東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

緑の模様が入ったカバー

書籍名

Pro-environmental Behaviors

著者名

Kiyo KURISU

判型など

165ページ

言語

英語

発行年月日

2015年

ISBN コード

978-4-431-55832-3

出版社

Springer

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学内図書館貸出状況(OPAC)

Pro-environmental Behaviors

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環境問題は人類が取り組むべき共通の課題であり、私たちは常に環境に配慮した行動を取ることで、環境負荷削減を進めていく必要があります。個人が環境意識を高めたり環境配慮型の行動を取る努力をせずとも、低環境負荷型の機器や設備を開発して、自動的に環境負荷を減らせば良いという人もいるかもしれません。もちろん環境にやさしい機器や設備を開発することも重要です。しかし、私たちの活動すべてが「地球」に何らかの環境影響を与えていることを常に心に留めておく必要があります。人間が他の生物と「地球」を共有している以上、環境意識をもって行動することは私達の責任といえるでしょう。
 
近年、環境に配慮した行動 (Pro-environmental Behaviors: PEBs) に関する学術研究は増えてきています。社会心理、教育、環境工学などを含んだ学際的研究も数多く見られます。しかし、各アプローチは限定的で、総合的視点には欠けており、PEBsに関する環境工学分野と社会心理学分野の双方をカバーしたような良い教科書はなかなか見つかりません。本書では、PEBsはどのように定義され、また分類されるのか (第1章) から始まり、包括的な視点からPEBsに関する知見を整理して紹介しています。1章で提供している200のPEBsリストも、研究者や学生がより多くのPEBをターゲットにしたいと考えた場合に役立つことと思います。
 
第2章と3章ではPEBsに影響を与える要因について取り上げています。2章ではPEBsを実施する上での障害と促進因子について、3章では、様々な研究者によって提案されてきたPEBsを説明する心理モデルについて整理して紹介しています。第4章では、PEBsや関連する因子を調査するにあたり、調査票設計の基本的な考え方や、質問方法、参考となる環境関連の尺度について説明しています。
 
本書は、心理的側面だけでなく,ライフサイクルアセスメント (Life Cycle Assessment: LCA) といった工学的アプローチについても取り上げています。特に、第5章では、LCAの枠組みの中で各PEBに伴うライフサイクルでの環境負荷をどのように算定すれば良いかを説明しています。その上で、第6章では、PEBs促進に向けた方策に焦点をあて、理論的なモデルや環境負荷算定の結果をどう用いてゆけば良いかを、ケーススタディの紹介と共に掲載しています。
 
本書は学生や研究者、実務家等がPEBsの概略を包括的に学ぶのに適しています。本書は実用的な学術ツールと深い基礎的な概念を紹介しており、新しくPEBを学ぶ人々にとって優れたガイドになることと思います。
 

(紹介文執筆者: 工学系研究科 准教授 栗栖 聖 / 2018)

本の目次

1. What Are Pro-Environmental Behaviors (PEBs)?
2. Influential Factors on PEBs
3. Behavior Model Development for Understanding PEBs
4. How to Survey PEBs
5. Application of Life Cycle Assessment (LCA) to Assess Actual Environmental Burdens Driven by PEBs
6. Trials to Foster PEBs

関連情報

書評:
S.M.C.B. Karalliyadda , Book Review (2018) Science of The Total Environment, STOTEN 29025,
doi:10.1016/j.scitotenv.2018.10.122
 

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