第1189回
大学運営にどう関わるかを考える
大学では「大学の自治」のもとで教員が主導する運営が行われてきたが、法人化以降、意思決定の仕組みは変化し、大学運営はよりトップダウン型の性格を強めてきた。この変化は迅速な判断を可能にする一方で、人的資源の配置という課題を改めて浮かび上がらせている。トップダウン型の運営は適材適所を前提とするが、現実には教員が本来担う必要のない実務的業務への広範な動員が継続しており、適材適所をどのように制度として担保するかが問われている。
教員の実務的業務への関与は、全学や部局の管理運営、入試業務、各種委員会業務など大学運営の多くの場面で常態化している。専門性を十分に活かせない業務への投入は、研究や教育の時間を静かに、しかし確実に圧迫し、授業改善や研究構想に充てられるはずの時間を少しずつ削っていく。こうした影響は短期的には目立たないものの、長期的には研究成果や教育の質の差として現れるだろう。これらの負担は予算上では可視化されず、「見えないコスト」として蓄積している。これは個々の業務負担の問題ではなく、大学という組織が専門性をどのように活かすかという構造的な問いにほかならない。他方、分業が進むほど、教育・研究の実態を最も理解している教員の制度設計やルール形成への関与は制限されることになる。教員の役割は専門でない業務の多くから切り離されるべきである一方、大学の使命に関わる意思形成には多くの教員の英知の結集が不可欠であろう。
近年、本学の在り方に対する社会的関心はこれまで以上に高まっており、管理強化への圧力はさらに増すだろう。ここでは、人的資源の配置関与・裁量の範囲と責任の所在を丁寧に設計することが重要であって、統制の強化だけでは大学の持続的発展は期待できない。現場の納得と実感を得られる形で専門性をどう活かし、誰がどの場面でどの業務に関わるのかを丁寧に考え続けることが、大学の持続的な発展と信頼を支える基盤となるのではないだろうか。
浅井 潔
(新領域創成科学研究科)

