第1187回
点と点を結びつける「原石」を磨く
2025年のノーベル生理学・医学賞はMary E. Brunkow博士、Fred Ramsdell博士、坂口志文博士に授与された。私は2001~2003年に坂口先生の研究室に在籍し、Brunkow博士とRamsdell博士らが同定したFoxp3遺伝子の機能解明に関する研究に携わった。その研究が後にノーベル賞という形で評価されたことは感慨深い出来事であったが、授賞式に臨席して心にわきあがっていたのは、研究に取り組んでいたときの興奮と感動であった。そして、同じような思いを研究室のスタッフや学生たちにもぜひ一緒に味わってもらいたいと考えていた。
「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」とはJ.W.ヤングが著書『アイデアのつくり方』で述べた有名な言葉であるが、私が携わった研究も、当時は関連があるとは思われていなかった制御性T細胞とFoxp3という2つの要素を結びつけたものであった。本学で研究・教育に携わり、先端的な研究の実践を通して創造性豊かな若者を育てることを自分の大きな使命と考えている。そのためには、一見何の関係もないように思われる点と点のあいだに線を引いて結びつける能力を涵養することがキモであると思われる。
昨年度、総長補佐の任を仰せつかり、「入試チーム」で学校推薦型入試や総合型選抜入試について議論した。学力試験だけでは測ることが難しい能力を持った「原石」をどうしたら発掘できるか、そのような「原石」を入学後にいかに磨くことができるのか、考える機会となった。点と点を結びつけるには、そもそも点の存在をその文脈まで含めて知識として持つことは必要条件であるし、その能力を測ることにかけては本学の一般入試は優れていると思われる。しかし、その能力は決して十分条件ではないことが問題なのだ。
点と点を結びつける力は、最初から完成された才能ではない。それは、知識を身につけ、問い、考え、他者と議論し、試行錯誤する中で、少しずつ形づくられていくものである。本学がそのような場であり続けるならば、入試によって見いだされた「原石」は、やがて自ら線を引き、さらには新たな「面」を描いていくはずである。その瞬間に立ち会えることこそ、研究と教育に携わる者にとっての最大の喜びなのだと思う。
堀 昌平
(薬学系研究科)

