東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

宇宙のイラスト

書籍名

ブルーバックス 地球は特別な惑星か? 地球外生命に迫る系外惑星の科学

著者名

成田 憲保

判型など

288ページ

言語

日本語

発行年月日

2020年3月18日

ISBN コード

978-4-06-518733-3

出版社

講談社

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

地球は特別な惑星か?

英語版ページ指定

英語ページを見る

広大な宇宙の中で、私たち地球の生命はひとりぼっちなのか? それとも、宇宙には生命が満ち溢れているのか? 皆さんも、夜空の星たちを見上げてふとこんな疑問を持ったことがありませんか? そう遠くない将来、そうした根源的な問いに科学的に答えることができるかもしれないのが、系外惑星 (太陽以外の恒星を公転する惑星) の研究です。
 
系外惑星が初めて発見されたのは、1995年のことです。そして私が初めて系外惑星の研究を知ったのは、物理学科3年の2001年のことでした。その後2002年の物理学科の卒業研究で系外惑星の研究に取り組み始めてから、ずっとこの分野の研究に取り組み、その進展をこの目で見てきました。
 
私が研究を開始した当初は、発見された系外惑星の数はまだ数十個しかなく、それも全て巨大惑星でした。それから20年近くが経ち、今では発見された系外惑星の数は優に四千個を超え、地球くらいの大きさの系外惑星も当たり前のように発見されるようになってきました。そして、恒星からの距離がちょうどよく、地球のように表面に液体の水を保持することができるかもしれない「生命居住可能惑星」も発見されてきました。そしてこれからは、生命を育めるような惑星を探すだけでなく、発見された惑星たちの性質を徹底的に調べていくという研究や、宇宙における生命を考える「アストロバイオロジー」と呼ばれる学際的研究が本格的に行われていく見込みです。
 
このような状況を踏まえて、本書では2019年までに系外惑星についてどんな研究が行われ、どんなことがわかってきたのか、そして2020年代以降にどんな研究が行われる見込みなのかという展望を、主に学生や一般の方を想定して執筆しました。
 
具体的には、第1章から第3章までの第I部では、私たちの太陽系についてと、これまでの系外惑星探査の歴史について。そして、第4章から第6章までの第II部では、系外惑星の主な発見方法と、これまでにどんな惑星たちが発見されたのか、そしてそこからどんなことがわかってきたのかについて。最後に、第7章から第9章までの第3部では、発見された惑星たちをどのようにして詳しく調べるのか、そしてこれからどんな研究が行われようとしているのかを紹介しています。
 
本書では、一般向けの本として難しくならないよう数式は一切使っていません。しかし、宇宙の中で地球がいったいどういう存在なのかを理解するための一般教養書として、そしてこの分野に興味を持ってこれから研究を志すという学生にも良い入門書となることを目指して、内容はかなり詳しくなっています。
 
私は系外惑星の研究が始まって比較的早い時期に大学生となり、観測技術の発展と系外惑星の理解が少しずつ進んでいく過程を最前線で見ることができました。このように新しい研究分野の最前線の現場に学生として立つことができたことは幸せだったと言えるでしょう。しかし、これからさらに面白くなっていく系外惑星の研究の主役となるのは、今学生の皆さんです。本書がこれからの研究の主役となる皆さんにとっての良き入門書となってくれれば幸甚です。

 

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 教授 成田 憲保 / 2020)

本の目次

第 I 部 系外惑星探査小史――太陽系の理解から第二の地球の可能性まで
第1章 私たちのふるさと――天の川銀河、太陽系第三惑星、地球
宇宙の中の太陽系と地球/恒星としての太陽/太陽系の8つの惑星たち/太陽系のその他の天体/太陽系はどうやってできたのか? ― (1) 太陽の誕生/太陽系はどうやってできたのか? ― (2) 惑星たちの誕生
 
第2章 最初の系外惑星が見つかるまで――挑戦、失敗、常識はずれの惑星
系外惑星への挑戦/幻の系外惑星―ピート・ファンデカンプの見たもの/常識にとらわれるな―オットー・シュトルーベの提案/報われなかった先駆者―ゴードン・ウォーカーの挑戦/非常識な惑星―ミシェル・マイヨールとディディエ・ケローの発見
 
第3章 ケプラー計画がもたらした革命――画期的なアイデア、試練、膨大な発見
系外惑星のもうひとつの探し方―ウィリアム・ボラッキーの挑戦/ケプラー計画の試練―打ち上げまでの長い道のり/ふくれあがる系外惑星の発見数―ケプラーが起こした革命/系外惑星の普遍性―そして、「第二の地球」の可能性/ケプラーからTESS、PLATOへ
 
第 II 部 系外惑星探査の現在――探し方の進化と見えてきた世界
第4章 系外惑星の探し方――あの星に惑星はあるか?
多彩な系外惑星の探し方/アストロメトリ法―主星の位置の揺れをとらえる/視線速度法―光のドップラー効果を利用する/視線速度法でわかること/トランジット法―惑星がつくる影を探す/トランジット法でわかること/トランジットする確率/重力レンズ現象とマイクロレンズ現象/マイクロレンズ法―重なる星に惑星を探す/マイクロレンズ法の成功と今後の展望/系外惑星の直接観測はなぜむずかしいか?/直接撮像法―主星を隠して惑星を探す/直接撮像法の特徴/まとめ―各探査法の特徴
 
第5章 系外惑星の多様性――太陽系とは異なる世界
太陽系惑星たち/灼熱の巨大惑星―ホットジュピター/極端な楕円軌道の惑星―エキセントリックプラネット/主星の自転と逆向きに公転する惑星―逆行惑星/主星から遠く離れた大質量の惑星―遠方巨大惑星/連星系の惑星たち/大きな岩石惑星? 小さなガス惑星?―スーパーアースとミニネプチューン/生命を育むかもしれない惑星―ハビタブルプラネット/ハビタブルプラネットの多様性
 
第6章 系外惑星が教えてくれたこと――太陽系は特別か? 地球は特別か?
惑星系形成論の見直し―系外惑星の多様性は説明できるか?/円盤移動モデル―原始惑星系円盤と惑星が相互作用する/惑星散乱モデル―複数の巨大惑星がお互いを弾き飛ばす/古在移動モデル―外側にある傾いた軌道の天体が引き起こす影響を考える/ホットジュピターはどうやってできたのか?/エキセントリックプラネットや逆行惑星はどうやってできたのか?/遠方巨大惑星はどうやってできたのか?/太陽系は特別な存在か?/地球は特別な惑星か?
 
第 III 部 第二の地球、発見前夜――ハビタブルプラネット探査とアストロバイオロジー
第7章 さらなる探査へ――まだ見ぬ惑星たちを求めて
さらなる系外惑星探査の意義/後回しにされてきた赤色矮星/見直された赤色矮星の長所/赤色矮星に特化した地上からのトランジット惑星探査の先駆け: マース/地上観測による赤色矮星まわりのハビタブルプラネットの発見/視線速度法による赤色矮星まわりの系外惑星探査/トランジットサーベイ衛星: TESS/TESSの課題/本物の惑星を見抜くMuSCAT/進化するMuSCAT/2020年代の系外惑星探査
 
第8章 系外惑星大気の調べ方――あの惑星はどんな世界なんだろう?
系外惑星の大気をどう調べるか?/系外惑星大気の調べ方 ― (1) トランジット分光/系外惑星大気の調べ方 ― (2) 二次食分光/系外惑星大気の調べ方 ― (3) 直接撮像分光/系外惑星の大気について/次世代望遠鏡とこれからの観測計画/第二の地球に生命の兆候を探すには
 
第9章 系外惑星とアストロバイオロジー――宇宙に生命の兆候を探す
アストロバイオロジー研究の必要性/ハビタブルプラネットの多様な環境/太陽型星まわりのハビタブルプラネット―地球の場合/赤色矮星まわりのハビタブルプラネット―永遠の昼と永遠の夜の惑星/赤色矮星まわりのハビタブルプラネットに生命は生存可能か?/観測可能な生命の兆候は何か?/それは本当に生命の兆候か?/地球大気の酸素の歴史/非生物的プロセスによる酸素の発生/レッドエッジの波長は地球と同じか?/これからの生命惑星探査とアストロバイオロジー研究への期待
 

関連情報

関連記事:
約26光年先に地球サイズの岩石型系外惑星を東大などが発見 (マイナビ 2021年3月8日)
https://news.mynavi.jp/article/20210308-1788695/

おとめ座の方向で見つかった地球型惑星、大気研究の重要な観測対象となるか (sorae 2021年3月6日)
https://sorae.info/astronomy/20210306-exoplanet.html

東大、大気の詳細調査に適した地球型の系外惑星を発見 (日本経済新聞 2021年3月5日)
https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP606056_U1A300C2000000/
 
著者対談:
「太陽系の近くに生命居住可能惑星はある」 天文学者・成田憲保助教が語る 系外惑星観測の未来とは? 前編1/2 (HORIEMON.COM 2015年11月9日)
https://horiemon.com/talk/39814/
 
「太陽系の近くに生命居住可能惑星はある」 天文学者・成田憲保助教が語る 系外惑星観測の未来とは? 前編2/2 (HORIEMON.COM 2015年11月9日)
https://horiemon.com/talk/39816/
 
「太陽系の近くに 生命居住可能惑星はある」 天文学者・成田憲保助教が語る 系外惑星観測の未来とは? 後編1/2 (HORIEMON.COM 2015年11月9日)
https://horiemon.com/talk/39818/
 
「太陽系の近くに 生命居住可能惑星はある」 天文学者・成田憲保助教が語る 系外惑星観測の未来とは? 後編2/2 (HORIEMON.COM 2015年11月9日)
https://horiemon.com/talk/39821/
 
東京を巡る対談: 成田憲保 (天文学者)×平本正宏 対談 未知なる惑星を求めて (Tekna TOKYO 2015年2月25日)
http://teknatokyo.com/archives/document/%E6%88%90%E7%94%B0%E6%86%B2%E4%BF%9D%EF%BC%88%E5%A4%A9%E6%96%87%E5%AD%A6%E8%80%85%EF%BC%89%C3%97%E5%B9%B3%E6%9C%AC%E6%AD%A3%E5%AE%8F%E3%80%80%E5%AF%BE%E8%AB%87%E3%80%80%E6%9C%AA%E7%9F%A5%E3%81%AA
 
TV出演:
SCIENCE View: Special Episode: Life Beyond Earth - The Search for Habitable Worlds in the Universe  (NHK World  2021年1月6日)
https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/tv/scienceview/20210106/2015249/

コズミック フロント☆NEXT 「密着! プラネット・ハンター 地球外生命探査の最前線」 (NHK 2019年5月16日放送)
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2019096976SA000/
 
書評:
2020年を振り返って、一年間のベスト本 (シミルボン 2020年12月30日)
https://shimirubon.jp/columns/1702652
 
新書こそが教養! Vol.5 【第5回】地球は特別な惑星ではなかった! (光文社新書 2020年11月11日)
https://shinsho.kobunsha.com/n/nbe3f554e1d0b
 
鈴木 建 評 (東京大学教養学部報 620号 2020年7月28日)
https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/about/booklet-gazette/bulletin/620/open/620-03-1.html
 
原智子 評「生命の深い謎 宇宙の広い謎 (星ナビ2020年7月号 「月刊ほんナビ」)
https://www.astroarts.co.jp/hoshinavi/magazine/books/review/hoshinavi202007-j.shtml
 
こだわり天文書評: 金井三男 評 (AstroArts 星ナビ.com 第百四十四回 2020年 5月20日)
https://www.astroarts.co.jp/hoshinavi/magazine/books/individual/4065187338-j.shtml
 
講座:
アストロノミー・パブ11月 (オンライン講座) おうちでアストロノミー・パブ「系外惑星研究の最前線」 (三鷹ネットワーク大学 2020年11月21日)
https://www.mitaka-univ.org/kouza/C2052800
 
Astrobiology Seminar ONLINE 第4回: 成田憲保先生 -Exoplanets & Astrobiology 地球は特別な惑星か? (Astrobiology Club 2020年5月30日)
https://www.youtube.com/watch?v=C0ORE6K1alA
 
イベントスピーカー: 成田憲保 (アカデミーヒルズ 2019年12月)
https://www.academyhills.com/seminar/personal/tqe2it000009axqk.html
 
特別企画! 天文の専門家によるトークイベント「今年は惑星に親しもう! 太陽系外惑星の多様な世界」 (六本木天文クラブ 2018年8月23日)
https://tcv.roppongihills.com/jp/events/1420/

このページを読んだ人は、こんなページも見ています