第1127回淡青評論

七徳堂鬼瓦

男女共同参画について

あまり意識する余裕もなく時間に追われて年月を過ごしてきましたが、最近、学生さん達からも家事や育児と仕事の両立について意見を求められることも増え、改めて自分のこれまでを顧みるようになっています。COVID-19の流行によって緊急事態宣言が発令されたり、オンライン化が進んだり、今まで自然と流れていた日常が大きく変わったことも影響しているのかもしれません。

男女共同参画が進んでいる欧米でも、COVID-19の流行によるロックダウンや外出規制によって在宅勤務が中心となり、育児を始めとする家庭における女性にかかる負担の方が大きいようです。アカデミアでも女性研究者が思うように研究を進められず、一部ではポジションを失いかねないという危機的な状況に直面しているそうです(https://www.nytimes.com/2020/09/29/business/economy/pandemic-women-tenure.html)。

先日、あるオンラインの国際学会に参加した際、印象的なシーンがありました。若手の女性研究者がニューヨークにおける逼迫したコロナの状況を説明し始めた時、“Mommy!”と小さな女の子の声がしました。父親らしき人が一生懸命なだめている声も聞こえていましたが、女の子の声は次第に大きくなり、“Mommy! Mommy! Mommy!”と絶叫に変わりました。努めて平静に発表を続けていたこの研究者も慌てて“Excuse me.”と言って音声とビデオをオフにし、2分程度して戻った後、スムーズに発表を終えました。

我が身を振り返ってみれば、小さな足で地団駄を踏みながらこちらを見上げる4人の子供達を前に、夫に「あとはお願い」とも言えず、ここぞという時でも、躊躇してばかりでした。大人の考える共同参画を必ずしも子供が受け入れるわけではない、と言えば少々大袈裟ですが、日々、調整と協調の連続であり、画一的にはいかないし、どんな局面でも、柔軟に対応していくしかない、と感じています。また、それは男女共同参画に限らず、何事にも当てはまることだと思います。

脇嘉代
(医学系研究科)