第1191回
今後の地震学を変えるのは穴掘り技術?
昨年、東京大学地震研究所が創立百周年を迎えた。設立は関東大震災(1923年)の翌々年のことで、地震の被害を減らすためには地震現象の理解が必要であると痛感したからである。どこで地震が起き、なぜ地震が起き、地震が起きたらどうなるのかといった基礎的なことが、当時はほとんどわかっていなかった。どんな情報を得たら、地震の被害を減らすことができるのだろうか、その後の約百年間、多くの研究が続けられ、様々な知見を得てきた。
とりわけ「地震は断層の食い違い運動である」という震源像の発見は、その後の災害対策にも大きな影響を与えている。地震現象を数式で表現できるため、計算機上の仮想空間に地震を構築する手段を得たのである。それまで地震は岩石の破壊現象であるとされていたため、繰り返し試すことが困難であったが、条件を変えて何度でも再現することが可能になったのである。その結果、この百年間で、ゆれに耐えるために必要な設計、人々が安全に暮らすために必要な情報、地震に強い社会を作るために有効な手段、それらを科学的に考えられるようになった。
ここでは、次の百年間の地震学の発展を勝手に妄想してみた。地震には、まだ不明なことがたくさんある。例えば、次の大地震がいつどこで起きるのかは誰にもわからない。地震発生前にその断層がどんな状態にあるのか、その断層にかかる応力がどの程度なのか、それらがどのように変化していくのかを測れないからである。
そこで、深い穴を掘る技術の発展に私は期待したい。地震が発生するのは地下の深さ数km~数10kmと深く、その深さまで穴を掘る技術を人類は持っていない。断層の状態やその周辺の環境を直接把握する測定技術が必要である。そのような高温・高圧の環境下でも計測できる機器が発展して欲しい。断層面および断層周辺に適切に配置することで、地震発生前後の応力蓄積と応力開放および断層面での状態変化のすべてを把握することができる。測定データを定式化することで地震現象の理解が進み、計算機上に再現することができれば、次の大地震発生を予測することができるのではないだろうか。
ただし、新たなデータを取得すると、新たな現象を知ることになり、我々の想像を超えた新たな謎が待っているのかもしれないけれど。
酒井慎一
(情報学環)

