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スカイブルーの表紙

書籍名

新基本民法5 契約編 各種契約の法

著者名

大村 敦志

判型など

262ページ、A5判、並製カバー付

言語

日本語

発行年月日

2016年7月

ISBN コード

978-4-641-13742-4

出版社

有斐閣

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新基本民法5 契約編

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『新基本民法』シリーズは、2001年から2004年にかけて初版が公刊された『基本民法』シリーズを引き継ぐものである。本シリーズの目的は、法学部 (ないし法科大学院1年次) における「法学習者の共通教養としての民法」の学習を促すことにある。ここでいう「共通教養」とは具体的には何であろうか。私は、「実定民法の体系的理解」であると考えている。それは、民法の規範の全体像を一定の精度で把握し、それが内包する考え方に共感するということである。別の言い方をするならば、学習者が民法の規範を「構造化」し「内面化」するのを援助することが、本シリーズの任務である。以上は旧シリーズと同様である。
 
旧シリーズの刊行終了から新シリーズの刊行開始までの10年間には、いろいろなことがあったが、とりわけ、法科大学院の発足と民法の全面改正への着手が大きな出来事であった。当初は活気を見せていた法科大学院にも、司法試験合格率の見かけ上の低下に伴って受験指向の強い学生が増えてきたと言われる。それでも、基本を理解することの必要性は依然として変わらない。民法の改正がこの先どのように進んで行くのかどうかはわからない。とはいえ、変化していく民法の姿をその骨格において把握することはますます重要になるだろう。
 
もっとも、旧シリーズが民法典の前3編 (総則・物権・債権) を対象とする3巻本であったのに対して、新シリーズにおいては、東京大学法学部・法科大学院以外での使用の便宜も考えて既刊の3巻を6冊に分けるとともに、親族・相続を対象とする2冊を新たに加えた。家族編・相続編以外は、旧シリーズを再編したものであるが、「債権法改正」と呼ばれる財産法部分の大改正 (改正法は2017年6月に公布され、3年以内に施行の予定) への対応を図っている。
 
本書 (契約編) は、民法典の編成に即して言えば、「第3編債権」のうちの「第2章契約」を対象としているが、本書はこの部分を「各種契約の法」として把握している。従来、この部分は「契約法」あるいは「契約総則・各則」と呼ばれてきたが、実質的な意味での「契約法」は、この部分を超えて債権総則・民法総則に及んでいる。そこで本書では、「契約法」というミスリーディングな呼称を避ける一方で、契約類型に着目してこの部分を理解するように努めている。
 
本書 (契約編) においては、「売買」(第1章) と「その他の契約」(第2章~第5章) という対比を中心に据え、契約総則に属する規定の多くは「売買」と関係づけて説明している。各種契約のうちで最重要の売買につきまず理解をし、これを参照軸としてその他の契約について学習するのがよいと考えたためである。民法典の編成とは異なる編成であるが、六法を片手に本書を読み進めることによって、より立体的な学習ができるはずである。
 

(紹介文執筆者: 教授 大村 敦志 / 2017)

本の目次

総 論 各種の契約
序 章 契約の成立
第1章 財貨移転型の契約:売買
第2章 財貨非移転型の契約
第3章 組織型の契約:組合など
第4章 無償型の契約:消費貸借・贈与など
第5章 その他の契約
補 論 類型思考と法
 

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