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書籍名

行政の実効性確保 行政代執行を中心として

著者名

宇賀 克也

判型など

516ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2024年12月

ISBN コード

978-4-326-40443-8

出版社

勁草書房

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行政の実効性確保

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行政機関には、国民の権利利益を保護するために、さまざまな監督権限が法律や条例により付与されている。しかし、本来、監督権限を行使して国民の権利利益を保護すべき行政機関がその行使を懈怠すれば、国民に被害が生じてしまうことになる。たとえば、薬品の製造販売を承認した後に、甚大な副作用が発生することが判明し、当該薬品の効能を考慮したとしても、当該薬品の製造承認を取り消す必要が明らかになったにもかかわらず、厚生労働大臣がその取消しを懈怠すれば、重篤な副作用による薬害が広がってしまうことになる。したがって、行政機関に付与された監督権限が適時適切に行使されることは、きわめて重要である。しかし、わが国では、行政機関に付与された監督権限が適時適切に行使されることを確保する仕組みが不十分であり、その結果、本来、行政により保護されるべき国民の生命、健康や環境が侵害される事態が稀ならず発生しているのではないかというのが、本書の根底にある問題意識である。そこで、本書では、行政に付与された様々な権限が実際に国民の権利利益を保護するために適時適切に行使されているのかを検証し、実際には、諸種の監督権限の実効性が欠如しているとすれば、その原因は何であるかを探求し、どのような改善策を講ずる必要があるかについて提言している。
 
序章では、本書の問題意識を明確にし、第1章で、行政の実効性を確保するための総論的な論点について指摘している。第2章は、本書の中心的部分であり、行政代執行について、行政代執行法の解釈論を詳細に展開している。第3章では、簡易代執行について解説している。第4章では、行政代執行が、一部の分野を除き機能不全に陥っている実態を明らかにし、どのような改善策を講ずべきかを、立法論と運用上の改善策の双方にわたって述べている。第5章では、行政上の間接強制金について、その効果的な活用のために、どのような制度設計が必要かについて論じている。第6章では、直接強制について、濫用を防止しつつ、効果的に活用すべき分野があることを明らかにし、そのための立法論を展開している。第7章では、行政上の強制徴収について論じている。そこでは、行政上の強制徴収が認められる場合には、民事執行はできないという理論への疑問も提起している。第8章では、国民に義務を課すことなく、直接に国民の身体や財産に対し行政機関が実力を行使する即時強制について論じている。第9章では、行政上の制裁について、刑罰、行政上の秩序罰、課徴金、公表、行政サービスの供給の制限について論じている。終章では、行政の実効性確保のための法整備をいかに行うべきかについて論じている。私は、わが国の行政法における喫緊の課題は、行政の実効性を確保するための法整備を行うことであると考えており、本書が、そのために何らかの寄与をすることができれば望外の幸せである。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 名誉教授 宇賀 克也 / 2025)

本の目次

文献略語
 
序  章 本書の問題意識
 第1節 本書の対象
 第2節 法制度の不備
 第3節 地方公共団体にとっての問題
 第4節 運用上のインフォーマル志向
 第5節 行政指導への過度の依存の原因
 
第1章 行政の実効性確保総論
 第1節 行政上の強制執行と司法上の強制執行
 第2節 戦前における行政上の強制執行についての学説
 第3節 戦前における行政上の強制執行に係る法制度
 第4節 行政執行法の見直し
 第5節 法律の留保
 
第2章 行政代執行
 第1節 行政代執行法の制定・改正
 第2節 行政代執行法の所管府省
 第3節 代執行の活用分野
 第4節 代執行実施体制の構築
 第5節 行政代執行法の内容
 
第3章 簡易(略式)代執行
 第1節 民法の公示送達
 第2節 簡易(略式)代執行に関する実定法の規定
 第3節 特別法説と独立法説
 第4節 調査義務
 第5節 簡易(略式)代執行における公告
 第6節 費用負担
 第7節 相続財産清算人の選任
 第8節 不在者財産管理人の選任
 第9節 条例による簡易(略式)代執行制度創設の可否
 
第4章 行政代執行の機能不全
 第1節 機能不全の原因
 第2節 機能不全への対策
 
第5章 強制金
 第1節 実効性
 第2節 罰則との併科
 第3節 代替的作為義務への適用
 第4節 不作為義務への適用
 第5節 金銭債務への適用
 第6節 賦課主体
 第7節 一般法方式と個別法方式
 第8節 全額決定型と日額加算型
 第9節 処分基準
 第10節 一律法定型と裁量決定型
 第11節 金額
 第12節 事前手続
 第13節 違法性の承継
 第14節 強制金支払義務の承継
 第15節 徴収手続
 第16節 代償強制拘留制度
 
第6章 直接強制
 第1節 直接強制のタブー化の理由
 第2節 個別法における直接強制
 第3節 直接強制法定化の必要性
 第4節 条例を根拠とする直接強制
 第5節 法律または条例に直接基づく直接強制
 第6節 一般法方式と個別法方式
 第7節 手続
 第8節 警察の協力
 第9節 費用
 第10節 簡易(略式)直接強制
 
第7章 行政上の強制徴収
 第1節 国税滞納処分の例による強制徴収
 第2節 民事執行による場合
 第3節 いわゆるバイパス理論の再検討
 第4節 調査権限
 第5節 行政手続法との関係
 第6節 徴収のためのマンパワー
 第7節 債務不履行者名簿(債務者目録)
 
第8章 即時強制
 第1節 警察官職務執行法
 第2節 個別法における即時強制
 第3節 代執行の機能不全への対応
 第4節 即時強制の補足性
 第5節 一般的根拠規範を設けることの是非
 第6節 手続
 第7節 警察への協力要請
 第8節 条例による即時強制
 第9節 即時強制に要した費用の負担
 第10節 私人による即時強制
 第11節 即時強制に対する救済
 第12節 即時強制と罰則
 
第9章 行政上の制裁
 第1節 行政刑罰
 第2節 行政上の秩序罰
 第3節 課徴金
 第4節 公表
 第5節 行政サービスの供給の制限
 
終  章 行政の実効性確保のための法整備
 第1節 包括的な行政執行法制
 第2節 司法的執行システムの可能性
 第3節 次善の策としての個別法の整備
 第4節 不可争力との関係
 第5節 適正手続
 第6節 比例原則
 第7節 行政過程の可視化と私人による法執行
 第8節 無過失責任の導入
 
判例索引
事項索引
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関連情報

書評:
須藤陽子 (立命館大学教授) 評 (『ジュリスト』1614号56頁 2025年9月号)
https://www.yuhikaku.co.jp/jurist/detail/021561
 
宇那木正寛 (鹿児島大学教授) 評 (『行政法研究』第60号351~362頁 2025年4月30日)
https://www.shinzansha.co.jp/book/b10134742.html

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