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学生有志がGX推進イベントを駒場で開催 UTokyo Sustainability Week 2023

6月5日~9日、UTokyo Sustainability Week 2023が駒場で開催されました。学生団体のUTokyo Sustainable Network(UTSN)が主催し、未来社会協創推進本部のGX推進分科会と3つの連携研究機構が共催を、そして東大生協が後援を務めたGX推進イベント。学生と教職員と大学生協が三位一体となって創り上げた5日間を振り返ります。

気候と社会連携研究機構(UTCCS)、エネルギー総合学連携研究機構(CROCES)、未来戦略LCA連携研究機構(UTLCA)

テーマはFood & Drink

5日間の通しテーマとして設定されたのは、Food & Drink。身近なところからサステナビリティを考えられるようにという思いで選ばれたもので、全学生が前期課程を過ごす駒場を舞台に、食にまつわる様々な企画が行われました。

まずはウォーターサーバースタンプラリーです。UTSNの提案を発端にキャンパス各所に設置された給水機の周知と利用を促すため、5月29日から17カ所にスタンプを用意し、台紙に5つ集めれば駒場生協食堂であおさの味噌汁を無料でゲットできるというものでした。

このあおさは、2022年3月に本学が包括連携協定を結んだ福島県の産。昨年11月に福島産直フェアを実施した東大生協の中島達弥専務理事は、「農学生命科学研究科国際水産開発学研究室に分析してもらったところ、あおさのCO2排出量が今回LCAを計算した食材の中で最も少なかった」と語っています。生協食堂ではほかにも、ラーメン、ねぎとろ丼、鶏天といったあおさ活用メニューを5月29日~6月2日に特別提供。6月5日~9日には畜産に比べてCO2排出が少ない魚や大豆ミート(NEXTミート)を使った料理を提供し、特にNEXTキムチカルビ丼はヴィーガンでない人にも好評だったそうです。

Life Cycle Assessment

生協の購買部・書籍部も連動

書籍部にはUTSNメンバーが推薦したサステナビリティ関連書の棚が設けられ、購買部にはサーモボトル、マイバッグ、エコ文具などが並ぶ棚が登場しました。給水機の場所を図示したサーモボトルはUTSNがデザインしたもの。ヴィーガンメニューを購入した人に抽選券が配布され、ボトルが当たる抽選会が最終日に実施されました。大学生活でのGXを考えるのに生協の協力は不可欠なものでした。

そして、サステナビリティに関わる教員と学生総勢50名がKOMCEEのホールで連日プレゼンターを務めた大型企画が、UTokyo Sustainability Talksです。各回のテーマは順に「Local Action」「Global Perspective」「Reimagining Sustainability」「Power of Individuals」「UTokyo GX」。共催の3つの連携研究機構(UTCCS、CROCES、UTLCA)に参画する研究者を中心とする約30名が、各々10分間という短時間で自身の専門分野の視点からサステナビリティについて語り、質問に応じ、参加者同士の懇親会も行うものでした(3日目は未来の大学の姿を考える学生ワークショップ)。「10分の講演は聞きやすい」「分野の違う先生と交流できてうれしい」「2時間で10人もの話を聞けるのが貴重」といった声が寄せられていました。

駒場の畑でニンニクを収穫

4日目には駒畑ハーベスト&種まきフェスタも行われました。北門近くの駒畑は、UTSNが主体となって古い温室をコミュニティガーデンとして再生させる試みの本拠地で、留学生と日本人学生が農作業をともに行いながら活動しています。この日は、学生たちが育ててきたニンニク&タマネギをそれぞれ段ボール箱いっぱいに収穫。若干小ぶりのため生協食堂で使われることにはならなかったものの、希望する参加者に配布されました。

最終日、全企画の最後に登壇したのはUTSNの別木苑果さん(教養学部4年)。5日間を振り返り、「今回は駒場でしたが、この動きを他キャンパス、他大にも広げたい」と語りました。準備を進めるなかで「教職員や生協の皆さんのなかにも熱い方々がたくさんいるとわかったのが大きな実りでした」と続け、全学を巻き込んだ初の試みをしっかりと締めくくりました。学生有志ががんばって蒔いた共創の種。水を絶やすわけにはいきません。

ウォーターサーバースタンプラリー

「給水スタンド」と書かれたウォーターサーバー
給水スタンドにはウィーク周知のポスターが。
ウォーターサーバーの設置場所を記したマップ
UTSNメンバー作成による駒場給水地マップ。
あおさの味噌汁とスタンプラリーのスタンプ用紙
昨年の福島産直フェア時に51円で提供されたあおさの味噌汁がスタンプラリーの景品に。

期間限定メニュー(生協食堂)

ご飯の上にキムチ・大豆ミート・ネギが乗っている丼
大豆ミートを使用したNEXTキムチカルビ丼(550円)。
「UTokyo Sustainability Week 2023」と書かれたメニューのスタンド看板
生協食堂には千葉県銚子漁協とのコラボメニューも登場。100gあたりのCO2排出量見える化の試みも。

生協書籍部で関連ブックフェアも!

「UTokyo Sustainability Week 2023 関連推薦書コーナー」と書かれた貼り紙とブックワゴンに並んだ書籍
駒場と本郷の両書籍部にUTSNメンバーのコメントのついた推薦図書棚が登場。

UTokyo Sustainability Talks

教卓に立つ亀山康子先生と座席に座って手を挙げる参加者。奥のスクリーンに映像が映っている
2日目に行われた亀山康子先生の回の様子。
コーヒーカップを手に持つハンリアさんと書類を手に持つ渡部雅浩先生が話す様子
UTSNのハンリアさんと渡部雅浩先生。懇親会では東大生協によるコーヒーと軽食の提供も。
様々な形のテーブルを囲んで参加者が話し合う様子。奥のスクリーンに映像が映っている
3日目に行われたワークショップ。2050年のキャンパスの姿が淡青色の模造紙に描き込まれました。
マイクを握って話す登壇者の10人

駒畑ハーベスト&種まきフェスタ

収穫したニンニクを青いバケツに入れる2人と後ろに立っている1人
駒場の畑だからKomabatake。北門近くの温室周辺で有機農法の野菜作りが行われています。
畑で収穫する5人と、「駒場産」と書かれた段ボールに入っている玉ねぎ

オリジナルデザインボトルの抽選会も!

白い「UTokyo Green Tansformation」の文字やイラストが描かれた黒い水筒
※ボトルは生協で販売中(3300円)

駒場図書館での展示も!

「UTOKYO SUSTAINABILITY WEEK 2023」と書かれた立て看板とガラスケース内に展示されている書類

UTokyo Sustainability Talks 登壇者一覧

Day 1/五十嵐圭日子(農)、AKINDELE Tito(GlobE)、左右田智美(生研)、PULIDO Jesus(GlobE)、横張真(工)、吉田丈人(農)、香坂玲(農)、MORENO-PEÑARANDA Raquel(GlobE)、小松崎俊作(工)

Day 2/渡部雅浩(大海研)、石原広恵(新領域)、亀山康子(新領域)、DROZ Laÿna(新領域)、菊池康紀(未来ビ)、TAVARES VASQUES Diego(理)、GIRAUDOU Isabelle(総文)、佐藤みどり(総文)、岩田忠久(農)

Day 4/平尾雅彦(先端研)、杉山正和(先端研)、木見田康治(工)、GRANDI-NAGASHIRO Cecilia(新領域)、栗栖聖(工)、橋本禅(農)、竹内渉(生研)、GASPARATOS Alexandros(未来ビ)、BERMAN Naomi(GlobE)

Day 5/藤井輝夫(総長)、大久保達也(理事・副学長)、中島達弥(東大生協)、HAN Leah(総文)、山口大輝(工) & PATKI Mahi(教養)、AGRAWAL Vedant(教養)、SOUNDARARAJAN Swetha(教養)、DREWS Charlotte(教養)、板谷舞華(教育)、中谷優太(工)、秋山知也(文)、山口空(農)、別木苑果(教養)、杉山昌広(未来ビ)

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鉱物資源の過去・現在・未来をつなぐミュージアム “ミネラフロント„開館

5月13日、本郷キャンパスの工学部3号館4階に鉱物資源フロンティアミュージアム“ミネラフロント”が開館しました。工学系研究科と千葉工業大学が共同で開設したこの博物館。SITE1とSITE2の2部屋に分かれた展示室には、日本刀のような美しい結晶から鉄隕石まで、鉱山、深海、そして宇宙からもたらされた貴重な鉱石鉱物標本400点以上が展示されています。企画、運営を担当している工学系研究科の大田隼一郎先生に話を聞きました。

大田隼一郎
大田隼一郎 工学系研究科附属エネルギー・
資源フロンティアセンター 講師

海と宇宙がこれからの資源フロンティアになる

――展示室を開館した背景は?

地質活動が活発な日本にはかつて、金、銀、鉄、銅亜鉛、鉛などの鉱山が各地に存在していました。江戸時代には、「山師」という今で言う地球科学者が山に分け入り、それらの鉱床を発見してきました。だからこそ、鉱山が開発され、日本が近代化できたという歴史があります。その後、安全性やコストなどの問題から次々と閉山し、現在操業しているのは鹿児島県にある菱刈ひしかり鉱山と赤石あけし鉱山だけです。今後の資源研究を担う次世代を育成するためにも、子どもや学生に日本には鉱山資源があるんだということを知ってもらいたい、各地から集めた貴重な石を見てもらう場所をつくりたい、という思いがありました。

――展示されている鉱石鉱物標本にはどのようなものがありますか?

鉱山で働いていた方々から寄贈していただいたり、私たちが研究用に採取し保存してきたものを展示しています。例えば、兵庫県の中瀬鉱山から採れた自然金。通常、金は金銀鉱石として黒いバンド状になっていますが、これは金の粒子がそのまま見えます。非常に珍しく、アメリカのスミソニアン博物館にも展示されています。静岡県の河津鉱山で発見されたテルル石は、鉱物界では非常にレアなものとして知られています。

――展示室では深海と宇宙の資源も紹介されていますね。

日本の最東端として知られる南鳥島周辺の海域には、レアアース泥が膨大に存在しています。陸上で採掘するレアアースにはウランなどの放射性物質が含まれますが、海のレアアースにはほとんど含まれません。また南鳥島周辺海域には固有種がいないことが分かっています。放射性物質処理の問題や生物的影響がほとんどないということで、資源を採掘するには理想的な場所なのです。

鉄の供給源としての小惑星!

宇宙からの資源としては地球に落下した鉄隕石を展示しています。鉄は海ではなかなか採れません。陸上でも限界があります。では次はどこなのか。それが宇宙です。宇宙には巨大な鉄の塊が小惑星として存在しています。例えば直径3キロの小惑星から、今までに人類が使用した鉄と同等の量を採取できます。また、地球上で鉄を採ると酸化物になっているので、石炭などを使って二酸化炭素を大量に排出しながら精錬する必要があります。鉄隕石は鉄そのものなので、精錬しなくていいという利点もあり注目されています。

――オープンから1か月ほど経ちましたが、反応はどうですか?

Twitterなどで話題になったようで、問い合わせもたくさんいただいています。今後は実際に石に触れてもらえる機会を設けたいと考えています。8月20・21日には「自然に学ぶみんなの学校」という小学生を対象にした体験教室で、蛍石を加熱して発光させる実験をしたり、顕微鏡で観察したりといったことを予定しています。昔鉱山を開発した人たちが採った素晴らしい標本を見てもらって、今の資源フロンティアと未来の資源フロンティアに興味をもってもらいたいです。

展示室はSITE1とSITE2の2部屋。平日10時~17時に開館のSITE1では、大田先生が有人潜水調査船「しんかい6500」に乗り込んでレアアース泥を採取した際の映像も見られます。より貴重な石が展示されるSITE2は不定期で月2回程度の開館(詳細はこちら→ https://minerafront.jp/news/)。黒基調の展示室デザインは総合研究博物館が担当しました。ミュージアムの設置は加藤泰浩工学系研究科長の長年の願いだったそうです。
黒い壁で統一されたSITE1の外観。入口に透明な仕切りがあり、その奥に3つのディスプレイや鉱物が展示されている 黒い壁で統一されたSITE2の外観。入口奥の黒い枠の棚の中に鉱物が展示されている
①青森県の尾太鉱山から採掘された菱マンガン鉱。ピンク色と粒状の表面が目を引く菱マンガン鉱は収集家に非常に人気が高いそうです。 ②ミネラフロントで最も価値が高いと目される金鉱石は鹿児島県の赤石鉱山から。 ③光沢のある黄鉄鉱は鉄と硫黄が結びついてできた硫化鉱物。 ④栃木県の足尾鉱山から採れた鉱物標本。クジャク石、方解石、水晶、黄銅鉱など。 ⑤極彩色の黄銅鉱。酸化すると青や紫、黄色といった色に変化します。 ⑥鉱物の多くは化合物ですが、自然銀は酸化していない元素そのものです。 ⑦輝安鉱は世界的にも有名な日本刀のようにみえる結晶です。プラスチックの難燃剤などに使用されています。 ⑧南鳥島周辺の海底から採取したレアアース泥を精錬して蛍光体を作り、それをガラスケースの中に入れました。名付けて「南鳥島の光」。 ⑨レアアース泥に大量に含まれている魚の骨の化石。化石になる過程で海水からレアアースを濃集します。 ⑩鮮やかなエメラルド色の部分がブロシャン銅鉱。銅鉱床の酸化帯にできます。 ⑪岐阜県の神岡鉱山から採掘された亜鉛の硫化物。かつて、銅、亜鉛、銀が採れた神岡鉱山内では、現在ニュートリノの性質を解明するための実験が行われています。世界最大の水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置・スーパーカミオカンデは、鉱山内の地下1000mに設置されています。 ⑫超高濃度レアアース泥が発見された南鳥島周辺の日本の排他的経済水域海底に10mくらいのパイプを突き刺して採取した堆積物コアのレプリカ。1mくらいに切断したものをさらに縦半分に分割しています。 ⑬愛媛県の別子銅山産の縞状銅鉱石。およそ1億5千万年前の海での熱水噴出活動でたまった銅や金属の塊です。プレートの運動によって徐々に移動し、日本列島の陸上に現れました。
①青森県尾太鉱山産菱マンガン鉱②鹿児島県赤石鉱山産金鉱石③秋田県釈迦内鉱山産黄鉄鉱
④⑤秋田県松峰鉱山産黄銅鉱⑥北海道豊羽鉱山産自然銀⑦愛媛県市ノ川鉱山産輝安鉱⑧⑨⑩秋田県尾去沢(おさりざわ)鉱山産ブロシャン銅鉱⑪岐阜県神岡鉱山産閃亜鉛鉱-方解石⑫レアアース泥コアレプリカ⑬愛媛県別子(べっし)銅山産縞状銅鉱石