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カラフルな四角の模様

書籍名

有斐閣ブックス 都市経済学

著者名

高橋 孝明

判型など

344ページ、A5判、並製カバー付

言語

日本語

発行年月日

2012年10月

ISBN コード

978-4-641-18406-0

出版社

有斐閣

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都市経済学

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この本は、都市経済学の基礎をわかりやすく解説したものです。
 
都市経済学は、都市においてどのように経済活動が営まれ、その結果どういった問題が生じ、それに対処するにはどのような政策が有効かを研究する学問分野です。日本だけでなく、世界中でますます多くの人が都市に居住するようになり、生産や消費の場として都市の重要性はいっそう高まっています。同時に、さまざまな都市問題が新たに生じたり問題の程度が深刻になったりして、その解決が社会の喫緊の課題になっています。このような理由により、都市経済学の果たす役割はますます大きくなっています。
 
もう少し具体的に内容を紹介しましょう。
 
第I部では、都市をどのように考えるべきか、議論しています。都市のもっとも基本的な要件が、相対的に狭い地域に多くの人口が集中している場所であると捉え、それを表す代表的な統計的地域を紹介します。次いで、なぜ経済活動が狭い地域に集中するのか、そのメカニズムを説明します。そこで重要なのが、「集積の経済」という概念です。近年、東京への一極集中の問題が議論されることが多くなっていますが、その問題を正しく把握するには、集積の経済を理解することが不可欠です。
 
次いで第II部では、都市の内部がどのような空間構造をもつかを、人々の自由な選択の結果として説明しています。居住者は、都心近くに立地して通勤費用を節約しつつ狭い家に住むか、あるいは、都心から離れたところに立地して通勤費用を多く負担する代わりに広い家に住むか、トレード・オフ (二律背反) の問題に直面します。その中で、もっとも自分にとって望ましい選択肢を選んでいるのです。その結果、たとえば、都心から離れるにつれて土地の地代が減少し、しかも減少の程度は段々と小さくなっていく、という現象が生じることを示すことができます。ここで展開する分析は、現在日本の地方都市が悩まされている中心市街地衰退の問題や、コンパクトシティー政策の意味を考える上で重要な役割を果たします。
 
最後の第III部では、都市経済を語る上で欠かせない三つの市場について議論しています。三つの市場は、土地と住宅、都市交通です。それぞれの市場について、価格と取引量がどのように決まるのか、そして、それらに影響するさまざまな経済政策がどのような便益と費用をもたらすのか、考察しています。大都市で土地の高度利用が進まない、中古住宅市場が発達しない、空き家が増えている、大都市の鉄道や地方都市の道路交通において混雑の問題が一向に解消されない、といったさまざまな都市問題を理解する手がかりが得られるでしょう。
 
以上、駆け足で内容を紹介しました。これを読む人は、例外なく、都市で生活しているか、あるいは何らかの機会に都市を訪れていると思います。つまり都市で経済活動を行っているのです。そういう意味で、都市経済学を学ぶことはきわめて自然なことだと思います。
 
 

(紹介文執筆者: 空間情報科学研究センター 教授 高橋 孝明 / 2021)

本の目次

序 章  都市経済学とは
 
第I部
第1章 都市と都市システム
第2章 生産者行動の理論
第3章 都市が存在する理由
 
第II部 都市内構造の理論
第4章 消費者行動の理論
第5章 都市内土地利用の理論I:消費者の選択
第6章 都市内土地利用の理論II:都市の空間構造
 
第III部 土地・住宅・交通──市場メカニズムと経済政策
第7章 政策的介入が必要な理由
第8章 土地市場
第9章 土地政策
第10章 住宅市場
第11章 住宅政策
第12章 都市交通
 
数学補論

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