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気候と社会連携研究機構発足記念シンポジウム録 気候と社会の共進化とは?

CO2の正味排出をゼロにするカーボンニュートラルが国際的な潮流となるなかで今年7月に設立された気候と社会連携研究機構が、10月7日に伊藤国際学術研究センターでキックオフ・シンポジウムを開催しました。「地球環境危機の克服に向けて――東京大学からの知の発信」と題した第1部、「気候と生態系と社会研究の最前線」と題した第2部において行われた講演とパネルディスカッションの模様を、誌面の許す限り紹介します。変わりゆく気候のもとで持続可能な社会を実現するための連携研究とはどのようなものなのでしょうか。

シンポジウムの録画映像がYouTubeで閲覧できます
気候と社会連携研究機構長
沖 大幹 工学系研究科教授

10部局が参画する機構では、IPCCの部会構成に対応する3研究部門(地球システム変動、生態システム影響、人間システム応答)が、地球システム変動の自然科学的な理解、気候変動の生態系・人間社会システムへの影響評価、気候変動に対する社会の対応と公共政策に関する研究を展開しています。

気候と社会連携研究気候のモデル図

地球温暖化は人間活動の影響

国際地球観測年の1957年、米国の大気海洋庁が南極とハワイ付近でCO2濃度の精密観測を始めました。観測を重ねると、その濃度は年々上昇していました。データをもとに、60年代、大気の鉛直方向の温度分布を計算機でシミュレーションする研究を進め、CO2濃度が倍になれば気温は2.36度ほど上がると予測したのが眞鍋淑郎先生です。ノーベル賞につながる論文は67年。以後も温暖化を示す論文が続きました。72年にはローマクラブ※1が報告書「成長の限界」を出し、IPCC※2の第1次報告書が90年。この頃はまだ人間活動の影響が明確ではなく、気温上昇が人間活動の影響であるかどうかは不確実でした。しかし現在は、観測されている温暖化を説明できるのは人間活動の影響を考慮した場合のみであることが明らかです。そして2022年、当機構が発足しました。

現在の気候変動研究では、まず経済成長や人口や技術革新の影響などを統合評価モデルに入れ、温室効果ガスの排出量、寒冷化の作用があるエアロゾルの量、土地利用や森林火災の状況などを算出します。それらを気候モデルの境界条件として与えて、気温や海水面がどれほど上昇するか、降水量はどう変化するかなどを計算します。それを今度は影響評価モデルに与え、風水害や水供給や食料生産がどう変化するかを推計します。しかし、各々の研究グループの連携がこれまでは活発とは言えませんでした。気候は日常生活、企業活動、国際政治にも影響を大きく及ぼすため、自然科学から人文社会科学まで広い分野の結集が必要です。健康、食料、エネルギー、水、生態系への悪影響を抑えながら、温室効果ガスの排出削減をどう実現するのか、実現したらどんな副作用が出るのか。そこまできちんと考えるにはバラバラだった縦割りの知をつなげる必要があります。気候変動対策で格差を広げたり特定の人に不都合を押し付けたりしてはなりません。もろもろに留意しつつ、温室効果ガス削減の技術の開発と実装を進める。それが「気候と社会」を冠した機構の使命です。

※1 環境問題に取り組む民間シンクタンク ※2 気候変動に関する政府間パネル

気候と社会を担う人材育成を

教育の面では、当機構を軸に気候と社会を扱う講義を始めたところです。ただ、米国では、スタンフォード大学にこの9月にDoerr School of Sustainabilityができました。1948年以来の新学部には大口寄付者の名がつけられています。コロンビア大学でも25年ぶりの新学部としてClimate Schoolができました。米国の大学は、被害軽減のために何をすべきか、そのためにどんな投資が必要かをわかる人材を育成し始めていますが、日本の大学はまだこれから。当機構はその部分も担いたいと思います。

気候変動問題の存在は以前からわかっていたのになぜ未解決なのかを明らかにしないといけません。「気候正義」への道筋を描き、東大自身のGX※3にも貢献しながら、気候研究の国際学術を先導したいと思います。

※3 グリーン・トランスフォーメーション

◉講演ダイジェスト

第1部と第2部に登壇した8名の研究者による講演の大意を紹介します。

地球システム
変動研究部門長
羽角博康
大気海洋研究所

地球システム」とはあまり聞きなれないかもしれません。地面から大気の上の方までの表層圏を扱いますが、「気候システム」とは違い、生態系や生物の動きをも含む概念です。気候変動予測のやり方は2つあります。一つは大気中のCO2濃度を入力条件として与え、気候システムの範囲で行うもの。もう一つは、地球システムの応答、植生や海洋がCO2を吸収することまで含めて考えるやり方です。すべての要素を考える意味では後者がよいですが、計算対象を広げれば不確実性が大きくなるため、目的に応じた手法の選択が必要で、私たちも両者を両立させながら予測を行っています。ツールは地球システムモデルを用いたコンピュータシミュレーション。その開発と応用が当部門の主な仕事です。

生態システム
影響研究部門長
芳村 圭
生産技術研究所

当部門の対象は人間を含む生態系への影響です。気候変動で生じるリスクの全てをなくすことは難しいですが、対策を講じることができれば、減らすことができるし、危機には至らないはずです。生態システムの研究には、現象解明から社会影響評価まで幅広い分野があります。それらは相互作用を持ちます。たとえば私の専門の水文学で扱う旱魃は、健康にも食料生産にも生物多様性にも関わる。そうした相互作用を考慮したより包括的な影響評価手法が必要です。当部門が担うのは、これまで細い線のつながりだったものをまとめて帯にすること。生態システムに関する様々なセクターを集結させ、各々の影響評価手法を理解した上で「気候変動に強い開発」へ向かう道筋を示したいと思います。

人間システム
応答研究部門長
瀬川浩司
総合文化研究科

地球環境とエネルギー、パートナーシップと資源外交・エネルギー安全保障、持続可能な開発と脱成長はそれぞれどういう関係にあるのか。脱成長しかないという考えもありますが、経済的なダメージが大きいと弱者に皺寄せがいき、地域格差も増大する。脱成長は成熟した社会側の驕りかもしれない。概念にとどまるなら誰でもいいことが言えますが、こうした問題提起と情報公開をしながら科学的に定量的に議論を進めるのが当部門の任務です。気候正義、社会システム、政策研究、市民対話、経済性の問題など、あらゆる分野の叡智を結集し、これまで難しかった気候科学と人文科学の対話を促しながら、エネルギー総合学連携研究機構とも連携して、理解から実践へつなげようと考えています。

地球システム
変動研究部門
吉森正和
大気海洋研究所

私は長期気候変動を研究しています。北極域は地球平均の2~4倍の速度で温暖化し、近年は北極の緑化も見られます。現在と同じ植生分布を仮定してシミュレーションを行った場合と、植生分布も計算した場合とを比べた研究では、植生の計算なしでは12.7万年前の気候をうまく再現するのが困難でした。人間の排出したCO2が大気中にとどまる量などを長期予測した研究からは、300年後に排出量をゼロにしても、排出したCO2の一部は大気中に千年以上とどまり、上昇した気温も海面上昇も続くとわかります。長いスケールで考える必要があります。古気候学は人類にとって未曾有の変化の不確実性を過去から制約し、想定外の事態も学べるかもしれない。それを将来につなげることが重要です。

生態システム
影響研究部門
岩田容子
大気海洋研究所

私はイカを研究しています。多くのイカは寿命が一年未満で世代交代が早く、環境変化への応答も早いという特徴があります。対馬でケンサキイカの生物史特性の環境応答を調べたところ、サイズと水温の関係では、メスでは冬に生まれた個体のほうが大きくなっていました。これは一般的な温度・サイズ則の通りですが、オスは反対に寒い時期に生まれたほうが小さかったんです。単純な原則よりも、成熟メスが近くにいるかいないかという社会的状況に影響されていることがわかりました。海洋環境応答では、種内の個体間相互作用によって単純な予測とは異なる結果が生じているようです。生態や進化のメカニズムを理解することは、気候変動への生物の応答を予測する上で極めて重要です。

人間システム
応答研究部門
額定其労エルデンチロ
東洋文化研究所

気候変動の利益と負担、気候変動に対処する責任の公正な分配と共有を目指すのが「気候正義」で、「環境正義」よりグローバルな性格が強いでしょう。北半球と南半球という地域間の問題、大人たちと子供たちという世代間の問題などを見ると、気候正義の不平等は構造の問題かもしれません。CO2排出で人権が侵害されたと政府や企業を訴える気候訴訟が2000年頃から増えています。一番多いのは米国ですが、世界では2000件以上、日本でも4件の気候訴訟が起きています。訴訟費用をどう調達するかなど訴訟の社会的側面が気になりますが、気候正義の研究はまだ少ないのが現状。気候変動は動物にも影響を及ぼします。気候正義が動物にも適用されるのかという問題も考えたいと思います。

京都大学
工学研究科
藤森真一郎

生活レベルで見れば、脱炭素の基本戦略は省エネと電化です。単純にコストが低いからです。電化が難しいところにはコストが高い水素や合成燃料を使います。バイオマスは比較的安いエネルギー源で、かつ脱炭素では特殊な役割を持ちます。それは、バイオマス燃焼で出るCO2を地中に埋めて「負の排出」を進めるというもので、大部分のIPCCのシナリオで使われています。1.5℃や2℃への気候安定化には現在の耕作地の約3割をエネルギー用に転換する必要があるという計算もあります。すると食糧価格が上昇し飢餓リスクが増えます。下手なCO2削減策は社会にも生態系にもNGです。温暖化対策の設計は、エネルギーの面だけでなく社会や生態系の隅々まで見渡して考えないといけません。

新領域創成科学
研究科付属サス
テイナブル社会
デザインセンター
亀山康子

私の専門は国際関係論です。気候変動に関する国際連合枠組条約ができて問題解決に向かうかと思ったら、そうではありませんでした。国際条約には、批准しない国がある、国権が及ぶ範囲外で問題が起きる、サプライチェーンという3つの限界があります。国家同士の約束である国際条約は無論重要ですが、すぐには問題解決に結びつきません。そこで注目されるのが企業です。企業の活動を情報開示してもらうことで、条約参加国であるか否かを問わず、世界全体でモニタリングできる仕組みにする試みが進みます。これが機能するには、市民が情報を見て評価する視線が必要。社会をどうするかがテーマです。今後の社会を担う学生の皆さんに、国際関係論の分野に入ってきてほしいのです。

◉パネルディスカッション・ダイジェスト

第1部(モデレーター:沖大幹)と第2部(同:渡部雅浩)で展開された一問一答を紹介します。

 機構の3部門構成はIPCCと同じじゃないかと言われるかもしれません。どう思いますか?

羽角 出発点としては悪くないと思います。従来なかった研究者間のつながりを作るのが重要なミッション。絵に描いた餅を空想するより、まずは今ある枠組みに乗って、その中から新しい形を目指せばいいと思います。

芳村 IPCCでは世界の研究者を集めて問題に取り組んでいますが、同様のことが東大ではインハウスでできます。IPCCのやり方の問題点があるとすれば、それは大きくなりすぎていること。レポートを出すにも10年単位で、現在進行中の「気候変動に強い開発」を進めるには少し遅い部分もある。それが東大ならスピード感を持ってできるはずです。

瀬川 入口としてはわかりやすさが大事だと思います。IPCCとして取り組めていないのは、どういう解決策を出すのかという部分。この機構では学外の政策担当者なども交えて具体的に考えられるのが強みです。枠組みはIPCCのものに似ていますが、そこから大きくはみ出す部分があると思います。

 連携研究は「言うは易く行うは難し」。どのように求心力を維持すればいい?

羽角 ある程度強制力を打ち出すのがいいかもしれません。たとえば、A先生とB先生というふうに機構側が組み合わせを決めてつなぐとか、具体的にお題を決めるとか……。

芳村 東大が教育機関であることに意味があります。学生への講義や教科書を考えることで学際的なつながりができ、そこから研究者も学ぶことができるのではないかと思います。

瀬川 自分の経験からすると、学外との連携においては、東大がプラットフォームを提供してそこで自由に面白いことを考えていただくというスタンスがよいと思います。

 気候変動の研究では何が確実で何が不確実なんでしょうか?

羽角 たとえば気温や風など物理的な側面に限ると、かなりの部分が方程式として成り立っていて、そうでない部分が不確実なところ。気候変動の問題では、雲と放射の関係が不確実性の最大要因とされます。雲粒と光の一つ一つが作用してどう全体が決まるのかが非常に複雑で、そこは不確実な部分です。

 気候変動の研究は社会にどう還元する?

芳村 従来は、市民とのクッションとなる自治体との連携を深めることがあまりされていなかったと思います。たとえば洪水予測は自治体に使ってもらうことが重要で、そこには法の問題もからみます。法律の言葉に落とし込むことが影響評価研究の出口として大事だと思います。そこは迅速にやりたいです。

 温暖化対策として個人が省エネ以外にできることは何ですか?

瀬川 東京から離れることです。再エネは基本的に分散エネルギー。太陽光発電は十分な広さがある地方で進めたほうが全体では導入が進むでしょう。地方に人が分散しながら農業や林業と組み合わせたライフスタイルを作ることが温暖化防止に貢献すると思います。

渡部 気候変動の原因が温室効果ガスというのは本当なんでしょうか?

吉森 温室効果ガスが赤外線を吸収してエネルギーが地球にトラップされて温暖化するというのは、原理としてはっきりしていることです。温室効果ガスが近年の温暖化の原因だという説の確度は非常に高いと言えます。

渡部 長い目で見れば地球は寒冷化に向かっているという主張もまだ見かけますよね。

吉森 現在は間氷期に相当しますが、今のCO2濃度では今後5万年間は氷期に移行しないというのが専門家の知見です。当分の間は地球が寒冷化することはないと考えられます。

渡部 漁業と沿岸海洋環境の変化に関しての最新動向としてはどんなものがありますか?

岩田 漁獲状況をモニタリングし、現状にあわせてフレキシブルに管理方法を変えている漁協が出てきています。たくさん魚を獲ってたくさん売るのではなく、下処理をして付加価値をつけた魚を直接レストランに売るというような取り組みも見られます。

渡部 2050年カーボンニュートラルのシナリオで経済成長はどの程度維持できますか?

藤森 よく使われている想定は、世界全体のGDPが2050年に2~3倍になるというものです。カーボンニュートラル策を進めるとどれくらい下がるかというと、複数の機関のシミュレーションを平均すれば、2050年時点で3~5%でしょう。基本的に経済成長は担保されていて、少し損失が出る程度。温暖化を抑制することにその損失に見合う価値があるのかを皆さんに判断してほしいと思います。

渡部 たとえば気候正義と温暖化シミュレーションの話は研究として距離があると思います。文理の融合はどうすれば進むでしょう?

額定其労 文系の人も理系の論文を読まないと、そして理系の人も文系の論文を読まないと、深い話はできないし、一緒に何をやろうかという話は進まないでしょう。研究会を開いて互いに互いを勉強する場を持ち続けるしかないのかなと思います。

渡部 コロナ禍による行動変容は気候変動にどう影響しますか?

亀山 CO2排出量は確かに減りましたが翌年は元に戻りました。それが観測事実です。オンライン会議が増えたというようなコロナ禍での行動変容が、温暖化対策としてプラスの影響を及ぼすか否かの研究もされています。おもしろい研究テーマになるとは思います。

藤森 少し行動が変わった程度では排出は大きく変わらないので過剰な期待はしないほうがいいです。でも、もし発電が全部再生エネルギーに変わったら、一気に解決に近づくはず。エネルギーの供給のところでしっかり落とせるようにしないといけません。そのためには、訴訟を起こすとか、CO2削減策を提案した政党を強く支持するとか、市民から圧力をかけることも一つの手段だと思います。

開会の挨拶
藤井輝夫
総長
第2部
モデレーター
渡部雅浩
大気海洋研究所
閉会の挨拶
大久保達也
理事・副学長
東大の研究・
国際戦略
相原博昭
理事・副学長
司会
杉山昌広
未来ビジョン
研究センター
気候と社会連
携研究機構の
ロゴマーク

開会挨拶で登壇した藤井総長は、ストックホルム会議から50年を経ても問題が解決に向かっていないこと、若い世代の考えを上の世代がどう受け取るかが重要であることに言及しました。相原理事は、地球規模の問題解決に取り組むこと自体が東大の研究・国際戦略であると述べ、WPIを例に挙げて機構への強い期待を語りました。閉会挨拶で登壇したGX推進担当の大久保理事は、東大だけがネットゼロの目標を達成することより、社会とともに歩いていくのが大事だと述べました。

文部科学省による世界トップレベル研究拠点プログラム

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東京大学ニューヨークオフィス「UTokyoWeeks」でGXシンポジウムを開催

先端科学技術研究センターの杉山正和所長
東洋文化研究所の佐藤仁副所長
工学系研究科の熊田亜希子先生

UTokyoNYでイベントを開催

10月、UTokyoWeeksと銘打って、東京大学ニューヨークオフィス(UTokyoNY)と社会連携本部主催のイベントを皮切りに、2週間で三つのイベントがニューヨーク市内で開催されました。まず最初は、社会連携本部主催の「GX’s current location at UTokyo」と題したシンポジウムです。

対面とオンラインのハイブリッドで行われたこのイベントでは、津田敦副学長の開会挨拶のあと、先端科学技術研究センターの杉山正和所長と東洋文化研究所の佐藤仁副所長が講演を行いました。エネルギーシステム分野を研究する杉山先生は、東大のグリーン・トランスフォーメーション(GX)に向けた取り組みとして、グローバル・コモンズ・センターが2020年から毎年公表しているグローバル・コモンズ・スチュワードシップ(GCS)指標や、2050年に温室効果ガス排出量実質ゼロ(ネットゼロ)を目指す国連のRace to Zeroキャンペーンへの参加などを紹介。また、2050年に日本でネットゼロを実現することは可能だと話し、そのシナリオとして、太陽光や風力といった再生可能エネルギー導入の一層の拡大と、次世代エネルギーとしてCO2を排出せずに製造する水素の利用や、カーボン・リサイクル技術の研究などについて説明しました。これらの対策や技術を用いることが、ネットゼロを実現するための基盤になると述べました。

続いて登壇した、資源や開発援助などを研究する佐藤先生は、環境正義の観点からの気候変動問題について講演しました。世界の様々な地域で鉱山開発、エネルギー、土地そして水資源などを巡る争いが住民と政府や民間企業の間で起こっていることを説明。また、ラオスの山岳地帯で佐藤先生が行ったフィールドワークを紹介し、環境政策で森林が管理されることによって、それまで自由に森に入り燃料となる木などを集めることができた住民が森の資源を使えなくなってしまっていると指摘。気候変動対策を実施するときは、地球環境だけでなく、そういった地元住民への影響も考えていかなくてはいけないと述べました。

東京からのオンライン参加も

講演に続き、津田副学長がモデレーターを務めて行われたパネルディスカッションでは、日本からオンラインで工学系研究科の熊田亜希子教授も加わり、3人の先生がネットゼロを実現するためのコストの問題、それに対する社会的コンセンサスを得ることの重要性や教育の役割などについて意見を交わしました。また、このような全く分野の違う研究者が集まるシンポジウムを今後も続けてほしい、という大学に対する期待も語られました。

10月13日には生産技術研究所(生研)主催のシンポジウムがコーネル・テックで開催され、同研究所の岡部徹所長、野城智也教授が挨拶を行い、豊田啓介特任教授と三宅陽一郎特任教授が基調講演を行いました。また、10月19日には同会場でニューロインテリジェンス国際研究機構(IRCN)主催のシンポジウムが開催され、ヘンシュ貴雄機構長、主任研究者の後藤由季子教授(薬学系研究科)、大木研一教授(医学系研究科)、そして米国ノースイースタン大学のLaurel Gabard-Durnam准教授が講演を行いました。

三つのシンポジウム開催を通じて、UTokyoNYの認知度を高めることができ、有意義なイベントとなりました。

10月19日に開催されたIRCN主催のシンポジウム「How does Human Intelligence arise?」では、「脳科学×AI」という切り口で、ヒトの知性の研究について日米の研究者が意見を交わしました。
生研主催の「2022 COMMON GROUND Symposium in NYC」では、4名の米国の専門家・研究者を招き、実空間とデジタル空間の融合による様々な可能性について活発な議論が交わされました。