東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

SDGsのマークと、コーヒーのイラスト

書籍名

コーヒーで読み解くSDGs

著者名

Jose. 川島 良彰、 池本 幸生、 山下 加夏

判型など

287ページ、188mm x 128mm

言語

日本語

発行年月日

2021年3月

ISBN コード

978-4-591-16968-1

出版社

ポプラ社

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コーヒーで読み解くSDGs

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SDGsが日本でもようやく浸透してきたようである。SDGsは「Sustainable Development Goals (持続可能な開発目標)」のことであり、2015年9月の国連サミットで採択された。2030年までに達成することを目標に、17のゴールと169のターゲットから成る。日本でのSDGsの活動は日本国内に目が行きがちであるが、本当は地球規模の話であり、世界中と強く結びついた現代ではもっと外国にも目を向けてほしいと思う。
 
コーヒーは南北回帰線に挟まれた「コーヒーベルト」と呼ばれる地域で生産され、そのほとんどが開発途上国であり、その主要な消費国は先進国である。ブラジルが世界第1位のコーヒー輸出国であることは広く知られているとしても、ベトナムがそれに次ぐ世界第2位のコーヒー輸出国であることはあまり知られていない。先進国の消費者はコーヒーの味にうるさいとしても、そのコーヒーがどのように生産されているかについてはほとんど知らないし、関心もない。しかし、実際には大規模なコーヒー農園を切り開くために森林が伐採され、環境が破壊されているかもしれず、またコーヒー農民はコーヒーの国際価格の暴落によって貧困に苦しめられているかもしれない。SDGsが「誰一人取り残さない」というのであれば、私たちはコーヒーを消費するものとして、その生産にも目を向けてほしいと思う。著者の3人はそれぞれ開発途上国のコーヒー農民たちと接し、コーヒーがSDGsの各ゴールと密接に関係していることをよく理解していた。SDGsについて知りたいなら、コーヒーについて知ることはとても良い方法である。このような発想から本書は出来上がっている。
 
本書の構成は、SDGsの17のゴールに合わせ、各章でひとつのゴールを取り上げている。目次を見れば、そのことが分かるだろう。各章それぞれにゴールとターゲットの解説に始まり、生産地での具体的な事例を取り上げている。例えば、第3章の「コーヒーがもたらす健康と福祉」では、タイのドイトゥンコーヒーを事例として取り上げている。タイ北部のゴールデントライアングルと呼ばれる地域は、かつてはアヘンの大産地であった。アヘンの原料となるケシの栽培を止めさせるために、コーヒーが導入され、それが今では東京大学のコミュニケーションセンターでも売られている。著者の一人であるJose川島氏 (「コーヒーハンター」と呼ばれる) はその栽培指導に当たり、国際的に評価される品質まで向上させた人物である。ドイトゥンコーヒーが東大で売られている理由は、売上よりも、自分が飲んでいるコーヒーの産地のことにも関心を持ってもらいたいからである。本書を読んでいただければ、コーヒーを飲むときに、自分が飲もうとしているコーヒーが世界の人々と環境問題にどのようにつながっているかを考えるきっかけになるだろう。本当に美味しいコーヒーとは単に味のことだけではない。

 

(紹介文執筆者: 東洋文化研究所 教授 池本 幸生 / 2021)

本の目次

序章 SDGsと持続可能な開発
1.「コーヒー危機」と貧困
2.コーヒー生産で飢餓から脱する
3.コーヒーがもたらす健康と福祉
4.コーヒーがもたらす教育
5.コーヒー生産とジェンダー平等
6.コーヒー農園の安全な水
7.コーヒーとクリーンエネルギー
8.コーヒーが生み出す働きがい
9.コーヒーの技術革新
10.不平等をコーヒーで解決する
11.コーヒーとまちづくり
12.コーヒーをつくる責任と飲む人の責任
13.コーヒーの気候変動対策
14.コーヒーで守る海の豊かさ
15.コーヒーで守る陸の豊かさ
16.コーヒーで平等と公正を
17.コーヒーのパートナーシップ
おわりに

関連情報

テレビ出演:
ミガケ好奇心! 時事もんドリル「コーヒーのフェアトレード」 (NHK総合「週刊まるわかりニュース」 2021年5月29日出演)
https://www3.nhk.or.jp/news/special/maruwaka-migake/articles/article_48.html

ラジオ出演:
Future Design (InterFM897 Lazy Sunday 2021年7月3日)
https://www.interfm.co.jp/news/single/lazy07042021
https://mobile.twitter.com/interfm897_lazy/status/1411557082906562563
 
関連記事:
「絶滅の実」救ったコーヒーハンター おいしい一杯、守り続けるには (朝日新聞DIGITAL 2021年10月11日)
https://www.asahi.com/articles/ASPB872J0PB5UHBI01F.html
 
書評:
1杯のコーヒーを飲めばSDGsに貢献できる? わかりやすい! 17の緊急課題をコーヒーに置き換えて解説した本 (ダ・ヴィンチweb 2021年3月26日)
https://ddnavi.com/review/760297/a/
 
書籍紹介:
Jose. 川島 良彰 , 池本 幸生 , 山下 加夏 共著 「コーヒーで読み解くSDGs」 (MI CAFETO Japanオンラインストア)
https://shop.mi-cafeto.com/fs/micafeto/book04
 
特集 | 有識者たちが選ぶ未来をつくる本|サスティナブル・ブックガイド |『LEAVES COFFEE ROASTERS』オーナー/焙煎士|石井康雄さんの選書 3~5 (未来をつくるSDGsマガジン: ソトコト 2021年11月13日)
https://sotokoto-online.jp/sustainability/11016
 
スペシャルティコーヒーがSDGsに貢献できること (THE COFFEESHOP 2021年10月7日)
https://www.thecoffeeshop.jp/how-to-brew/sdgs-4goals/
 
ポストコロナの道標 SDGs本 (日刊ゲンダイDIGITAL 2021年8月5日)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/292879
 
今日の一書 (創価大学附属図書館 2021年6月17日)
https://lib.soka.ac.jp/todayBook/2021/20210617.html
 
いいことずくめ!コーヒー園が「ジェンダー平等」進めて得た「劇的な効果」 (FRaU 2021年4月7日)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/81963
 
書籍『コーヒーで読み解くSDGs』発売!コーヒーを通してSDGsを学ぼう (ストプレ! 2021年3月18日)
https://straightpress.jp/20210318/492386
 
イベント:
【3月13日開催】第54回コーヒーサロン コーヒーで読み解くSDGs (コーヒーサロン、日本サステイナブルコーヒー協会 2021年3月31日)
http://www.geoc.jp/activity/international/2664915.html
開催報告
http://www.geoc.jp/activity/international/2664917.html

 

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