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第76回

教養教育の現場から リベラル・アーツの風

東京大学が全学をあげて推進してきたリベラル・アーツ教育。その実践を担う現場では、いま、次々に新しい取り組みが始まっています。この隔月連載のコラムでは、本学の構成員に知っておいてほしい教養教育の最前線の姿を、現場にいる推進者の皆さんへの取材でお届けします。

自ら問いを立てて没頭する“主体的な学び”の価値

/新部門長に聞くEducational Transformation(EX)部門の取り組み

教養教育高度化機構
EX部門長

土畑重人
土畑重人

何かを見つけ試行錯誤する力

――多彩な授業を支えるEX部門のミッションとはどういうものでしょうか。

本学の初年次教育の質的転換を目指しています。文科・理科で150以上のクラスを抱える一年生の必修科目「初年次ゼミナール」の企画・運営も担っています。私は今年度から部門長に着任し、その規模に驚くと同時に、日々ありがたさを噛み締めています。前任の若杉桂輔先生から「楽しくいきましょう」とバトンを渡された通り、多様なスタッフが集まるアットホームな部門です

予測ができないこれからの時代、社会に出たときに大事になるのは、自分で何かを見つけ試行錯誤する力。現場の先生方の面白い試みをすくい上げ、学生自身がそのプロセスを実践するための“現場からの適応”をここから支えていきます

――初年次ゼミナールではどのような教育効果が生まれていますか。

各クラスで学生の主体性を引き出す多彩なアプローチが展開されるなか、進化生態学を専門とする私のゼミ「アリの巣で体験する自己組織化現象」では、シンプルな個体が複雑な集団行動を生み出すアリをテーマに、採集・観察や実験、論文読解に挑んでいます。ある日、電車内で近くにいた学生が「初ゼミのアリの授業、すごく面白かった」と話しているのを耳にしました。教養教育に携わる身としてこれほど嬉しい瞬間はなく、自分で泥臭く問いを立て没頭した経験は、彼らのなかに確かに残るのだと実感しました

この教育効果は、150以上のクラス全体における学生の意識の変化にも顕著に現れています。理科側で実施した学生アンケートでは、授業の「Before(期待)」と「After(評価)」で、授業評価が目に見えて大きく向上することが分かりました。未知の領域に対して自ら問いを発見し、追究していくプロセスの意義が、数字からも証明されているのです

――コロナ禍を経て、EX部門が管理運用を担う駒場アクティブラーニングスタジオ(KALS)の果たす役割とは?

私が東大に着任したのはコロナ禍直前の2020年。完全オンラインの環境を経験したからこそ、「人間、会って喋ってなんぼだな」と痛感しています。今の学生は対面へのハングリーさがあり、顔を突き合わせて喋り始めると活発な議論が生まれます。そんな熱気を受け止める最高の物理的ステージが、KALSです

思考を映す鏡としての生成AI

――教育現場において、生成AIとはどう付き合うべきでしょうか。

EX部門では2023年度からプロンプトの工夫を学ぶワークショップを行い、積極的な利用に挑んできました。AIへの問いかけは自身のモチベーションの反映であり、思考を映す鏡です。通り一遍の問いには通り一遍の答えしか返ってきませんが、工夫し上手に付き合えば、有能なTAがクラスに一人増えたかのように心強い教育支援ツールになります。予測不能な環境変化のなかで、ただ答えを教えてもらうのではなく、最先端の技術も使いこなしながら自分で試行錯誤を重ねていく。そんな駒場ならではのリベラル・アーツの精神を大切にしながら、EX部門はこれからも教育のあり方をトランスフォームし続けていきます

並べられた『アクティブラーニングニュースレター』のバックナンバー冊子
EX部門では、現場の具体的な実践例を詰め込んだ『アクティブラーニングニュースレター』を年4回発行。今年度は授業の空気感を交えた「動画」にして発信しようという新プロジェクトを始めています。
https://komex-ex.c.u-tokyo.ac.jp/ja/newsletter/
分岐したルートを進みエサに群がるアリの実験の様子
土畑先生の授業「アリの巣で体験する自己組織化現象」より、エサ場で見つけたご馳走をいち早く仲間に知らせるアリ。より近いルートをフェロモンで仲間に伝え、集団で効率的に運ぶ様子を実証する実験で、アリの交通情報システムの凄さが実感できます。
グループ学習向けの円形テーブルとオレンジ色の椅子が並ぶKALSの教室の様子
対面授業の熱気を受け止めるKALS(駒場17号館)。6月16日にはKALSの特徴や設備機材を体験する教職員向けセミナーを開催しました。
SDGsのアイコンが掲示されたホワイトボードの前で発表・授業を行う学生の様子
3月29日に開催したSDGsワークショップ(第6回)より。優れた授業案を設計した学生が高校生向けの授業を実施しました。

教養教育高度化機構(内線:44247)KOMEX

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UTokyo Brand Studio 実験中!第6回

文科一類2年黒田琉斗

いちばん伝えたいことを明確にする

昨年10月のキックオフ以降、デザインやコミュニケーションの手法・視点を学ぶ機会をたくさんいただきました。そのたびに新たな発見があってその世界の多様さに驚かされる一方、どの分野にも共通すると感じたのは「いちばん伝えたいことを明確にする」という姿勢でした。

その学びを経て迎えたのが、5月16日から17日の2日間にわたって開催された第99回五月祭です。ブランドスタジオでは学生有志による東大グッズショップと並行し、大学公式インスタグラムに掲載するためさまざまな企画への取材を行いました。

当日は、同じく学生スタッフの森さんとキャンパスを歩き回り、各所で写真を撮影しました。なかでも、中央通りを写した1枚が気に入っています。この写真では、道を埋め尽くすほどの大勢の来場者や学生を主役に、キャンパスの賑わいが伝わるよう意識しました。カメラの達人への道はまだ遠いですが、何に注目してほしいか考えてシャッターを切るようになってから、自分の写真が少しずつ成長しているように感じられてうれしかったです。

木々の立ち並ぶ屋外の通りに紅白のテントが並び、多くの来場者でにぎわう五月祭の様子

五月祭終了後、写真に添えて投稿するための記事の執筆に取りかかりました。個性あふれる企画で活躍する学生の姿や東大グッズショップのことなど伝えたい内容は数えきれないほどありましたが、それらを限られた字数に収める必要があり、原稿を削りに削って完成させました。振り返ってみるとこれもまた、多くの情報のなかから核となるメッセージを選択するプロセスでした。

この経験を通して、写真と文章という異なる媒体であっても「いちばん伝えたいことを明確にする」ことの重要性は変わらないのだと改めて実感しました。今後も「何に焦点を当てるか」を意識して、ブランドスタジオの活動に取り組んでいきたいです。

東京大学公式インスタグラムには、五月祭をはじめさまざまな記事が掲載されています。ぜひご覧ください。

東京大学公式インスタグラムサイトのQRコード
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#We Change Now

第20回
ジェンダー・エクイティ推進オフィス通信

「研究と育児の両立に関するワークライフバランスセミナー」開催

5月28日、ジェンダー・エクイティ推進オフィス主催の「ワーク・ライフ・バランスを重視する研究者のためのアカデミアキャリア構築スキルコース」の一環として、「研究と育児の両立に関するワークライフバランスセミナー」(オンライン)が開催され、約60名の研究者・学生が参加しました。

冒頭で田野井慶太朗オフィス長は、研究と育児の両立は一部の当事者に限られた課題ではなく、研究コミュニティ全体で理解し支えるべき重要なテーマであると述べ、キャリア初期からの意識醸成の必要性を強調しました。

続いて、ダイバーシティ推進課の臼井貴紀係長より、本学における育児・介護支援制度が紹介されました。新設された教職員のための育児・介護支援制度ポータルサイトをはじめ、学内保育園やワーク・ライフ・バランス推進のための研究リスタート・両立支援プログラム、ベビーシッター利用育児支援など、研究者の状況に応じた多様な支援策が示されるとともに、制度の活用には周囲の理解が不可欠であることが指摘されました。

育休経験者による発表では、柳澤大地准教授(工学系研究科)と麦田裕子特任准教授(医学系研究科)が登壇しました。柳澤氏は研究中心の生活から育児との両立へと転換した経験を踏まえ、仕事と家庭を対等な「二つのプロジェクト」と捉える視点を提示しました。麦田氏は複数回の出産・育児を経ながら研究を継続してきた実践を紹介し、制度活用や周囲との協力・連携の重要性、そして研究と育児のバランスのとり方は人それぞれであることを示しました。

本セミナーを通じて、研究と育児の両立は個人の努力に依存するものではなく、制度と組織的支援によって支えられるべき課題であるという認識が共有されました。今後の研究環境の在り方を考える上で、有意義な機会となりました。

(ジェンダー・エクイティ推進オフィス特任助教 久保京子)

オンライン会議システム上で笑顔で参加する複数名のメンバーの画面
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ワタシのオシゴト RELAY COLUMN第242回

新領域創成科学研究科教務チーム
係長
櫻井雄介

「新領域創成」の教育現場から

櫻井雄介
“塊感”のある無骨な建物です

2024年4月に着任し、授業・履修・成績など、教育課程の実施に関する実務事務を担当しています。新領域創成科学研究科の学生数は工学系に次ぐ規模で、特に学期末の成績回収は物量との勝負ですが、時に教務委員の先生や専攻事務の方のお力も借りて乗り切っています。年間を通じて何かと慌ただしいですが、教育の基盤を支える仕事だと感じています。

今年度から係長となり、会議の場で執行部の先生方の議論を聞く機会が増えました。中でも、基礎となる学部を持たず、本部から地理的な距離がある当研究科の戦略といったお話は、仕事の視座を高めるとともに、自身の役割を考える契機となりました。

良い刺激を得られている反面、受け取る情報量やチームの意思決定に関わる場面は格段に増えました。マネジメントは目下勉強中、転がるように走る日々です。

仕事でフル回転させた頭は、テニスでリフレッシュさせています。柏キャンパスのコートは事務室からアクセスが良く、昼休みプレーヤーの強い味方です!

コートでテニスの試合を行うプレイヤーたち
物性研究所をバックに試合(筆者右奥)
得意ワザ:
不意打ちアンダーサーブ
自分の性格:
何かと寝かせがち、、、
次回執筆者のご指名:
古屋香菜さん
次回執筆者との関係:
教養学部教務課での同僚
次回執筆者の紹介:
駒場への愛情にじむ敏腕職員!
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専門知と地域をつなぐ架け橋に FSレポート!

第44回
農学部獣医学専修6年小野川雅彩

「コナンのまち」のその先へ

私は昨年度、鳥取県北栄町で活動しました。北栄町は「名探偵コナン」の原作者・青山剛昌先生の出身地で、町内にはコナンのキャラクターオブジェや青山剛昌ふるさと館など、多くの観光スポットがあります。小学生の頃から「名探偵コナン」が大好きな私にとって、コナンのまちを担当できたことはとても嬉しい経験です。

一方で、北栄町には「観光がコナンで完結してしまう」という課題があります。観光客の多くはコナン関連施設を訪れて満足し、地域の人々やお店に触れる機会が少ないため、地域と継続的に関わる「関係人口」へと発展しにくい状況です。

フリーペーパー編集に協力してくれた関係者による集合写真と、その表紙画像
フリーペーパー編集に協力してくださった方との1枚(枠内はその表紙)

そこで私たちは、地域の人々の魅力を伝えるフリーペーパーを作成しました。目的は、北栄町に興味を持った人が地域との関わりを始めるきっかけをつくること。現地活動を通じて知り合った移住者の方への取材を行ったほか、地域で活躍する方々に寄稿を依頼しました。写真を多く掲載し、人や場所の魅力を多面的に伝えられるよう工夫しました。観光情報だけでは見えてこない、北栄町で暮らし、挑戦し、地域を支える人々の姿を知ってもらいたいという思いを込めました。

民泊関係者や移住者たちによる室内での集合写真
地元で民泊を営む方と、コナンをきっかけに移住されてきた方との1枚

FSの魅力は単なる学生の観光では出会えない、地域の方々と関われることだと思います。地域の魅力だけでなく、課題についても直接話を伺うことができました。また、1年を通して同じ地域に関わることで、その土地や人々への愛着も生まれました。

FSは3月に終了しましたが、6月初旬には個人的に再び北栄町を訪れました。今回はサークル仲間と一緒に訪問し、FSでお世話になった皆さんと再会できました。活動期間が終わっても「また会いに行きたい」と思える人とのつながりができたことは、私にとって何よりの財産です。

コナンが好きだからこそ、もっと多くの人に北栄町の魅力を知ってほしいと思っています。コナンをきっかけに訪れた人が、地域の人々や暮らしにも目を向け、北栄町との新たな関係を築いてくれたら嬉しいです。

●メンバーはほかに稲葉佑太(文学部4年)、李晶晶(総合文化研究科修了)、植村眞乃(教育学研究科修士2年)

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インタープリターズ・バイブル第227回

総合文化研究科 准教授
科学技術コミュニケーション部門
豊田太郎

TRPG、LARP、科学技術コミュニケーション

私が科学技術コミュニケーション部門(前身の科学技術インタープリター養成部門)へ参加して10年になる。この間、プログラム生の修了論文を通じて、様々なコミュニケーション様式に出会うことができた。アンケート、インタビュー、サイエンスカフェ、ワークショップ、コラム、映画、落語、動画配信など、多様な工夫を凝らして実践した修了生の情熱と活動量には脱帽した。

私が最近体験したコミュニケーション様式は、Live Action Role-Playing(LARP)である。初めてこれを耳にした時、高校生のときに友人たちと嗜んだTabletop Role-Playing Game(TRPG)を思い浮かべた。TRPGは、テーブルに着席して、さいころとペンをもって登場人物に扮して物語を進行させる対話型のゲームである。LARPは、身なりさえも登場人物になりきり、現実世界で行動するライブ型の遊びである。私が体験したのは、SFを題材としたLARPであった。舞台は2055年で、ある企業では研究職の昇任条件としてモラルエンハンスメントという頭脳改造施術が新たに追加されている。その昇任面接を行う、という設定の物語だった。科学ジャーナリストの森旭彦氏が考案したもので、研究者仲間とともにオンラインで参加し、面接官や応募者に扮して大変盛り上がった。具体的な内容は森氏の文献を参照していただきたい

このLARPがコミュニケーション様式として優れていると感じたのは、登場人物に扮することで、自身の立場や背景に縛られることなく発言や反応ができ、提示された課題をもとに展開する物語を、複眼的に捉えながら行動できる点であった。もちろん森氏が、参加者がそのように行動できるオンライン環境を配慮し十分に準備されたことは言うまでもない。そして、物語がスムーズに展開されるには、ファシリテータのみならず、対話の緊張も緩和も楽しめる参加者の心のあそびが不可欠だった。いつ誰に研究成果を伝えるべきかを考えている私には、この体験は大きな収穫だった。

A. Mori, Applying LARP to Explore ELSI in an Emerging Field of Science, Its Challenges, and Opportunities. S. Murata et al. (eds.), Molecular Robotics II , Springer, 2026, pp.301-316.

科学技術インタープリター養成プログラム

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ききんの「き」 寄附でつくる東大の未来第81回

ディベロップメントオフィス
アソシエイトディレクター
中村英梨乃

想いをかたちに、未来へつなぐ遺贈寄付

東京大学の安田講堂などが表紙にデザインされた、広報・案内用のパンフレットや冊子の数々
遺贈資料もご用意しています。

2027年に創立150周年を迎える東京大学は、これまで多くの方々の支えによって発展してまいりました。その支援の形の一つとして増加傾向にあるのが「遺贈寄付」です。遺贈寄付とは、遺言によって財産の一部または全部を寄付する仕組みです。東京大学への遺贈寄付には、母校への感謝や学術研究の発展への期待など、それぞれの人生で育まれたご自身の価値観や願いを未来へつないでいこうと大切な想いが込められています。私たちの役割は、その想いを受け止め、次の150年へと橋渡しすることです。

遺贈寄付には制度上の特徴として、税制上の優遇措置を受けられることがあります。実際にご相談をいただく中で、「ご家族への相続と大学への寄付を両立したい」「寄付をした場合の税務上の取扱いについて確認したい」というお声をいただくことがあります。遺言書の作成にあたっては、財産の種類が多岐にわたる場合や、ご家族・ご親族との調整が必要な場合、また相続や税務に関する確認が必要な場合など、状況に応じて寄付者ご本人より税理士、弁護士、信託銀行等の専門家へご相談いただくことがあります。私たちは、そのご相談内容も踏まえながら専門家と連携し、ご本人の意思を尊重しつつ、ご家族にも安心していただける形で遺贈寄付の実現をお手伝いしております。

150周年を迎え、これまで支えてくださった皆さまへの感謝をあらためて深くしています。寄付者お一人おひとりの想いに寄り添い、そのご厚意を新たな知の創造と次代の人材育成へつなげていくことが、私たちの使命であり大切な責任だと考えています。

この夏、ご家族が集まる機会に、ご自身の想いや財産をどのように未来へつないでいきたいかについて、話し合ってみてはいかがでしょうか。遺贈寄付も、その想いを新たな150年へとつなぐ選択肢の一つとして知っていただければ幸いです。

ご相談やご質問がございましたら、本部棟7階までお気軽にお立ち寄りください。ミニパンフレットもご用意しております。部局からのお問い合わせもこちらまで。

遺贈寄付紹介ページ
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