東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

オレンジ色の表紙

書籍名

アメリカ法ベーシックス 6 アメリカ民事手続法 <第3版>

著者名

浅香 吉幹

判型など

226ページ、A5判、上製

言語

日本語

発行年月日

2016年8月

ISBN コード

978-4-335-30380-7

出版社

弘文堂

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

アメリカ民事手続法 <第3版>

英語版ページ指定

英語ページを見る

日本法をいくらか学んだ日本の学生が初めてアメリカ法に接したとき、法へのアプローチが違っていて、普通と思い込んでいた日本法の概念が通用しないことに当惑する。アメリカの民事訴訟法はアメリカにおいても、アメリカ法の基本的構造を顕著に表すものとして、アメリカのロー・スクールでは1年次の必修科目とされている。
 
第1に、アメリカは連邦制を採っている。裁判所も連邦裁判所と各州ごとの州裁判所とがあり、訴訟をどの裁判所に提起できるかという管轄権の問題があり、さらにその結果、適用される法も変わってくる。すなわち弁護士としては、訴訟を提起する裁判所によって得られる結果の見通しも変わってくるのである。そもそも民事訴訟法も、連邦と各州で、大なり小なり異なっている。
 
第2に、アメリカでは刑事訴訟のみならず民事訴訟でも陪審制が採られている。一般市民から選ばれた陪審員が合議して事実認定を行うのである。ただし、陪審制はコモン・ローの制度であるため、エクイティの事件では用いられない。コモン・ローとエクイティとはイングランド法で歴史的に発展してきた2種類の法体系であり、もともとは別個の裁判所によって形成されてきた。そのため,英米いずれでも単一の裁判所で両方が用いられるようになったとはいえ、現代の視点から区分を合理的に説明することは困難であり、無意味ですらある。しかし事実認定を陪審が行うか裁判官が行うかは、この区分によっている。
 
第3に、判決は陪審ないし裁判官による正式審理 (トライアル) に基づいて下されるが、トライアルを準備するトライアル前手続が発達している。トライアル前手続とトライアルは明確に区分され、トライアル前手続を時間をかけて行った後に、トライアルが判決まで間断なく集中審理で (通常は1週間以内で) 行われる。とくにトライアル前手続の開示 (ディスカヴァリ) は、原告被告双方が持っている証拠や情報をあらかじめ提示しあい、双方で情報を共有することで、トライアルの集中審理が不意打ちの証拠提出で中断することのないようにするとともに、双方が自分側の主張の強み弱みを正当に評価できるようになることから和解が促進される。アメリカ社会は訴訟好きとされ、実際に提起される民事訴訟件数は多いが、ほとんどの訴訟はトライアル前手続の段階で終結し、トライアルまで進んで判決に至るのは5パーセントに満たない。
 
本書では、アメリカ民事手続法を概観するとともに、日本の法学生や法実務家を念頭に、日本法と異なる概念が法文、判例、そして弁護士実務をどのように彩っているか理解してもらおうとするものである。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 浅香 吉幹 / 2017)

本の目次

序章  総論
  第1節  アメリカ民事訴訟法の基本構造
  第2節  法源
第1章  管轄
  第1節  事物管轄権
  第2節  領域管轄権、裁判地、送達手続
第2章  適用法
  第1節  抵触法
  第2節  連邦裁判所の適用する法
第3章  訴答
  第1節  訴答の目的
  第2節  連邦民事訴訟規則上の訴答
第4章  開示
  第1節  機能
  第2節  裁判所による命令と制裁
  第3節  開示の方法
  第4節  開示の範囲
第5章  トライアル前手続
  第1節  開示手続の濫用状況
  第2節  開示制限
  第3節  手続運営のための会議と和解促進
  第4節  仮処分
  第5節  サマリ・ジャッジメント
第6章  トライアル
  第1節  陪審制
  第2節  トライアル手続
  第3節  証拠法概論
  第4節  評決
第7章  評決後の手続
  第1節  法律問題としての判決
  第2節  再審理
第8章  判決効
  第1節  執行力
  第2節  遮断効
第9章  上訴
  第1節  上訴の目的
  第2節  終局判決原則
  第3節  審査手続
  第4節  審査基準
  第5節  最上級裁判所への裁量上訴
終章  アメリカ民事訴訟法をさらに深く学ぶ方へ
 

このページを読んだ人は、こんなページも見ています