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書籍名

TOYO BUNKO RESEARCH LIBRARY 17 Vestiges of the Razavi Shrine, Āthār al-Rażavīya a Catalogue of Endowments and Deeds to the Shrine of Imam Riza in Mashhad

著者名

Tomoko Morikawa, Christoph Werner

言語

英語

発行年月日

2017年

ISBN コード

9784809702884

出版社

The Toyo Bunko

出版社URL

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学内図書館貸出状況(OPAC)

Vestiges of the Razavi Shrine, Āthār al-Rażavīya

その他

(ペルシア語併載)

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本書は、イラン最大の巡礼地であるレザー廟 (Astan Qods Razavi) に寄進された財産目録の文書集 (Vestiges of the Razavi Shrine) の校訂および解題・研究からなる。
 
レザー廟は、イラン北東部に位置するイラン第二の都市マシュハドの中心にあり、シーア派の第8代イマーム、アリー・レザー (818年没) が眠っている。マシュハドは、アラビア語で「殉教地」という意味であるが、これは、アリー・レザーがこの地でアッバース朝のカリフによって毒殺されたと伝えられていることによる。シーア派のイマームたちは、シーア派信徒にとっては「聖人・聖者」に相当する崇敬の対象であり、聖人たるイマームの眠る墓所は、メッカやメディナに次ぐ、信徒たちの巡礼地となっている。
 
イランで、シーア派が優勢となったのは、1501年のサファヴィー朝の成立からである。シーア派政権のサファヴィー朝の多大な庇護のもと、マシュハドは徐々にイラクのカルバラー (第3代イマーム・フサインの殉教地) やナジャフ (初代イマーム・アリーが眠る) をしのぐシーア派聖地として発展を遂げた。巡礼地・崇敬対象としてのレザー廟の地位が上がることに呼応して、レザー廟への宗教的寄進や寄付という社会活動が様々な社会階層の人々に広まり、寄進される土地や物件は聖地マシュハドの周辺からイラン高原やアフガニスタン、アゼルバイジャンにまで及んだ。
 
Āthār al-Rażavīya(『レザーの遺したもの』)は、同聖廟に寄進された不動産を中心とする寄進財産文書のカタログであり、1597年から1900年まで、計170点の寄進文書、売買文書、勅令が収録されている (うち2点は1747年と1856/57年にまとめられた巻物 (tūmār) 形式の寄進財産文書をそのまま転写したものである)。1899年に、当時のレザー廟長官 (および管財人長) の命によって、レザー廟が数百年にわたって所有する寄進物件の整理・確認作業が行われ、そのカタログが翌1900年にĀthār al-Rażavīyaの題名のもと石版出版された。170点のカタログは、それぞれオリジナルの文書から転載された寄進物件の概要がダイジェストにまとめられており、寄進者の名前、年月日、寄進物件の所在地、四囲、寄進財の用途とその金額、管財人、付帯条件などが記載される。これら170点の寄進文書からは、レザー廟が地理的にも社会的にも広く支持を集めていたことが明らかになると同時に、現在では国家財政に匹敵すると言われるほどの資金をもつレザー廟財団が時代とともに規模を拡大していく際のその主たる財政基盤を如実に読み取ることができる。(レザー廟財団は慈善団体であるが、病院、大学、図書館、種々の工場、スーパーマーケット、保険会社等を経営する多角的企業でもある。その財源の大半は、今日でも寄進である。)
 
このように、Āthār al-Rażavīyaは非常に重要かつ第一級の歴史資料であるにもかかわらず、本史料に関する包括的な研究はこれまでまったくなされてこなかった。それはひとえに、本書に‘手書きで’記載される地名や人名が判定しがたいことや、さらには物件収益の金額や収量の数字が「スィヤーク (siyāq)」と呼ばれる独特の会計文字で記されているため、その判読がきわめて難解であることに尽きる。本研究は、クリストフ・ヴェルナー教授 (マールブルク大学、ドイツ) との15年にわたる共同研究の成果であり、スィヤーク数字はもとより、欄外の書き込みに至るまで、ペルシア語・アラビア語のすべてのテキスト校訂を行い、Āthār al-Rażavīyaの史料的価値や同書成立の歴史的背景に関する英語の研究編を付した。世界的にみても学術的価値の高い研究成果であり、英語での出版であることから、イランのみならず、広くかつ長く参照されうる専門書である。
 

(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 准教授 守川 知子 / 2018)

本の目次

Chapter I  The Shrine of Imām Riżā, its Vaqf Endowments and Āthār al-Rażavīya
  1. Mashhad and the Shrine of Imām Riżā
  2. The Role of Vaqf in the Development of the Town and the Āstān-i Quds
  3. Administration of the Shrine and its Endowments
  4. The Catalogue of Endowment Deeds: Āthār al-Rażavīya
    4.1 The Author and his Intentions
    4.2 Structure and Internal Organization
    4.3 Statistical Analysis of Documents included in Āthār al-Rażavīya
  5. Conclusion: Beyond the Turning Point of Āthār al-Rażavīya
 
Chapter II  Technical Notes and Tables
  Technical Notes on the Edition
  The Catalogue of Āthār al-Rażavīya
    1. Documents in their Original Order
    2. Documents in Chronological Order
Bibliography
 
Chapter III  Critical Edition of Āthār al-Rażavīya (Persian Text)
 

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