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第75回

教養教育の現場から リベラル・アーツの風

東京大学が全学をあげて推進してきたリベラル・アーツ教育。その実践を担う現場では、いま、次々に新しい取組みが始まっています。この隔月連載のコラムでは、本学の構成員に知っておいてほしい教養教育の最前線の姿を、現場にいる推進者の皆さんへの取材でお届けします。

環境とエネルギーは一体として解決すべき課題に

/機構シンポジウム「環境とエネルギーの相剋と相溶―2050年に向けての展望―」

教養教育高度化機構
環境エネルギー科学特別部門

中崎城太郎
中崎城太郎

20年越しの認識変容の一翼に

――年に一度の教養教育高度化機構シンポジウムが、「環境とエネルギーの相克と相溶」をお題として3月9日に行われました。環境エネルギー分野の横断的な取り組みを総括するものだったそうですね。

「環境エネルギー科学特別部門の活動を総括するにあたり、部門長の瀬川浩司先生に加え、福士謙介先生、浅見泰司先生、沖大幹先生、江守正多先生、山田宏之先生と、各分野を代表する研究者が集結しました。いまや多様な分野の研究者が、それぞれの立場から環境とエネルギーを意識して研究に取り組む時代となっています。公開の討論の前に背景がまったく異なる研究者が集まった打ち合わせでは、環境とエネルギーという共通のテーマについて率直に意見が交わされました。そのなかで、自然と議論がかみ合っていったことが強く印象に残っています。20年ほど前には一般的だった、環境の改善がエネルギー供給の犠牲を伴う、あるいはその逆も然りとする捉え方ではなく、両者は同時に解決すべき課題であるという認識で自然に一致していったことに 、確かな手応えを感じました。時代が確実に前へ進んできたこと、そしてこれまでの本部門の活動の意義を改めて実感する機会となりました」

―― 環境とエネルギーをめぐる認識は、どのように変わってきたと感じますか。

「前身であるNEDO新環境エネルギー科学創成特別部門がスタートした2007年当時は、再生可能エネルギーといってもそれは何ですかと問われることが少なくありませんでした。しかし現在では、特別な説明を必要としないほど社会に浸透しています。環境とエネルギーが別々の課題ではなく、同じ問題として理解されるようになった点に、これまでの活動の大きな前進を感じています」

化学用語に込めた思いとは?

―― タイトルの「相克と相溶」にはどんな思いが込められているのでしょうか。

相克は比較的使われる言葉ですが、相溶は化学用語で、互いによく混ざり合うことを意味します。以前は、環境とエネルギーは相容れないものと考えられ、研究者同士がじっくり議論する機会も多くはありませんでした。いまは両者が一体となって課題に取り組むことが当たり前になりつつあります。その状況を表す言葉として、相溶はしっくりくると感じました」

―― 当日の講演・パネルディスカッションを通して、2050年の未来に向けて伝えたかったことは何でしょうか。

「シンポジウムでは、未来世代に重荷だけを背負わせたくない、という思いを登壇者全員で共有していました。課題は確かに重いですが、良い取り組みを評価する加点型の発想で進めていくことが、希望につながるのではないでしょうか。例えば地球温暖化対策というと、我慢や制約が強調されがちですが、環境・エネルギー問題の解決を通じて、より良い未来を実現できる、がんばれば良い未来がある――そうしたビジョンを若い世代に示すことが、いま研究者に求められていると考えています」

◉教養教育高度化機構シンポジウムテーマの変遷
(2014年以降)
2026 環境とエネルギーの相剋と相溶
2025 多様性と安全
2024 東京大学のEducational Transformation
2023 今、SDGs はどうなっているのか
2022 大学における社会連携による教育の可能性
2021 科学技術コミュニケーションの16年
2020 (コロナ禍の影響で中止)
2019 教養教育におけるグローバル化の新段階
2018 東京大学 初年次ゼミナールの軌跡と展望
2017 教養教育と自然科学
2016 教養教育とアクティブラーニング
2015 教養教育における社会連携と国際化
2014 初年次教育

機構の各部門が順番に企画・運営を担当して行う毎年1回のシンポジウム。各回のテーマは時代ごとに求められる教養教育の姿を映し出しています。

教養教育高度化機構シンポジウム『環境とエネルギーの相克と相溶』案内ポスター(2026年3月9日開催)
シンポジウムのポスター。当日の成果は採録集として後日出版の予定です。
◉シンポジウム講演者の顔ぶれ
福士謙介(未来ビジョン研究センター長)
福士謙介
未来ビジョン研究センター長
浅見泰司(大学総合教育研究センター長)
浅見泰司
大学総合教育研究センター長
沖 大幹(気候と社会連携研究機構長)
沖 大幹
気候と社会連携研究機構長
江守正多(未来ビジョン研究センター)
江守正多
未来ビジョン研究センター
山田宏之(新エネルギー・産業技術総合開発機構)
山田宏之
新エネルギー・産業技術総合開発機構
『環境とエネルギーの相克と相溶』シンポジウムでのパネルディスカッションの様子
3人の講演者に部門客員教授の田中良先生も加わってパネル討論が行われました(司会は瀬川先生)。
室内の一角にキャスター付きの展示ボードが並び、研究内容が書かれたパネルが掲示されている様子
会場となった教養学部13号館では、機構の各部門の活動を示すパネル展示も行われました(シンポジウムはオンラインとのハイブリッド形式での開催)。

※所属等の表記は2026年3月時点でのものです。

教養教育高度化機構(内線:44247)KOMEX

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UTokyo Brand Studio 実験中!第4回

法学部3年北田日奈子

二度目の武道館、決意を新たに

2026年4月13日、日本武道館にて東京大学および東京大学大学院の入学式が行われました。UTokyo Brand Studio学生スタッフとして現地へ赴き、新入生にインタビューを行いました。自分の入学式以来2年ぶりの武道館はとても懐かしく、新入生の期待と不安を浴びて初心にかえることができました。

毎年、創立記念日に行われる入学式。時季的に桜は今年も散っていましたが、満開のハナミズキと鮮やかな緑がいきいきとした新入生の面持ちを反映しているようでした。

今回のインタビューは、東京大学創立150周年を見据えたコミュニケーション・キャンペーン「Challengers for Changes」の企画の一環です。3月に行われた卒業式でのインタビューに引き続き、入学式においても参加している新入生に取材しました。
「東京大学に入学してチャレンジしたいことはなんですか?」

三者三様の回答をいただきました。「たくさん友達を作りたい」「進振りで希望の学部に行きたい」「アメフト部に入ってレギュラーをとりたい」「自分の持っている価値観と違う意見と積極的に触れ合っていきたい」「世界中をとりまく問題を解決する存在になりたい」……。特に印象に残ったのは、「自分のやりたいことを探していきたい」という回答です。進学選択制度を控え、入学後に自らの専門性を模索できる東大のリベラルアーツの精神が、彼らの自由な志に現れていると感じた瞬間でした。

青いテロップがそれぞれに入った、9人の若者のポートレート写真

新入生は皆、初々しく、期待に満ちた目をしていました。インタビューを通して自分が入学したときの気持ちを思い出しました。大学生活も折り返し地点を過ぎた今、初心に立ち帰る機会を得られたのは何よりの収穫です。悔いなくやりたいことに全力を注ぐ覚悟で過ごしていきたいと思います。

インタビューの様子は東京大学公式インスタグラムに掲載されています。ぜひ、ご覧ください。

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#We Change Now

第19回
ジェンダー・エクイティ推進オフィス通信

男女別研究者活躍データの可視化と女性研究者の増加に向けて

2026年3月23日に、国際女性デーWebinarイベント「アカデミアにおける女性研究者の増加をめざして ―データから読み解く現状とその利活用―」を開催しました。ジェンダー・エクイティ推進オフィスでは、「UTokyo 男女協働改革#WeChange」事業の一環として、男女別研究者活躍データの可視化に、経営企画部IRデータ課と連携して取り組んできました。本イベントでは、先駆的にデータ可視化に取り組んでこられた、九州大学、東北大学から登壇者をお招きし、第一部では、本学も含めそれぞれの大学におけるデータ可視化の取組を報告し、第二部ではそれを踏まえたパネルディスカッションを行いました。関係者を含む117名が参加しました。

本イベントでは、ジェンダー不均衡の現状をデータを通して確認し、これを踏まえた女性研究者増加施策の取組状況が共有されました。また、男女別データの収集と可視化の効果について、DEI推進及び意思決定層への影響等が挙げられました。登壇者間で活発な意見交換が行われ、その後、参加者との質疑応答がありました。

なお、東京大学では、このたび、3つのセットでデータを公開しています。以前から公開していた、(1)全学教員数(特定有期を含む)に加えて、(2)部局別教員(特定有期を含む)、(3)科研費の新規応募・新規採択の男女別データを新たにUTokyoウェブサイトのD&Iページにて公開しました。次のURLよりご覧ください。

https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/actions/diversity-inclusion.html

「教員数および女性教員比率 部局別の詳細」のグラフ画面。左側に年度や職名の選択メニュー、右側に男女別の教員数と女性教員比率の横棒グラフが並んでいる
「科研費の主な研究種目における応募と採択の件数・比率」を示した、男女別の縦棒グラフと折れ線グラフのダッシュボード画面
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ワタシのオシゴト RELAY COLUMN第240回

本部総務課
評価チーム
山口真次

新天地にて法人評価のオシゴト

山口真次
チームのみなさんに見守られながらの一枚

4月の異動により、総務課評価チームに配属となりました。これまで研究支援畑を歩んできましたが、現在は国立大学法人評価への対応を担当しています。着任以来、「第4期中期目標期間(令和4年度~令和9年度)」の4年目終了時評価に向けた報告書作成に取り組んでいます。報告書作成を通じて、東大の多様な活動が日々のみなさまのご尽力とご協力によって成り立っていることを改めて実感しています。不慣れな点も多く、チームのみなさんに温かく支えていただきながら(ご迷惑をお掛けしておりますが)、学びの多い日々を新鮮な気持ちで過ごしています。引き続き6月末の報告書提出に向けて、日夜奮闘していきます。

休日には、家族や友人と年に数回旅行することを楽しみにしています。先日は初めて広島を訪れ、お好み焼きやあなご飯、もみじ饅頭など、名物の数々を堪能しました。ごちそうさまでした!(旅先では、いつも食べてばかりです)

海の中に佇む厳島神社の大きな鳥居
広島旅行、嚴島神社の大鳥居が印象的でした
得意ワザ:
素早いドアの開閉
自分の性格:
頭は冷静で心は熱い(つもりです)
次回執筆者のご指名:
平賀琢也さん
次回執筆者との関係:
同期+工学系NEDOラインのつながり
次回執筆者の紹介:
キャプテンシーがあります!
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専門知と地域をつなぐ架け橋に FSレポート!

第43回
新領域創成科学研究科修士2年山口絢弘

84枚のカードが紡ぐ新島の未来

青い海と様々な色の砂浜、そして世界唯一のコーガ石。東京から南へ約160kmに位置する新島が、私たちのフィールドだ。かつてはサーフィンの聖地として知られたこの島だが、私たちが直面したのは少し複雑な地域課題だった。新島村の未来を考える会議において、地域資源が体系的に整理されていないため、議論が発散しやすく、具体的な合意形成に至らないという課題があった。

そこで私たちは、漠然とした「新島の地域資源」をカードという形に落とし込み、最終的に84枚の「地域資源カード」を作成した。誰もが同じ情報を見ながら議論できるプラットフォームを構築し、未来に向けた議論を円滑に行えるようにすることが狙いだ。

壁にたくさん並べて展示されたカードを、後ろから熱心に眺めている複数の人々の後ろ姿
船客待合所に展示された地域資源カード

初期のプロトタイプではカードに網羅的に情報を盛り込み、議論の土台となることを目指したが、それを用いたワークショップでは、議論中にカードの情報が読まれないという壁にぶつかった。そもそも島民の方々は島の地域資源の情報を把握しており、そこまでの情報は必要としていないのではないかという声をいくつもいただいた。こうしたワークショップでの生の声をもとに、試行錯誤の末、議論に必要な情報に絞った直感的なデザインへと磨き上げた。現地の方々の反応を見て軌道修正していく過程は、現場に出なければ得られない、FSの醍醐味だった。

丸テーブルの上にたくさん広げられたカードを、選んだり見せ合ったりしている様子
カードを用いたワークショップの様子

最終の現地報告会では、新島港の展示スペースにカードを並べて展示し、完成版カードを使ったワークショップを行った。行き交う人々が足を止め、カードを組み合わせて新たな楽しみ方を探る姿や、日常の風景の価値を再発見して笑顔で語り合う姿を見たとき、胸が熱くなった。

正解のない問いに対し、対話を通じて共に答えを探る。温かくエネルギッシュな新島の人々と駆け抜けたこの1年は、私たちにとってかけがえのない財産だ。皆さんもぜひ、魅力あふれる新島へ足を運んでみてほしい。

フィールドスタディ型政策協働プログラム

●メンバーはほかに谷口優介、横田有映、和泉舞

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インタープリターズ・バイブル第225回

総合文化研究科 教授
科学技術コミュニケーション部門
梶谷真司

知の媒介者の存在意義

昨年3月に公刊した拙著『思想としての育児 知識と身体の歴史哲学』(教育評論社)で、私は「知の媒介者」という概念を提示した。それは、既存の専門知識を一般の人たちに向けて伝える人を指す。彼らがすることは啓蒙の一種ではあるが、自身は専門家ではなく、知識を新たに生み出さず、もっぱら専門知と民衆知をつなぐことに存在意義がある。ただし彼らは、たんに知識を右から左へ移しているだけではない。分かりやすく効果的に伝えることが重要で、さらにどのくらい広範囲に伝えられるかという固有の課題をもっている。

江戸時代、医療的観点から書かれた育児書はそれほど多くはない。香月牛山の『小児必要養育草(そだてぐさ)』(1703)が最も有名であり、他にも数冊あるが、それらはみな医者という専門家が書いたものである。他方、石田鼎貫という薬屋が書いた『小児養育金礎(こがねのいしずえ)』は、専門家ではない媒介者的な立場の人物によるものとして異色である。これは脾肝薬王圓という看板薬の能書を兼ねて無料で配布され、しかも文化10年(1813)から明治34年(1910)まで、百年近くにわたって何度も改訂を繰り返した。また薬王圓は、最盛期には北海道から九州にまで広まった。『金礎』の記述は簡潔で分かりやすく、また諸々の病症に対する処方と結びつけて説明されている。つまり、読者の関心を惹きつけつつ書かれているのである。しかも書物が現代のように誰でもどこでも手に入れられなかった時代、薬と一緒に無料で配られた『金礎』は、おそらく明治以前に最も読まれた育児書だっただろう。知識の正確さや緻密さ、体系性を重視する専門家から見れば、粗雑でいい加減なところはある。しかし伝わってこその知識である。その点でこうした媒介者の存在は、あらためて評価する必要があるだろう。

古い和紙に刷られた薬の広告。上部に効能などの解説文、下部には病気の症状を表した人物イラストが色付きで並んでいる資料画像
石田家の看板薬脾肝薬王圓の引き札
(カリフォルニア大学サンフランシスコ校所蔵)

科学技術インタープリター養成プログラム

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HCD編 ききんの「き」 寄付でつくる東大の未来第79回

ディベロップメントオフィス
シニアディレクター
庄司英里

ホームカミングデイ企画募集中

「第25回 東京大学ホームカミングデイ 参加団体大募集! 2026.10.17 土」と書かれた、イラスト入りのイベント案内画像

東京大学ホームカミングデイ(HCD、愛称:銀杏祭)10月17日(土)開催の準備が始まりました。企画参加募集も始まったばかりです、学内からの応募をお待ちしております! 昨年は過去最高となる約1万人が来場、卒業生をはじめ、そのご家族や地域の方々、東大に関心をお持ちのみなさまが本郷キャンパスに集いました。今年はさらに規模を拡大し、より多くの方に東大の魅力を体感いただく場を目指します。

ホームカミングデイは年に一度、母校に卒業生が集まり懐かしく楽しい一日を過ごしてもらいたいという目的で始まりました。いまはオール東大の祭典として、「東大(=我々)はなにをやっているのか?」を社会に、そして東大ファンのみなさんに広く発信し、共感と支援を得る重要なイベントとしても開催しています。研究発表から体験型ワークショップ、展示、フード提供まで、内容は自由自在。部局での参加はもちろん、研究室単位、趣味でつながる職場仲間、かつてのクラスメイト同士など、ゆるやかなつながりでの参加ももちろんOKです。それぞれの「東大らしさ」を活かした企画をお待ちしています。

今年の本部企画の目玉は「赤門瓦記名会」。「ひらけ!赤門プロジェクト」にご支援いただいたみなさまにご自身で瓦に名前をいれていただくプログラムです。瓦の枚数はなんと1000枚、多くの来場者が見込まれ、盛り上がること間違いありません。いまの仲間や懐かしい同期をお誘いあわせのうえ、駒場祭、五月祭に続く、東大ファンが楽しめる銀杏祭を一緒に盛り上げてください。まずは「ちょっとやってみようかな」というお気軽なお気持ちからのご参加も大歓迎です。

参加方法、詳細は本部ディベロップメントオフィスホームカミングデイ事務局まで。

hcd.adm@gs.mail.u-tokyo.ac.jp