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紫のグラデーションの表紙

書籍名

ASEAN Space Programs (ASEANの宇宙開発プログラム) History and Way Forward

著者名

Quentin Verspieren、 Maximilien Berthet、Giulio Coral、Shinichi Nakasuka、 Hideaki Shiroyama

判型など

208ページ、ハードカバー

言語

英語

発行年月日

2022年

ISBN コード

978-981-16-7325-2

出版社

Springer Singapore

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

ASEAN Space Programs

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本書はASEAN (東南アジア諸国連合) の宇宙開発プログラムについて包括的な分析を扱った初めての書籍である。地域の著名な関係者によって綴られ、単にASEANの宇宙技術開発とその利用についての歴史、現状、そして未来へ向けた計画を明かすだけでなく、実際にこの地域おいて宇宙開発プログラムを開始するための条件をも分析する。その分析にあたり、一方では発展途上国における宇宙開発プログラムを開始する妥当性とその動機を問い、他方ではASEANという非常に特殊な状況 (つまり、独特な地政学的生態系と巨大な経済的潜在力を持ち合わせた特有な政治的同盟によって形成された非常に災害の起こりやすい地域など) という二つのテーマに焦点をあてる。そして締め括りとして、この地域において確立された宇宙開発プログラム及び新興の宇宙計画について分析を行った後、宇宙への足がかりを得ようとする地域内外の発展途上国への具体的な提言を行うことで最後を飾る。よって、本書は宇宙技術分野の研究者や技術者だけでなく、宇宙機関や政府の政策立案者にとっても貴重な資料を提供するものである。
 
本書はASEANにおける宇宙技術の開発と応用の可能性を検討する重要性を序章において主張し、その後は
以下の構成で続く。
 
■ 第2章から第6章までは、タイを除く、すでに何らかの宇宙開発を実施している5カ国 (インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、ベトナム) の宇宙開発の歴史を、国名のアルファベット順で紹介。各章は、その国の国立宇宙機関や主要大学の著名な専門家により執筆されている。多くの場合、自国の宇宙開発プログラムの構築に直接携わってきた各著者が、以前公開されていなかった歴史的な発展の舞台裏からの見解を本書にて初めて明かす。
 
■ 次に、本書の核となる6章では、5カ国それぞれの歴史の詳細な横断的分析に基づき、確固たる宇宙開発プログラムを確立するための教訓とグッドプラクティスを詳細に纏める。カンタン・ヴェルスピレン (Quentin Verspieren) の執筆による第7章は、自国の宇宙開発プログラムの開始を意図するすべての国が即座に利用可能な教訓リストとなることを目指して綴られており、これが本書出版の最大の目的である。
 
■ 第8章では、マクシミリアン・ベルテ (Maximilien Berthet) とカンタン・ヴェルスピレンが残りの国々(アルファベット順でブルネイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー) の宇宙開発状況について解説。各国の宇宙技術開発・利用分野における過去の実績(該当する場合)の全体像ついて簡単に説明したあと、それらの初期の試みから得られた横断的な問題点と共通の教訓を概説する。
 
■ 上記に続く第9と10章では、ASEAN諸国の事例を超えた考察をもとに、宇宙分野への新規参入者に向けた客観的な提言を紹介する。
 
          ◇ 第9章では東京大学の髙橋涼平 (たかはし・りょうへい) と船曳敦漠 (ふなびき・のぶひろ) がカンサット (CanSat) やキューブサット (CubeSat) のトレーニングプログラムを通じた宇宙工学教育の豊富な専門知識に基づき、宇宙新興国の技術能力開発に関するさまざまな戦略を検討。
 
          ◇ そして第10章では、マクシミリアン・ベルテが自国で宇宙開発活動を開始しようとする途上国政府の多くが直面する重要な問題について取り上げる。すなわち、一部極度の貧困にあえぐ市民がいるなか、多くの場合多額の費用が要求される高度な宇宙技術に貴重な予算を向けつつ、その活動を一般市民といかに結びつけるのかという問題である。
 
■ 最後に、第11章では、国連アジア太平洋経済社会委員会のジュリエット・ブラズロー (Juliet Braslow)、ケリー・ヘイデン (Kelly Hayden)、そしてイングリッド・ディスパート (Ingrid Dispert) が、東南アジア諸国の社会経済発展とレジリエンスに向けて国連が行った宇宙技術応用の主流化を支援するための一連のイニシアティブを紹介する。
 

(紹介文執筆者: 公共政策大学院 特任講師 ヴェルスピレン・カンタン / 2022)

本の目次

1. Introduction: Why Space Matters in ASEAN (Quentin Verspieren and Giulio Coral)
2. Indonesian Space Policy, Regulations and Programs: Past Achievements and Future Prospects (Bagus Rahmadi Supancana)
3. Space Sector Development in Malaysia (Norilmi Amilia Ismail)
4. The Philippine Space Program: A Modern Take on Establishing a National Space Program (Rogel Mari Sese)
5. Singapore, a Sustained Ambition Towards a Commercial Space Sector (David Lit Xian Ho)
6. Vietnam: An Ambitious Satellite Development Program (Pham Anh Tuan and Le Xuan Huy)
7. Comparison of Established ASEAN Space Programs and Lessons Learned (Quentin Verspieren)
8. Other ASEAN Countries: Space Achievements So Far (Maximilien Berthet and Quentin Verspieren)
9. Concrete Recommendations for Space Development in Non-spacefaring Countries (Ryohei Takahashi and Nobuhiro Funabiki)
10. Connecting Space with Citizens of ASEAN: A Social and Policy Ecosystem for Sustainable Space Development (Maximilien Berthet)
11. The Role of the United Nations for Space Applications Development and Utilization in ASEAN (Juliet Braslow, Kelly Hayden, and Ingrid Dispert)
 

関連情報

ウェビナー:
ASEAN Space Programs: Policy Considerations  (Science, Technology, and Innovation Governance(STIG) Program Graduate School of Public Policy, The University of Tokyo  2022年2月8日)
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/en/events/z0116_00106.html

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