第1157回淡青評論

七徳堂鬼瓦

体験型教育

近年、大学教育において課外活動などの正課外教育の重要性を評価する傾向にあります。課外活動を通じて、社会生活に必要な主体性やコミュニケーション力などを身につける機会が提供されることによるものです。私にとっても、大学4年間の運動部での活動で社会性が鍛えられたと振り返って思います。近年では、インターンシップ(就業体験)を単位認定する大学もあり、実社会での体験型教育も重視されています。

専門課程の実習などで社会体験を取り入れた教育が行われていますが、本学で体験そのものを目的とした教育が取り入れられるようになったのは、教養学部前期課程の正課として、国立大学法人化の頃に全学体験ゼミナールが新設された時ではないかと思います。これは2003年から2005年にかけて教養学部長を務められた浅島誠先生の発案によるものです。浅島先生から大学演習林を活用した体験プログラムの提供について相談を受け、総合科目での試行を経て全ての地方演習林で開講するようになりました。

現在では課外活動の位置づけで多様な体験型教育プログラムが、学部生だけではなく大学院生も対象に提供されています。本学教員が提供するプログラムに加え、地方自治体や企業、同窓生の支援を受けて国内外で多数のプログラムが実施されています。例えば、地方自治体の課題解決に取り組むフィールドスタディ型政策協働プログラムや本学と協創事業を行っている企業の海外拠点での東京大学グローバル・インターンシップ・プログラムなど、いずれも充実した内容となっています。

私は、2021年4月から体験型教育プログラムを所掌している社会連携本部に副本部長として関わるようになり、体験型教育プログラムが多くの教職員の尽力によって支えられていることを改めて実感しています。2011年の東日本大震災の際にも、多くの教職員が学生を巻き込んで復興支援に参画し、また学生のボランティア活動にも大学から支援が提供されました。体験型教育プログラムやボランティア活動などで社会と関わりを持つことをきっかけとして、社会課題に関心を持ち、継続的に社会活動する学生が増えることを期待しています。

丹下 健
(農学生命科学研究科)