本学が推進するガバナンス改革策の重要な柱のひとつが、「教員懲戒制度の見直し」と「教職員の倫理意識の徹底」です。長年改定されてこなかった懲戒手続きの問題点はどこにあるのか、そして構成員一人ひとりの意識改革をどのように実現するのか。これらの改革を担当する山本理事に改革のポイントと具体的な取り組みについて語っていただきました。
懲戒手続きの期間を短縮する
――2つの改革を担当することになった経緯を教えてください。
直接のきっかけは総長からの打診でした。その背景として、私が法学政治学研究科の研究科長を務めていたこと、そして学問と法との関係について研究を続けてきたことがあります。学問や研究の自由は法によって守られますが、その価値を法で測ることはできません。法は、学問の内容に介入することはできないのですが、学問を社会において発展させるために機能する。そういう意味で非常に面白い研究対象です。また、公益通報者保護法の改正に2度関わった経験もあります。
──現行の懲戒制度の課題は何ですか?
一番よく指摘されるのは、スピードの遅さです。懲戒手続き自体に平均1年以上、先行するコンプライアンスやハラスメントの手続きを含めると平均2年以上かかっています。民間企業ですと数か月だそうですが、大学には研究倫理や教員と学生との関係といった特有の複雑さがあるので、一概には比較できません。ただ、それを差し引いても現状は遅すぎると思います。
もう一つの課題は手続きの中身です。従来の懲戒制度は教員が自浄作用を発揮する制度で、この考え方は変えません。ただ、事実関係や懲戒の量定についての争いを想定して専門的な知識や判断をストレートに反映する仕組みが十分ではありませんでした。
──どのような改革を考えていますか?
大きな点は、懲戒委員会の組織改革です。現在は、教員だけで構成されているため、突然発生する事案に対して日常の業務との日程調整がつきにくい。今後は組織の規模を適正化するとともに、専門家である弁護士を、従来の「補助者」ではなく正式な「委員」として複数名登用します。法律家の間でも判断が分かれる繊細な問題があるので、複数の専門的な視点による議論の可能性を確保したい。
あわせて、懲戒委員会の中に幹事会を設置し、進捗管理をします。処理期間の目標を定めて手続きを迅速化したいです。全体としては、6ヶ月への短縮を目標に掲げ体制の整備を進めながら、幹事会が個別の事案の複雑さに応じて期間を設定し、審議を進めていきます。法人化以降、大きな改正がされてこなかった制度と運用上の課題を、一つずつクリアします。6月中にワーキンググループで取りまとめを出し、実装は7月以降になる予定です。
風通しの良い環境を作る
──倫理意識徹底の試みもご紹介ください。
今年1月に「倫理保持のための規範」を制定しました。今後はeラーニングなどを用いた研修を考えています。ただ、本当に必要な人に届ける研修というのが難しい。そして、普段から気をつけている人にとっては研修ばかりが増えて形骸化してしまう懸念もあります。だからこそ重要なのは、日常の環境作りではないでしょうか。問題の多くは、外から見えない閉鎖的な空間で発生します。部局や研究室を超えた情報の共有や、お互いに注意・相談し合える風通しの良い環境を作ることが欠かせません。
社会連携などの活動領域を広げる本学には、東大だからこそさらされやすいリスクが存在します。プロセス検証委員会からは、意思決定の記録がないといった「プロセスの軽視」も指摘されました。ガバナンス改革の本質は、単なるトップダウンの強化ではありません。現場の異なる意見や課題を組織の力にしていく。そのプロセスを作ることが肝心だと思います。
ガバナンスのあり方に唯一の正解はありません。試行錯誤を重ねながら、教職員や学生の皆さんとともに考え、粘り強く取り組んでいきたいと考えています。
◉利害関係者等との間の飲食に関する規制について


