第1111回淡青評論

七徳堂鬼瓦

大学にも及ぶフロン規制

2015年に地球温暖化の抑制を目的としたパリ協定が結ばれ、わが国も低炭素社会を目指して対策が進んでいる。2050年目標は温室効果ガスを2013年基準に対して80%削減することになっており、天地がひっくり返るほどの社会変革を求めている。地球温暖化の主たる原因は化石燃料起源の二酸化炭素の排出であるが、温暖化係数(GWP)が二酸化炭素の数千倍あるフッ素化合物のハイドロフルオロカーボン(HFC、代替フロンとも呼ばれる)も規制対象で、エアコンや冷凍空調機器用に広く使用されている。HFC類は成層圏オゾン層を保護することを目的としたウィーン条約モントリオール議定書の中で2016年に生産消費を段階的に削減することが決まり(キガリ改正と呼ばれる)、2036年までに基準年に対して85%の削減が課せられている。削減が容易なのでパリ協定よりかなり早い削減ペースが設定されていると思われるかもしれないが、決してそうではない。GWPの低いガスを開発し、使用中にガスが漏洩しないように適切な管理をし、冷凍空調機器を廃棄するときにはガスを回収して廃棄する社会システム作りが必要である。

大学に関係することでは、業務用途で使用する冷凍空調機器に使われているHFCガスの廃棄時回収を促すために改正フロン排出抑制法が2020年4月から施行される。改正後は機器を管理する者が回収を依頼しなかったり、回収処理した証拠書類を保管しなかったりすると、管理者(使用者)が罰せられることになり、直罰規定となっている。建物のエアコンはその対象機器になることは言うまでもないが、恒温槽や業務用冷凍冷蔵庫、温度を制御した装置などには冷凍機が入っており大小を問わず対象機器となる。それらを廃棄するときには、冷凍機からガスを回収処理しなければ、産業廃棄物回収業者に引き渡してはならないので、くれぐれもご注意いただきたい。当研究室では小さな恒温水槽を2個廃棄して、ガス回収に3万円くらいかかりました。このような義務が課せられることを承知おきください。

飛原英治
(新領域創成科学研究科)