んでClickすると...

支援の額や件数をリアルタイム表示

プロジェクトごとの寄付総額、寄付件数、継続寄付会員の数を公開。情報は随時更新されていくので、プロジェクト支援の進展度合いがほぼリアルタイムで把握できます。各ページに設置したボタンから状況を簡単にSNSで拡散することもできます。

支援の額や件数を表示したウェブサイト

※ウェブサイト画像はサンプルです

寄付の特典を金額ごとに段階表示

寄付金額に応じて設定する支援者向けの特典を表示します。寄付型プラットフォームなので商行為になる派手な見返りはNGですが、支援者への感謝の意を表す大事な項目です。

特典を表示したウェブサイト

※ウェブサイト画像はサンプルです

寄付者からの応援コメントを表示

支援者からのメッセージをプロジェクトごとに閲覧できます。リアルタイムで表示されるコメントは大きな励みになります。

応援コメントを表示したウェブサイト

※ウェブサイト画像はサンプルです

プロジェクトごとにページが設けられているのは従来の東大基金サイトと実は同じ。大きく違うのは、寄付額と寄付件数をリアルタイムで反映して表示するようになったことです(一般的なクラウドファンディングサイトと違い、支援期間は長く、目標金額の表示はありません)。SNSなどを使った呼びかけの効果がひと目でダイレクトにわかるのは、やはりクラウドファンディングの醍醐味です。そして、トップ画面では、支援が活発なプロジェクトほど先に表示されることになります(その順番の反映ももちろんリアルタイム)。支援の呼びかけ方や、活動報告ページで頻繁にプロジェクトの経過を発表することも、成功の大きな要因となるでしょう。

そもそもクラウドファンディングとは?

支援者から企画者への寄付をクラウドファンディングプラットフォームが集め、企画者から支援者へお礼の手紙や報告書などが送られるという図

クラウドファンディング(Crowd Funding)は、特定の組織や個人ではなく、不特定多数に向けて自分のやりたいことを宣言し、複数の賛同者から小口の支援金を集めて目標の資金を調達するという方法。支援者と企画者の間に商取引が発生する「購入型」と、支援が税制上の寄付になる「寄付型」に大別され、東大基金は後者に該当します。やりたいことを宣言して支援を募るプラットフォームとして多数のクラウドファンディングサイトが運営されており、寄付型として始まったJapanGiving、購入型として始まったReadyfor、学術企画に特化したacademist、地域密着型のFAAVOなどが人気を集めています。東大基金はこうした既存のサイトとの連携ではなく自らがプラットフォームとなる道を歩み始めました。

大学でもすでにいろいろな事例が!

「ロボコン」世界王者になるための資金を募ったら64人から計74万円が!

東京大学ロボコンサークルRoboTech 支援基金

RoboTech
2018年度部長
河村洋一郎さん

(工学部4年)

5月26日に開催の「NHK学生ロボコン2019」では、最速記録を出すも準決勝で破れ、世界大会に進めず。来年こそ世界一へ!

提示された課題の克服を自作ロボットで競う「ロボコン」。そのロボット製作には年に約600万円が必要です。工学部の支援金や企業様にいただく協賛金のほか、約80人の部員の部費で回していますが、部費捻出用のバイトのせいで活動時間を減らす部員も多く、世界一を目指すには心許ない状況でした。そんなときに東大出身の寄附者の方に教えられたのがacademistです。顧問の國吉康夫先生と相談し、目標を50万円として始めました。初の試みでしたが、40日間で64人の方から計741,200円の支援金が集まりました。世界大会では残念ながら優勝を逃したのですが、多くの人の応援を実感できる貴重な時間を味わえました。

ただ運用はハードでしたね。オリジナルTシャツ、イベント参加券、競技で使うシャトルコック型の特製グッズと、支援者へのリターンの準備が大変だったんです。初めてなのでがんばりすぎた面もありますが。気づいたのは支援者の多くがSNSに親しむ若い人だったこと。NHKが放映するロボコンはシニアの支持も高いんですが、そこには届かないように感じました。

そう感じた頃に東大基金がクラウドファンディング機能を導入すると聞き、参加を決めました。東大基金だと購入型でなく寄附型なので、リターンをがんばらなくていい。支援者が寄附金控除を受けられるのも重要です。東大が組織としてやっているという信頼感も大きい。もちろん、黙って支援が集まるとは思いません。ロボットを作る環境を努力して作るのもロボコンの一環だと捉えています。国策で巨額の資金を受けているような海外チームには負けたくないんです。次回2020年大会で2005年以来の世界一になれるよう、ご支援をお待ちしています。

クラウドファンディングを大学の研究・教育活動に役立てようとする動きは、近年日本各地で盛んになっています。

研究費獲得に特化した上述のacademistがスタートしたのは2014年。様々な研究機関の研究者が利用しており、東大の大学院生が活用した事例も見られます。そのプロジェクトページには、研究費用を集めたいという希望だけでなく、自分の研究分野を広報したいという思いが強かったことが記されていました。Readyforでは、大学ごとの特設ページを用意して支援を募るReadyfor Collegeを2017年に開始。これまでに筑波大学、東京藝術大学、名古屋大学、九州大学、大阪大学のページができており、各大学のページでは総長・学長が支援を促すメッセージを発信しています。また、上述のFAAVOと同じ会社が運営するCAMPFIREには、近畿大学と法政大学が特設ページを設けています。一方、自ら一般社団法人を立ち上げてクラウドファンディング・プラットフォーム「OTSUCLE」を運営しているのが、徳島大学です。県内の他大学や企業も巻き込んだ形で、自らの研究活動だけでない地域全体の活性化に取り組んでいます。もちろん、RoboTechのように、運動部やサークルなどの学生団体が個別にクラウドファンディングで資金を集めて成功した例は数知れず見受けられます。

成功にはやる気と努力が絶対に必要ですが、クラウドファンディングの可能性は巨大。次に東大基金で成功事例となるのは、これを読んでいる皆さんかもしれません。

クラウドファンディングの研究者に聞きました

“crowd-supported science”とは?

Kavli IPMU / 情報学環 教授
横山広美

学術のクラウドファンディング(以後、Academic crowdfunding, ACF)は科学技術社会論が注目をする「誰がどのように科学を決めるのか」、という点において従来科学と違うことから、興味深い研究対象です。従来科学は予算申請時に審査があり、それを通って予算を獲得、研究を実施、論文審査、発表という流れがあります。それに対してACFでは、審査はなく小口の寄付をネット上の不特定多数の方から受け取り、論文発表への圧力もありません。当然、アピールする内容も一般的に受ける内容になり、通常科学と異なることも予想されます。

我々はこうしたACFによって生まれる科学を“crowd-supported science”と名づけ(ikkatai, 2018)その特徴を予算獲得時にbudget communityによるピアレビューを受けないことと整理しました。しかしピアレビューがないことへの不安は社会側にあり、一定のレビューシステムが必要です。よく若手研究者によいのではと耳にしますが、若手はむしろきちんとレビューを受けられる従来予算で訓練をしたほうがよいとも考えられます。

ACFに研究者が参加する目的は、もちろん予算獲得です。政府予算、共同研究、寄付が第1、第2、第3のファンディングならば、ACFは第4のファンディングと言うことができるでしょう(一方井, 2018)。さらに、参加研究者には科学を広めたいからという広報的要素があることにも注目をしています。

アピールビデオや準備は研究者側にも負担が大きなものです。民間プラットフォームではこうしたサポートを充実させ、さらに支援額や目標金額に対しての到達率、残り日数などをウェブサイトに表示することで、立ち上がりを盛り上げ、SNSで広い層に波及させます。いずれも期限があるからできることであり、期限を設けない本学の場合、どのようにCF的な盛り上がりを作ることができるのかがポイントになるでしょう。

東大基金のファンドレイザーにも聞きました

SNSは成功の必須アイテムです

渉外活動支援課 エキスパート
齋藤 智

この10年でクラウドファンディングの認知度は向上しました。SNS等による支援の依頼に応じて実際に寄附をした経験をお持ちの方も増えています。国内最大規模のクラウドファンディング・プラットフォームをみると、規模や内容について様々なプロジェクトと募金活動が行われていることがわかります。一方、個別の目標金額に着目すれば、目標達成ばかりではなく未達のものも少なくありません。一体何が明暗を分けるのでしょうか。

この成功の秘訣を繙くために、クラウドファンディングの資金調達の仕組みを説明します。そもそもクラウドファンディングは、インターネット上で多数の人から資金を募る仕組みですが、その実際は、寄附額のうち3分の1は直接の知り合い、3分の1は知り合いの知り合い、残りの3分の1が口コミで広がった大衆支援者からと言われています。そのため、プロジェクト開始1週間で目標金額の3分の1を集められるかどうか、その準備ができるかが募金活動成功の鍵となります。そしてこの仕組みを支える背景にはFacebookやTwitterといったSNSの活用が欠かせません。まずはSNSのアカウントを開設し、フォロワー(=ファン)を増やし、知り合いに協力をお願いし、知り合いの知り合いにも拡散してもらう。このオーソドックスな手法がクラウドファンディングの王道です。ご興味のある方は、お気軽にご相談ください。

問い合わせ:東京大学基金事務局

03-5841-1217 kikin.adm@gs.mail.u-tokyo.ac.jp

(参考)東大基金プロジェクト別支援実績(オンライン寄附)

オンラインの申し込みをプロジェクト別に集計すると右表のようになりました(期間: 2018年4月1日〜2019年3月31日)。野球部、漕艇部、総務部と運動会のプロジェクトが3つ入り、根強い支持が窺えます。研究系では光量子コンピューターとIPMUに人気が集中。中央食堂、山上会館、図書館と由緒ある施設の改修事業も3つ登場。経済的な困難を抱える学生を支援する基金、教職員からの寄附を元に始まった留学生基金は、累計は多くないものの件数が特筆もの。今後はプロジェクト別の申込状況がリアルタイムで東大基金サイトに表示されます。

件数 累計金額
1 硬式野球部支援基金 446 5,301,000
2 光量子コンピューター研究支援基金 330 1,040,000
3 日本発アインシュタイン:数物連携宇宙研究機構(IPMU) 168 8,061,716
4 漕艇部支援基金 150 3,931,720
5 中央食堂リニューアル事業(東京大学創設140周年記念) 127 5,558,000
6 山上会館リノベーション事業(東京大学創設140周年記念) 119 5,825,000
7 修学支援事業基金 117 3,196,726
8 新図書館「アカデミック・コモンズ」計画 75 9,269,500
9 外国人留学生支援基金 66 113,000
10 総務部支援基金 65 140,000
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報告書を読まなくてもわかっちゃう!?TSCPに関するQ&A

東京大学サステイナブルキャンパスプロジェクト(TSCP)の新しい報告書がまとまりました。「やべー、知ってたけどまだ目を通してないや……」というあなたのために、その中から基本的な部分だけを抽出してQ&A形式でお届けします。

TSCPってそもそも何?

Todai Sustainable Campus Projectの略称です。2008年、キャンパスからサステイナブルな社会モデルを示すことを目的に始動しました。最優先課題として取り組んでいるのは低炭素化です。東大は都内でCO2排出量が最も多い事業所であり、研究活動を推進しながら低炭素化に貢献するのは社会的責任であるといえます。

どんな目標を立てて進めているの?

当初より長期目標として、CO2排出量を2030年度に先端的実験設備等を除いて2006年度比50%に削減する「TSCP2030」を立てています。これを達成するために、図1に示すように短期目標として2012年度に実験系を除いて15%削減する「TSCP2012」、中期目標として2017年度に先端的実験設備を除いて5%削減する「TSCP2017」を定め、達成しています。現在は、パリ協定達成も考慮して図2に示すように新しい中期目標「TSCP2023」に向けて活動しています。

図1 CO2排出量削減目標
図2 CO2排出量の推移と今後の目標

成果はどれくらいなの?

2006年度を基準に先端的実験設備を除いたCO2排出量の推移を図3に示します。2006年度を基準100としたところ、2017年度は面積換算で83.9、経常収益換算で71.2となっています。大学全体の延床面積は増え、アクティビティも上がっていますが、TSCPの取組や皆様のご理解ご協力により、その増え方に比べCO2排出量の増加を抑えることができています。

図3 TSCPの取り組みの成果

今までにどんな対策をやってきたの?

ハード面では、投資対効果の高い設備の更新をしてきました。ソフト面では、各部局との情報交換を行うとともに、他プロジェクトと連携して大学HPから全学の電力使用量を確認できる見える化を整備してきました(図4)。このほかにも、省CO2意識を高める啓発活動を行ってきました(図5)。

図4 全学の電力の見える化
図5 SHUT THE SASHステッカー

活動費用はどうしているの?

各部局から前年の光熱水料の4%をいただいて運営しています。

今後はどんな対策を進めるの?

今年度より照明のLED化を5年間の予定で重点的に進めます。また、「TSCP2030」の達成に向けてエネルギーを多く消費する実験系のより一層の対策を進めます。今後も大学運営や研究等で「必要なエネルギーは使うが、無駄なエネルギーは使わない」という考えのもと活動を進めていきます。

どんな人が活動を推進しているの?

施設企画課TSCPチームの職員4人が担当しています。また、2015年設立の学生委員会があり、環境問題への関心が高い15人程度の学部生・院生が、環境を考えるキャンパスツアー、エコプロへの出展等の活動を行っています(図6)。図7は本郷キャンパスのマップ上に各建物のCO2排出量密度(t-CO2/m2)を表した模型で、エコプロのイベントで発表しました。

図6 TSCP学生委員会
図7 CO2排出量密度の模型