東京大学が全学をあげて推進してきたリベラル・アーツ教育。その実践を担う現場では、いま、次々に新しい取組みが始まっています。この隔月連載のコラムでは、本学の構成員に知っておいてほしい教養教育の最前線の姿を、現場にいる推進者の皆さんへの取材でお届けします。
足掛け19年の挑戦を未来の日本へ
/環境エネルギー科学特別部門の歩みと部門長のメッセージ
環境エネルギー科学特別部門長
瀬川浩司
2007年に前身の部門が発足
――部門の沿革を教えてください。
「小宮山宏総長の時代にNEDOの支援を受け、駒場の3部局(教養、生研、先端研)横断で教養学部附属教養教育開発機構(現・KOMEX)にNEDO新環境エネルギー科学創成特別部門(2007年~2012年)を設置しました。地球温暖化の主因とされる二酸化炭素の排出源は9割以上がエネルギー由来ですから、環境とエネルギーの問題は表裏一体で切り離せません。そのような視点で、環境とエネルギーの課題の同時解決を指向した教育を進めることが目的でした。この5年プロジェクトの終盤となる2011年に東日本大震災が起こり、環境とエネルギーの関係が一般社会でも重要な問題と捉えられるようになりました。このような状況を踏まえ、NEDOの支援終了後も自己資金で活動を続けるべく誕生したのが、2012年から始まった環境エネルギー科学特別部門です」
――部門の活動は、どのように広がっていったのでしょうか。
「まず、3部局に広がっていた人的リソースを教養学部に集約した上で、他部局からの兼務教員や外部からの客員教員に加えスポットでお招きする外部講師の皆様にご協力いただく体制を整えました。また、学生の教育だけでなく、2016年には社会人向けの生涯学習プログラム「グレーター東大塾」の一つとして「水素社会から日本のエネルギーの未来を考える」を企画運営し、社会人教育も担いました。このグレーター東大塾の修了生を中心に、2019年には「サステイナブル未来社会創造プラットフォーム」という産学連携コンソーシアム(幹事社はパナソニックホールディングス)を発足させました。その後、兵庫県神戸市、長野県茅野市、山梨県北杜市、熊本県山江村などの自治体も加わり、企業と地域をつなぐマッチングプラットフォームの機能も加わりました。同時に2019年にはKOMEX内で連携して「SDGs教育推進プラットフォーム」という持続可能な社会のための実践的なSDGs教育も開始しました」
現場と接した学生を社会へ
――「2050年カーボンニュートラル」についての考えを教えてください。
「カーボンニュートラルの達成には、科学や技術のみならず、政策立案とその実行、民間における投資マインドの醸成など、とても幅広く総合的な取り組みが求められています。環境エネルギー科学特別部門では、各分野で可能な限り現場に近い方々に講師としてお越しいただき、直接学生に接していただく講義やイベントを実施しました。このような活動から、一つの分野に閉じこもるのではなく如何に幅広い分野に接することが大事なのか、ある程度伝わったのではないかと思います」
――これまでの手応えと残る課題は?
「実際に部門の講義やイベントに参加した人たちがエネルギーに関わる研究や行政の第一線に進んで活躍しているのを耳にすることがあります。2007年までさかのぼると足掛け19年の活動ですから、年月の重みを感じます。一方で、エネルギー教育や環境教育の裾野をもっと広げる必要があると思っています。まだ道半ばですが、当部門の活動を一旦総括し、次の活動の進め方を考える予定です」
――3月には、部門の活動を総括するシンポジウムが予定されていますね。
「年に一度のKOMEXシンポジウムを今回は当部門が担います。「環境とエネルギーの相克と相溶」をテーマに、浅見泰司先生、福士謙介先生、江守正多先生、沖大幹先生、NEDOの山田宏之部長らにご講演いただき、2050年に向けての展望を考えてみたいと思います。今日まで積み重ねてきた19年間の活動を未来につなぐ一日にします」
――学生へメッセージをお願いします。
「大学は牧場のような場所です。どれだけ良い草を食べて元気に育ったか、つまりいかに良質な知に出会い、思考力を鍛えたかが皆さんの将来を決めます。駒場で「知の体力」すなわち応用力や判断力に加えて広い意味での人間力も養ってください。エネルギーと環境の問題は技術だけでなく社会の仕組みと深く結びつきます。このような問題だけでなく、様々な社会問題の解決に向けて挑戦を恐れず、次世代の理想的な社会をデザインする力を磨いてほしいと思います」
| 開会挨拶/寺田寅彦(総合文化研究科長) |
| 教養教育高度化機構について/ 増田 建(機構長) |
| 講演1 / Urban Rural の未来 福士謙介(未来ビジョン研究センター長) |
講演2 / ミライ・ハビタット:自律共創の仕組みをつくる 浅見泰司(空間情報科学研究センター) |
| 講演3 / 水と持続可能な開発 沖大幹(気候と社会連携研究機構長) |
| 講演4 / 気候の危機にどう向き合うか 江守正多(未来ビジョン研究センター) |
| 講演5 / 日本の再生可能エネルギー技術開発戦略 山田宏之(NEDO 再生可能エネルギー部長) |
司会:瀬川浩司
サステイナブル未来社会創造プラットフォームの活動はウェブサイトで確認できます。








