東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

黒い表紙に白の題字

書籍名

データ・ドリブン・エコノミー デジタルがすべての企業・産業・社会を変革する

著者名

森川 博之

判型など

292ページ、四六判、並製

言語

日本語

発行年月日

2019年4月

ISBN コード

978-4-478-10636-5

出版社

ダイヤモンド社

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データ・ドリブン・エコノミー

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デジタル変革 (DX)、AI (人工知能)、IoT (モノのインターネット)、5G (第五世代携帯電話) などの言葉がメディア上で飛び交っています。そして、これらの分野に関する書籍もあふれています。しかし、多くは技術を深掘りするものだったり、ハウツー本に類するものが多かったりします。
 
いま私たちは、データが経済・社会・産業の変革をもたらすたらしい時代の幕開けに立ち会っています。このような新しい時代に、企業はどのように向き合っていけば良いのか。これを多くの方々にお伝えすることができれば、そして、多くの方々が自分事としてデジタルに向き合っていただければ世の中は必ず良くなるとの想いから本書を記しました。
 
これからの時代では、リアルな世界の「リアルデータ」が主役になります。製造、土木・建設、モビリティ、医療・健康、インフラなど、あらゆる領域でリアルな世界から集めたデータが新たなる価値を生む世界です。
 
我々が生活しているのもリアルな世界ですので、我々の身近なところにもデジタル化できる領域は沢山存在します。このような認識を一人一人が持つことで、デジタルは社会の隅々にまで浸透していきます。
 
四国での古紙回収システムの興味深い取り組み事例を紹介します。スーパー、顧客、古紙回収事業者の三者がウィン・ウィンの関係をつくり上げた事例です。
 
古紙回収事業者は古紙回収ボックスにセンサと無線通信モジュールを取り付け、古紙の量をリアルタイムで量れるようにしました。これにより、いま現在古紙回収ボックスにどれだけの古紙がたまっているかが遠隔からわかり、どのタイミングで回収しに行けばいいかがわかるので、回収コストを三分の一まで抑えることができます。この古紙回収ボックスをスーパーに設置し、顧客が古紙を持ち込むとスーパーのポイントがもらえます。スーパーのポイント分は、古紙回収事業者の回収コストの削減分の一部を還元しています。
 
スーパーは顧客の来店頻度を高めることが期待でき、顧客はポイントをもらえ、古紙回収事業者は無駄な回収作業を減らすことができます。「三方よし」の仕組みを、古紙回収ボックスを少しだけスマート化しただけでつくり上げた好事例です。
 
とても小さいかもしれませんが、新しい価値を創り出しています。このレベルのものであれば、我々の身近なところにもデジタルの可能性が多く存在するかもしれません。我々一人一人が、このような意識でもって少しずつデジタル化を進めていくことで、社会の隅々にまでデジタルが浸透します。
 
経営学者のピーター・ドラッカーの言葉に、「イノベーションに対する最高の賛辞は、「なぜ自分は思いつかなかった」である」というものがあります。言われてみれば当たり前であることに、人間はなかなか気づかないものです。
 
デジタルも実現されてしまえば当たり前のものなのかもしれません。皆さんと一緒に、デジタルの土俵にあがって、将来を深く洞察し、新たな社会や事業の構築につなげていきたいと思っています。
 

(紹介文執筆者: 工学系研究科 教授 森川 博之 / 2021)

本の目次

はじめに データ・ドリブン・エコノミーとは何か

第1章  データ・ドリブン・エコノミーの本質
1. デジタルがあらゆる産業・社会を変革していく
2. データがプラットフォームを構成する
3. ウェブからリアルへの主役交代
4. 付加価値の創出こそデジタル変革の本質

第2章  デジタルがあらゆるビジネスを変革する
1. 企業のデジタル化はどう進展してきたか
2. デジタルが企業に「再定義」を促す
3. 製造業で加速するデジタル変革
4. サービス業はデジタルでどう変わるのか

第3章  デジタルが社会の生産性を飛躍的に高める
1. 社会課題を解決する「社会基盤としてのIT」
2. デジタルが医療・ヘルスケアを変える 000
3. 農業は生産性向上の宝庫 000
4. デジタルは地方再生の切り札となる

第4章  データ・ドリブン・エコノミーで価値を創出する視点
1. 何をデジタル化するかの視点を持つ
2. フットワークの軽い組織をつくる
3. インベンションとイノベーションの違いを認識する
4. 成熟したICTが求める「ストーリー」
5. デジタル化に求められる「デザイン思考」

第5章  デジタル化を進展させるための課題
1. デジタル化を進めるために大事なこと
2. これからの技術面の課題
3. 新しい情報技術といかに向き合うか
おわりに データ・ドリブン・エコノミーは,日本にとって大きなチャンス

関連情報

著者インタビュー:
特別対談「“変革”に挑む」 森川博之さん (東京大学大学院工学系研究科 教授) X 足立正親 (キヤノンマーケティングジャパン株式会社 代表取締役社長) (C magazine 2021年9月1日)
https://cweb.canon.jp/cmag/feature/vol101/p3.html
 
データで見える化し、気付きを得ることが「皆が幸せになるまちづくり」の第一歩 (Digital is Green 2020年7月)
https://digital-is-green.jp/initiative/advisor/morikawa/
 
鼎談:森川博之 (東京大学大学院工学系研究科教授)、平岡昭良 (日本ユニシス代表取締役社長)、福島敦子 (ジャーナリスト)「データ・ドリブン・エコノミー時代」に備える企業経営の在り方 (前編) (BIPROGY TERASU 2020年3月26日)
https://terasu.biprogy.com/article/data-driven_economy1/
 
鼎談:森川博之 (東京大学大学院工学系研究科教授)、平岡昭良 (日本ユニシス代表取締役社長)、福島敦子 (ジャーナリスト)「データ・ドリブン・エコノミー時代」に備える企業経営の在り方 (後編) (BIPROGY TERASU 2020年3月27日)
https://terasu.biprogy.com/article/data-driven_economy2/
 
データ・ドリブン・エコノミー時代を勝ち抜くには、 現場の力を引き出すマネジメントが必要 (Alre VOICE 2019年11月5日)
https://aire-voice.com/interview/5595/
 
関連記事:
デジタルがすべての企業に「事業領域の再定義」を促す (DIAMOND online 2019年4月19日)
https://diamond.jp/articles/-/199061
 
デジタル革命の主役は「ウェブデータ」から「リアルデータ」へ (DIAMOND online 2019年4月11日)
https://diamond.jp/articles/-/198783
 
デジタル革命は「助走期」から「飛翔期」へ。真のデジタル社会はいつ訪れるか? (DIAMOND online 2019年4月8日)
https://diamond.jp/articles/-/198708
 
まもなく到来する「データ・ドリブン・エコノミー」とは何か? (DIAMOND online 2019年4月4日)
https://diamond.jp/articles/-/198554
 
書評:
小林満男 評「学生に薦める本2021年版」 (新潟国際情報大学図書館ホームページ 2021年)
https://cc.nuis.ac.jp/library/resource/book.html/2021/3113.html
 
(短評) データ・ドリブン・エコノミー 森川博之著 (『日本経済新聞』朝刊 2019年5月18日)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO44929270X10C19A5MY7000/
 
イベント:
Smart Data Platform ACTION データ利活用が導くDX (NTTコミュニケーションズ株式会社 2022年3月10日)
https://www.ntt.com/business/services/data-utilization/dxplatform/sdpf/lp/action.html
 
2020年第1回技術セミナー「Society 5.0とDigital Transformation (DX)」 (おかやま次世代産業関連技術研究会 2020年9月30日)
https://www.optic.or.jp/okayama-ssn/event_detail/index/2072html
 
第224回JMAサロン「データ・ドリブン・エコノミー」 (JMAサロン 2019年11月25日)
https://www.jma2-jp.org/event/history/seminar/20191125
 

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