第1147回淡青評論

七徳堂鬼瓦

Professional means

先日、10年程前に所属していた研究グループの同窓会に参加した。当時の研究を続け大きく発展させている人、全く異なる研究テーマを始めた人など、良い意味で10年の時の流れを感じた会であった。その中に、自らの専門分野を生化学からバイオインフォマティクスに転換し、キャリアアップを果たしたメンバーA氏がいた。自身の研究を進める傍らで、自ら学びなおしたそうだ。甚く感心してその経緯を聞いたところ、予想外の答えが返ってきた。前勤務先で専任技術職員が複数名常駐する研究支援部門に出入りしているうちに、バイオインフォマティクス担当者と親しくなって、手解きを受けたという。師事は数年間にわたり、近年は自らがインフォマティシャンとなったA氏と部門とで、データ解析ツールの共同開発などにも至っているそうだ。

A氏曰く、仮に先方が研究所専任の常勤職員でなく、研究室単位で雇用された任期付き技術職員であれば、難しかっただろうとのこと。職員の任期の問題もあるし、自身が雇用されている研究室の業務に多忙な中で、ボスの指示でもないのに、他所の研究室の一介の研究員に自らの技術を支援のレベルを超えて惜しみなく提供してくれるということは、まず起こり得ないのではないか。もちろんA氏の類稀な性格と才能あってこそのエピソードだが、大学のように人材の流動性が高い学術研究機関において、高い専門性を有する技術職員が主体的・安定的に働ける環境整備の重要性とその潜在的な波及効果を再認識した次第である。

ここで、今こそすべての本学構成員に問う。

「高い専門性(Professional/Professionalism)」とは何か?

Professional

・relating to work that needs special training or education.

・having the qualities that you connect with trained and skilled people.

(Cambridge 英語辞書より)

私がかつて在籍していたアメリカの某州立大学には、実験機器の修理やカスタマイズを一手に引き受けるベテラン専任技術職員(エンジニア)がいて、彼の作業部屋の壁にはこう書かれていた。時々思い出しては、自身がいくつ実践できているかを自問自答している。

Professional means:

P: proud

R: reliable/respect

O: orderly

F: fair

E: efficient

S: safe

S: supportive

I: informing

O: organized

N: negotiable

A: ambitious

L: loyal

岡田由紀
(定量生命科学研究所)