第8回
三陸を舞台に、岩手県大槌町にある大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センターと、社会科学研究所とがタッグを組んで行う地域連携プロジェクト――海をベースに三陸各地の地域アイデンティティを再構築し、地域に希望を育む人材を育成するという文理融合型の取り組み――です。3年目を迎えたわれわれの活動や地域の取り組みなどを紹介します。
再始動、希望のトリコロール
准教授
東日本大震災で被災し、不通となっていたJR山田線・宮古-釜石駅間が三陸鉄道(三鉄)に移管され、昨年2019年3月23日、リアス線として8年ぶりに復活しました。しかし同10月13日、リアス線は台風19号の大きな被害を受け、運休を余儀なくされました。釜石市・鵜住居復興スタジアムで開催予定であったラグビーワールドカップ2019™日本大会・カナダ対ナミビア戦が中止になるなどの台風の影響の詳細については、第5回でお伝えした通りです。
復旧工事は急ピッチで進められ、今年2020年3月20日、最後の不通区間であった陸中山田-釜石駅間(28.9キロ)での運行が再開しました。第3セクターの路線としては全国最長の163キロが、再びつながり全線開通となったのです。再開当日は、晴れていたものの県沿岸部全域に暴風警報が発令され、始発から運転の見合わせや遅れが相次ぐ事態となりました。
大槌町では史上1位の最大瞬間風速42.1メートルを観測するほどでした。また、新型コロナウイルスの感染防止の措置で、釜石市で予定されていた記念式典は中止となりました。しかし、「再開そろそろだね」と全線開通を心待ちにしていた多くの住民の方々の思いがお天道様に通じたのか、区間を大幅に短縮という形にはなりましたが、全線運行再開の記念列車は走ることができました。
翌々日の22日には早速、東京オリンピックの聖火を「復興の火」として宮古から釜石まで三鉄で巡回するイベントが行われました。今後は、青、赤、白の列車の音が、毎日、センターのある大槌にも響くことになります。ただ、新型ウイルス感染拡大の影響で今年度は大型のイベントが開催されないため、もともと予約の少なかった団体旅行にキャンセルが出ているそうです。逆風の中での再出発ですが、三鉄は幾度となく津波・台風といった困難を乗り越えてきました。三鉄トリコロールはいわば沿岸被災地の象徴。青は「三陸の海」、赤は「鉄道への情熱」、白は「誠実」を表しています。今後も走り続けることで、地域の方々に日常生活の足だけでなく、希望も与え続けてくれると思います。延期となっている「海と希望の学校 in 三陸」主催のイベント「海と希望の学校 on 三鉄」も来年にはぜひ開催し(2021年2月予定)、三鉄と沿岸地域を盛り上げていきたいと思っております。