東京大学が全学をあげて推進してきたリベラル・アーツ教育。その実践を担う現場では、いま、次々に新しい取組みが始まっています。この隔月連載のコラムでは、本学の構成員に知っておいてほしい教養教育の最前線の姿を、現場にいる推進者の皆さんへの取材でお届けします。
環境とエネルギーは一体として解決すべき課題に
/機構シンポジウム「環境とエネルギーの相剋と相溶―2050年に向けての展望―」
環境エネルギー科学特別部門
中崎城太郎
20年越しの認識変容の一翼に
――年に一度の教養教育高度化機構シンポジウムが、「環境とエネルギーの相克と相溶」をお題として3月9日に行われました。環境エネルギー分野の横断的な取り組みを総括するものだったそうですね。
「環境エネルギー科学特別部門の活動を総括するにあたり、部門長の瀬川浩司先生に加え、福士謙介先生、浅見泰司先生、沖大幹先生、江守正多先生、山田宏之先生と、各分野を代表する研究者が集結しました。いまや多様な分野の研究者が、それぞれの立場から環境とエネルギーを意識して研究に取り組む時代となっています。公開の討論の前に背景がまったく異なる研究者が集まった打ち合わせでは、「環境とエネルギー」という共通のテーマについて率直に意見が交わされました。そのなかで、自然と議論がかみ合っていったことが強く印象に残っています。20年ほど前には一般的だった、環境の改善がエネルギー供給の犠牲を伴う、あるいはその逆も然りとする捉え方ではなく、両者は同時に解決すべき課題であるという認識で自然に一致していったことに 、確かな手応えを感じました。時代が確実に前へ進んできたこと、そしてこれまでの本部門の活動の意義を改めて実感する機会となりました」
―― 環境とエネルギーをめぐる認識は、どのように変わってきたと感じますか。
「前身であるNEDO新環境エネルギー科学創成特別部門がスタートした2007年当時は、再生可能エネルギーといっても「それは何ですか」と問われることが少なくありませんでした。しかし現在では、特別な説明を必要としないほど社会に浸透しています。環境とエネルギーが別々の課題ではなく、同じ問題として理解されるようになった点に、これまでの活動の大きな前進を感じています」
化学用語に込めた思いとは?
―― タイトルの「相克と相溶」にはどんな思いが込められているのでしょうか。
「「相克」は比較的使われる言葉ですが、「相溶」は化学用語で、互いによく混ざり合うことを意味します。以前は、環境とエネルギーは相容れないものと考えられ、研究者同士がじっくり議論する機会も多くはありませんでした。いまは両者が一体となって課題に取り組むことが当たり前になりつつあります。その状況を表す言葉として、「相溶」はしっくりくると感じました」
―― 当日の講演・パネルディスカッションを通して、2050年の未来に向けて伝えたかったことは何でしょうか。
「シンポジウムでは、未来世代に重荷だけを背負わせたくない、という思いを登壇者全員で共有していました。課題は確かに重いですが、良い取り組みを評価する「加点型」の発想で進めていくことが、希望につながるのではないでしょうか。例えば地球温暖化対策というと、我慢や制約が強調されがちですが、環境・エネルギー問題の解決を通じて、より良い未来を実現できる、がんばれば良い未来がある――そうしたビジョンを若い世代に示すことが、いま研究者に求められていると考えています」
(2014年以降)
| 2026 | 環境とエネルギーの相剋と相溶 |
| 2025 | 多様性と安全 |
| 2024 | 東京大学のEducational Transformation |
| 2023 | 今、SDGs はどうなっているのか |
| 2022 | 大学における社会連携による教育の可能性 |
| 2021 | 科学技術コミュニケーションの16年 |
| 2020 | (コロナ禍の影響で中止) |
| 2019 | 教養教育におけるグローバル化の新段階 |
| 2018 | 東京大学 初年次ゼミナールの軌跡と展望 |
| 2017 | 教養教育と自然科学 |
| 2016 | 教養教育とアクティブラーニング |
| 2015 | 教養教育における社会連携と国際化 |
| 2014 | 初年次教育 |
機構の各部門が順番に企画・運営を担当して行う毎年1回のシンポジウム。各回のテーマは時代ごとに求められる教養教育の姿を映し出しています。
未来ビジョン研究センター長
大学総合教育研究センター長
気候と社会連携研究機構長
未来ビジョン研究センター
新エネルギー・産業技術総合開発機構







