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第77回

教養教育の現場から リベラル・アーツの風

創立以来、東京大学が全学をあげて推進してきたリベラル・アーツ教育。その実践を担う現場では、いま、次々に新しい取組みが始まっています。この隔月連載のコラムでは、本学の構成員に知っておいてほしい教養教育の最前線の姿を、現場にいる推進者の皆さんへの取材でお届けします。

日本と中国の学生が組になって互いの現場を体感

/LAP(リベラルアーツ・プログラム)の文化研修プログラム「敦煌」「深思北京」

国際連携部門 白 佐立,朱 芸綺
国際連携部門
白 佐立
特任准教授
朱 芸綺
特任助教

20年来の交流あっての新研修

白 昨年度、教養教育の新たな取り組みとして文化研修プログラム「敦煌」を実施しました。今回は専門性の高さから東洋文化研究所の塚本麿充先生(中国美術史)にもご協力いただき、美術史を専攻する学生にも公募を行いました。敦煌は極めて深い歴史を持つ地ですが、この研修の面白さは専門を問わず、現代の観光開発や文化財保護といった社会課題の現場を多角的に体験できる点にあります。

南京大学は以前から敦煌研修を実施していましたが、よりグローバルに発展させたいという狙いがあり、本学とのコラボレーションが実現しました。双方間で築いてきた20年に及ぶ地道な取り組みと深い信頼関係があったからこそ、今回のような充実した国際研修が実現したのだと感じています。

朱 もう一つの柱である交流プログラム「深思北京」も、国際情勢の変化を見据えながら、より実践的な対話の場へとアップデートを重ねています。中国人民大学(RUC)との連携のもと、互いに異なる背景を持つ若者同士が同じ問題意識を持って深く向き合える工夫を取り入れました。実地体験と丁寧な議論を組み合わせることで、固定観念や表面的なイメージを削ぎ落とし、等身大の言葉で理解し合える体験を生み出しています。

白 どちらのプログラムでも大切にしているのは「現場で体感すること」です。自分から足を運ばなければ感じ取れないことが確実にありますから。時にはぶつかり、喧嘩をして初めて打ち解けるような泥臭いプロセスも重要ですが、現代の学生はそもそもぶつかることすら避けがちです。だからこそ、自分の世界を少しずつ広げられるような「きっかけ」が必要です。もちろん、これは私たちだけの力では成り立ちません。現地でサポートしてくださる方々の深い協力や信頼関係があって初めて実現できることです。

まずは事実を知ることから

よく「相手の立場に立って理解する」と言いますが、そもそも、他者を完全に「わかる」ことは不可能です。安易に「理解した」と言ってしまうのが一番危険で、「わからないけれど、少しでも近づきたい」という姿勢を持ち続けること。理解することよりも、まず事実を「知る」こと、そして「そこにそういう状況や思いがある」とそのまま受け入れることが重要なのだと思います。

朱 価値観がすべて一致する必要はありません。最近はよく共生という言葉が使われますが、単に同じ空間にいるだけでなく、中国語でいう「共事(共に事を成す)」という感覚がしっくりきます。相手を完全に理解してから動くのではなく、共にプロジェクトやフィールドワークを進める過程で互いの理解が更新されていく。そうした「共事」から生まれる学びを、これからも大切にしていきたいですね。

白 研修が終わったからといって、対話や関係性を完結させてしまわないでほしい。実際、プログラム終了後も参加者同士の交流は長く続いていて、中にはそこから結婚に至った学生もいるほどです。現場で得た違和感や気づきを携え、自分自身や他者との関係の中でずっと問いかけ、考え続けてほしい。その姿勢こそが、これからの時代を生きる学生たちにとっての真の学びに繋がっていくはずです。

『敦煌 Dunhuang』の表紙で、黄色の背景に大きく「敦煌」と表記されている
2025年8月に南京大学・厦門大学と共同で実施した文化研修プログラムの報告集『敦煌 Dunhuang』。
本学の参加者5名による見聞記と3大学の学生の写真から構成されています。
研修の様子を伝えるLAP、InstagramのQRコード
研修の様子を伝えるLAPのInstagram
①団地の広場で、棒を持った子どもたちと一緒に伝統民俗芸能の練習を体験する学生の様子
②夜のキャンパスで、照明に照らされた大きな掲示板に注目する学生
③中国伝統の緑瓦の回廊を背景に、住民と学生が笑顔で交流している
④キャンパスの芝生広場で、学生たちが円になって座り、研修活動で気づいたポイントを討論している
「深思北京」プログラムでは東大とRUCの学生ペア6組が各々の都市やキャンパスを歩いて「写ルンです」で気になる日常を記録し、意見を交換しました。❶団地で伝統民俗芸能を練習する子どもに遭遇し、体験させてもらう学生。❷キャンパスの掲示板に注目する学生。❸早朝に地域住民が行う広場ダンスに出くわし、学生たちも参加。❹活動で気づいたポイントをキャンパスの芝生で討論。

教養教育高度化機構(内線:44247)KOMEX

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UTokyo Brand Studio 実験中!第8回

工学系研究科博士課程3年山田江里子

作りながら考える──ブランドスタジオでの1年

もともと、心を動かされた瞬間を切り取るのが好きで、写真や文章といった創作活動をするようになりました。それがきっかけで、サークルの広報担当としてSNS運用や動画・写真撮影に携わるようになり、その後も学科の学園祭展示や駒場生向けの講演、学部広報や中高生向けイベント、動画・冊子制作、女子学生向けアウトリーチなど、学生の立場で大学のPRに関わってきました。活動を通して、部局広報では扱いにくいテーマや大学全体を横断する企画にも関心を持つようになり、昨年度からブランドスタジオに参加しています。

ブランドスタジオは、いわゆる講義のような「学ぶ場所」というより、「作る場所」でした。大学公式Instagramの卒業式・入学式リール動画の撮影・編集や、学園祭・サークル紹介投稿の制作、『学内広報』のインタビュー撮影などを担当したほか、グッズ企画のアイデア出しやブランディング会議への同席、学生スタッフの運営にも関わりました。

活動を通して感じるのは、学生が参加する価値は制作技術だけではないということです。駒場生時代から博士課程までの9年間の学生生活から生まれる視点は、自分にしか持てません。だからこそ、「自分だから出せるアイデアは何だろう」と考えながら活動しています。好きが高じて執筆した長文キャンパス紹介ブログや、息抜きに描きためた研究生活4コマ漫画、大学周辺のグルメ情報など、趣味で続けてきたことが活動に活きる場面も多くあり、学生有志による五月祭企画では念願だったキャンパス紹介冊子を制作しました。

ブランドスタジオでの活動は、仮説を立て、実験し、振り返りながら前に進む研究活動にも少し似ています。個性豊かな学生スタッフや職員の方々と協力しながらの試行錯誤こそが、この1年で得た最も大きな学びでした。9月からは第二期生も加わります。これからも自分なりの視点を大切にしながら、のびのびと活動を続けていきたいと思います。

「入学おめでとう」の飾り看板を掲げているイチ公とカメラを下げてサムズアップでポーズを取る山田さん
入学式でInstagram撮影の合間にイチ公と記念写真
特集記事の①ページ。競技トラック上でガッツポーズをするパラ陸上選手の撮影写真を真ん中に周囲に記事が掲載されている
本誌1609号の特集記事ではパラ陸上の学生アスリートを撮影
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#We Change Now

第21回
ジェンダー・エクイティ推進オフィス通信

「Tokyo Pride 2026」にてIncluDEブースを出展

2026年6月6日(土)・7日(日)の2日間、代々木公園イベント広場で開催された「Tokyo Pride 2026」に、東京大学多様性包摂共創センター(IncluDE)として初めてブースを出展いたしました。

Tokyo Prideは、SOGIE(性的指向・性自認および性表現)の多様性への理解促進と、LGBTQ+の権利擁護を目指して毎年開催されている大型イベントです。今回の出展では、IncluDEの組織や取り組みの発信に加え、他大学とのネットワーク構築や、学外の皆さまとの交流を深めることを目的としました。

当日は、IncluDE設立の背景や組織体制(各オフィスの役割・連携)をはじめ、SOGIE多様性に関するイベント・研修実績、指導・助言プロジェクトチームの紹介パネルを展示しました。さらに、IncluDE関係教員によるジェンダー関連の著書や講義資料、メッセージも併せて紹介しました。

初出展となった今回は、在学生や卒業生をはじめ、2日間で200名を超える方々にお立ち寄りいただきました。来場者からは「センターの存在を初めて知った」「学生時代にできてほしかった」といった声のほか、「『性的指向と性自認の多様性に関する学生のための行動ガイドライン』が素晴らしい」「今後のイベントに参加したい」「さらなる発信に期待している」といった温かいご意見や応援の言葉を数多くいただきました。

IncluDEの取り組みを発信するだけに留まらず、学内外の多くの方々と直接言葉を交わし、新たな繋がりを築く大変有意義な場となりました。

本取組は、東京大学が2022年度より行っている「UTokyo男女+協働改革#WeChange」事業におけるDEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)に関する意識啓発の一環としても実施しています。今後も、本学におけるダイバーシティ&インクルージョンのさらなる推進を目指し、継続して取り組んでまいります。

(IncluDE DEI共創推進戦略室 特任助教 金 智慧)

ブース内で笑顔でピースサインをする3人のスタッフと、周囲に展示されたパネルやパンフレットの様子
「Tokyo Pride 2026」のIncluDEブース
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ワタシのオシゴト RELAY COLUMN第244回

病院管理課管理総括チーム
主任
尾花道子

伝票の山からペーパーレスへ!

尾花道子
管理総括での業務風景

病院の魅力は、日本最高水準の医療・研究・教育が集まる大学病院で、多種多様な業務に携われることです。

私が所属する管理総括では、会計監査に関する業務を担当し、会計伝票の確認や請求書発行、入金処理などを行っています。特に年度末は多くの伝票が集中し、目の前に積み上がった伝票の山に圧倒されることもあります。しかし、日々の業務を進めるうちにその山はなくなり、また新たな山が現れます。そんな慌ただしい毎日も、この仕事ならではのやりがいの一つです。伝票の山を見るたびに「今年も春が来たな」と感じるのは、管理総括ならではかもしれません。忙しい時期もチームや他課の皆さんと協力して乗り越えることで、一体感や達成感を味わえることが大きな魅力です。

今後は新システム導入によるペーパーレス化が進む予定ですが、新たな業務環境への変化も楽しみにしています。

オフィスにて、管理総括のメンバーである4人の男女が並んで笑顔で立つ集合写真
管理総括のメンバー
得意ワザ:
ダブルチェック
自分の性格:
コツコツ取り組む性格です
次回執筆者のご指名:
池田理紗子さん
次回執筆者との関係:
世代を超えた同期
次回執筆者の紹介:
笑顔と優しさが魅力的な方です!
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専門知と地域をつなぐ架け橋に FSレポート!

第45回
本部社会連携推進課
体験活動推進チーム
西村玲菜

ホームカミングデイは「FSマルシェ」に!

この「FSレポート!」では、本学学生を対象とした正課外プログラムであるフィールドスタディ型政策協働プログラムについて、参加学生が各地域での活動内容を紹介しています。これまで日本各地での活動を紹介してきましたが、「そもそもFSとは…?」と思っていた方向けに、プログラムの概要について改めてご説明します。

活動報告会での集合写真
昨年度の活動報告会の様子

フィールドスタディ型政策協働プログラム、通称FSは、多様な関係者と協働し、社会的課題に果敢にチャレンジするリーダー人材を育成することを目的として、2017年度に開設されました。学生はチームを組んで、地域から提示された課題に対して、事前調査・現地活動・事後調査を通じて、解決に向けた道筋提案を行います。プログラム開始から10年という節目を迎える今年度は、過去最多の1都17県にご協力をいただいています。この「FSレポート!」では、現地活動の内容について触れられていることが多いですが、学生たちは自治体担当者と定期的にオンラインミーティングを行ったり、学内リソースを活用して調査を行ったりと、約10か月間、地域にじっくり向き合い、課題解決に向けて取り組んでいます。

「東大FS」の青い法被を着た学生たちが、蜂蜜や活動報告集などをテントブースの前で販売・紹介している様子
昨年度の「FSマルシェ」の様子

10月17日(土)に開催が予定されている、第25回東京大学ホームカミングデイでは「FSマルシェ」として、テント出店を予定しています。当日は各チームの学生が中心となって、活動内容の紹介や特産品の販売などを行います。テント出店は、昨年度に引き続き今年度が2度目となりますが、昨年度のおよそ3倍となる12チームが参加する予定です。学生たちが地域の方々と連携しながら、当日に向けて準備を進めていますので、多くの方に足を運んでいただけたら嬉しいです。ホームカミングデイ当日は、ぜひ「FSマルシェ」にお越しください!皆さまのご来場を心よりお待ちしております。

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インタープリターズ・バイブル第229回

理学系研究科准教授
科学技術コミュニケーション部門
鳥居寛之

科学コミュニケーションとリスクコミュニケーション

科学者を目指す理系の若者は多い。私もかつて、そうした少年の一人だった。一方で、科学の楽しさを人に伝えることが好きで、科学コミュニケーターに憧れる若者も、数はずっと少ないが、一定数存在する。学校や科学館などで、子供向けの実験教室や楽しいサイエンスショーを行う大学サークルも近年活躍している。

しかし、リスクコミュニケーションとなると話が違ってくる。楽しいばかりが科学ではない。時には科学技術の負の側面も含めて、リスク情報を正確に伝えるシビアな情報伝達が社会には必要となる。感染症のパンデミック、ワクチンの効能と副反応、化学物質や食品の安全、そして地球温暖化で激甚化する気象災害や頻発する地震。身の回りにさまざまな危険があふれる世の中において、潜在的な危険性(ハザード)とそれが起こる確率を掛け合わせた「リスク」を正確に説明することは、非常に荷が重い作業である。

そのため、人命に関わりうるリスク伝達に対して、楽しい科学活動のようには気楽に取り組めないと尻込みするコミュニケーターは少なくない。普段からの十分なリスクコミュニケーションが望まれるなかで、事故などのクライシス時にはなおのこと、緊急時対応は専門外であるとして、広報担当者や科学者自身が情報発信を躊躇するケースも見られる。

社会に誰がどう発信するかも重要である。福島原発事故の後には、放射線の人体影響をめぐって専門家たちの見解が大きく乖離したように映り、多くの国民が「何を信じていいか分からない」という状況に陥った。政治と科学との関係も見直さないといけないが、事故直後に枝野官房長官が発した「直ちに影響はない」というコメントは、国民に安心を与えるどころか「直ちではなく後になって影響が出るのではないか」といった不安を余計に掻き立ててしまった。

一方でコロナ禍においては、会見の席で政治家の傍に立って自ら見解を語る感染症対策分科会の尾身会長の姿が注目された。英国の科学技術顧問のようなこのスタイルには説得力があり、科学者が団結してリスク評価をしている様子もよく伝わったが、一方で、経済活動とのバランスなど、本来政治家が決めるべきことまで何でも専門家が決めているとの印象を与えてしまったと、尾身氏は当時を振り返る。

科学が大きな変革をもたらす一方でブラックボックス化した技術が複雑なリスクをもたらす社会にあって、科学と社会の架け橋となるインタープリターに求められる役割は幅広く、そして重要になっている。

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HCD編 ききんの「き」 寄付でつくる東大の未来第83回

社会連携部
ディベロップメント課副課長
宮本威信

より開かれたオール東大の祭典へ

「みんなで行こう!銀杏祭 東京大学ホームカミングデイ2026」の告知バナー。開催日は10月17日(土)、会場は本郷キャンパス。安田講堂前に集まる大勢の人々の写真と、右上にはHPへの案内QRコードが配置されている

毎年10月第3土曜日に開催しているホームカミングデイ。今年度は10月17日(土)に開催します。2002年の初開催から四半世紀、記念すべき25回目を迎えます。

ホームカミングデイは、本学の最大の理解者である卒業生を母校にお迎えする、年に一度の祭典です。ご友人や恩師と旧交を温めながら、母校の「今」を見て、知っていただく機会として開催してきました。近年は教職員や在学生、近隣の皆さまにも広くご参加いただいています。昨年度からは「銀杏祭」の愛称を冠し、より開かれた「オール東大」のイベントを目指し、ディベロップメントオフィスが一丸となって準備を進めています。今年度もキャンパス各所で、多彩な企画を実施します。

安田講堂では、卒業後10~60周年の節目を迎える卒業生の周年祝賀式典に加え、150周年記念事業イベントや寄付者銘板見学会を開催します。15時30分からは講堂前広場で、応援部のリードのもと、東大の歌「ただ一つ」を歌います。

銀杏並木フェスタでは、東大蔵元会による利き酒をはじめ、同窓会団体による出展、運動会所属部の体験型企画、近隣商店による飲食等販売、学生主催の企画などが並びます。伊藤謝恩ホールの「赤門音楽祭」では、音楽系団体同窓会による管弦楽演奏・合唱や本郷小学校の合唱団が出演。国の名勝・懐徳館庭園も当日に限り一般公開します。この他、学部・研究科等主催の講演会、公開講座、シンポジウム、ワークショップ、東大落語会寄席など、本学ならではの企画が目白押しです。

さらに、今年度限定で、「ひらけ!赤門プロジェクト」に一定額以上の一括寄付をいただいた方を対象とした「赤門瓦記名会」を開催します。

多くの企画参加エントリーが寄せられおり、昨年度以上の参加者が見込まれます。是非、お誘い合わせのうえ、本郷キャンパスまで足をお運びください(一部企画は駒場Ⅰキャンパスで開催)。プログラムの詳細は特設Webサイトをご覧ください。