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彫刻の白黒写真

書籍名

悪魔崇拝とは何か 古代から現代まで

著者名

ルーベン・ファン・ラウク (著)、 藤原 聖子 (監修)、 飯田 陽子 (訳)

判型など

704ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2025年3月24日

ISBN コード

978-4-12-005909-4

出版社

中央公論新社

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悪魔崇拝とは何か

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2024年11月の情報TV番組 (『ワイド!スクランブル』) で、チリの「悪魔の神殿」教団が取り上げられた。伝統的なカトリック教会 (特に聖職者による子どもへの性的虐待) への不信が高まり、悪魔崇拝者が急増しているという内容だった。ただしこの教団では、実際に悪魔を崇拝しているわけではなく、「個人主義の象徴を悪魔としているにすぎない」と説明されていた。さらに、これはチリに限ったことではなく、2019年にはアメリカで「悪魔の神殿」教団が宗教団体として認定され、人工妊娠中絶を肯定していることから、中絶禁止に反対する人や性的少数者など、信者数は70万人以上に上ると番組は付け加えた。
 
この報道を観た人には、興味深いが、どういうことなのかさっぱりわからないと思った人が多かったのではないか。近年、悪魔崇拝の語がニュースに流れたもう一つの文脈はQアノンである。Qアノン陰謀論は、世界を牛耳る「ディープステート」は児童売春組織を運営する悪魔崇拝者だとしていた。つまり、子どもを性的に虐待するのは悪魔崇拝者だというイメージもまたアメリカに存在しているのである。このように報道は錯綜し、悪魔崇拝をいっそう謎めいたものにしている。
 
そのような謎を一気に解明してくれるのが本書である。なぜ「悪魔の神殿」教団は悪魔の実在を信じないというのに悪魔崇拝者を名乗るのか。なぜ悪魔は個人主義の象徴になったのか。なぜ悪魔崇拝は政治的にリベラルというイメージと恐ろしい秘密結社というイメージをともに引き起こすようになったのか。これらの疑問に対する答えはすべて本書の中にある。悪魔崇拝 (サタニズム) はこのように社会現象化しているため、好事家だけでなく社会情勢に関心を持つ人にもこれに関する知識は必須のものとなっている。
 
タイトルを見て、本書を悪魔崇拝への指南書だと受け取った人もいるかもしれないが、宗教学者による研究書である。オランダ人の著者による博士論文を元にしたもので、膨大な資料を丹念に検証し、世俗化論という宗教社会学の理論を参照枠組みにして練り上げたその内容は国際的に高く評価され、アメリカ宗教学会賞を受賞している。訳書では出版コストの面から注全体と序論の一部を省略せざるを得なかったが、関心のある学生の皆さんには原書) も参照することをお勧めする。悪魔崇拝研究は国際的には盛り上がりを見せており、本学 (人文社会系研究科) でもスウェーデンの研究者Par Faxneld氏を招き講演会を開いたところ、どこで聞きつけたのか、研究者のみならず外国人の実践者の人たちも集まり、異色の会となった。本書やFaxneld氏の研究は悪魔崇拝を相対化するものだが、実践者がそういった研究も積極的に受容するというところが、宗教学者には二重に興味深い。
 

(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 教授 藤原 聖子 / 2026)

本の目次

日本の読者のための序
第1章 キリスト教によるサタニズムの発明
間奏曲一〈18世紀――サタンの死?〉
第2章 ロマン派におけるサタンの復興
第3章 一九世紀の対抗文化におけるサタン
間奏曲二〈シャルル・ボードレール――サタンへの連禱〉
第4章 ユイスマンスと仲間たち
第5章 サタンのシナゴーグの暴露
第6章 サタンのシナゴーグの暴露――続きと結論
間奏曲三〈一九世紀の宗教的サタニズム――事実かフィクションか〉
第7章 二〇世紀への道筋
第8章 初期サタン教会の苦難
間奏曲四〈思春期サタニズム、メタル・サタニズム、サイバー・サタニズム〉
結 論
 

関連情報

原著:
Ruben van Luijk 『Children of Lucifer: The Origins of Modern Religious Satanism』(Oxford University Press 2016年6月23日刊)
https://academic.oup.com/book/11834

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