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表紙に大きな海の写真

書籍名

アジア太平洋地域におけるロッテルダム・ルールズ

判型など

439ページ、A5判、並製

言語

日本語

発行年月日

2014年2月10日

ISBN コード

978-4-7857-2145-9

出版社

商事法務

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2008年12月11日、国連総会において、「その全部又は一部が海上輸送である国際物品運送契約に関する条約」(いわゆる「ロッテルダム・ルールズ」) が採択された。へーグ・ヴィスビー・ルールズ、ハンブルグ・ルールズといった海上物品運送に関する既存の国際条約に対する新たなルールとして、2002年以来、国連国際商取引法委員会 (UNCITRAL) において審議が続けられてきたものである。同条約は、2009年9月23日、オランダのロッテルダムにおける記念式典において署名のために開放され、すでに25カ国が署名し、3カ国が批准しているが、さらにいくつかの国も批准のための国内手続を進めている。
 
ロッテルダム・ルールズは、96条からなる大部の条約であり、21世紀の国際物流に対応するべく、既存の海上物品運送にはみられない多くのルールを含んでいる。たとえば、電子商取引に関する諸規定、コンテナを用いた複合一貫輸送がなされた場合を想定した運送人の責任規定、運送品処分権や物品の引渡に関する規律、強行法規性に関する例外である数量契約の特則といったものである。私は、1996年以来、本条約の原案が万国海法会 (Comité Maritime International) において起草されていた段階から条約作成作業に関与を始め、条約案が国連国際商取引法委員会 (UNCITRAL) 作業部会において検討されるようになってからは、日本政府代表としてその審議に加わってきた。このため、国内外の関連業界や法律家に本条約に関する正しい理解を持ってもらう責任を感じていた。そこで、まず2010年に共著の形でMichael F. Sturley, Tomotaka Fujita and G.J. van der Ziel, Rotterdam Rules: The UN Convention on Contracts for the International Carriage of Goods Wholly or Partly by Sea, Sweet & Maxwellを刊行し、同時に、同条約の作成に深く関与した各国の専門家を集めた国際シンポジウムを企画した (2011年11月21、22日)。本書は、そのシンポジウムの内容を収めたものである。
 
第I部は、各国の専門家による条約の解説である。19の論稿が収録されているが、1. ロッテルダム・ルールズへの導入、2. ロッテルダム・ルールズの適用範囲と当事者の責任、3. ロッテルダム・ルールズにより規律される運送の諸局面、4. ロッテルダム・ルールズと関連業界、5. ロッテルダム・ルールズをめぐるアジア太平洋諸国の状況という5つのテーマにまとめられている。単に条文を説明するのではなく、条約の起草過程においてどのような利害対立があり、どのような解決が図られたか、条約が既存の運送実務にいかなる影響を与えるかといった点に立ち入った言及がなされている。
 
第II部は、14の具体的な設例をもとに、条約の解釈について各国の専門家が議論したものである。議論を通じて、現行法制と比べて、荷主・運送人の訴訟活動が、具体的にどのように変化するかという点が生き生きと描き出されている。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 藤田 友敬 / 2016)

本の目次

第I部

第1章 ロッテルダム・ルールズへの導入
1 国連国際商取引法委員会 (UNCITRAL) の役割と条約の現況 -- ルカ・カステラーニ [藤田友敬 訳]
2 変革の必要性と万国海法会 (CMI) の役割 -- スチュアート・ベア [藤田友敬 訳]
3 ロッテルダム・ルールズの基本的な要素と性格: 条約についての5つの標語 -- ラファエル・イエスカス [藤田友敬 訳]

第2章 ロッテルダム・ルールズの適用範囲と当事者の責任
4 適用範囲と契約の自由 -- マイケル・スターレイ [笹岡愛美 訳]
5 責任期間、複合運送的側面及び履行者 -- 藤田友敬
6 運送人の義務と責任 -- ハンヌ・ホンカ [藤田友敬 訳]
7 荷送人の義務と責任 -- 金仁顯 [藤田友敬 訳]

第3章 ロッテルダム・ルールズにより規律される運送の諸局面
8 運送書類及び電子的運送記録 -- スティーヴン・ガーヴィン [藤田友敬 訳]
9 運送品処分権と権利の譲渡 -- 宋迪煌 [藤田友敬 訳]
10 運送品の引渡し -- ヘルトヤン・ファン・デル・ツィール [後藤 元 訳]

第4章 ロッテルダム・ルールズと関連業界
11 運送人から見たロッテルダム・ルールズ -- 早坂 剛
12 荷主から見たロッテルダム・ルールズ -- 平田大器
13 フレイト・フォワーダーから見たロッテルダム・ルールズ -- 山口修司
14 保険者から見たロッテルダム・ルールズ -- 石井 優

第5章 ロッテルダム・ルールズをめぐるアジア太平洋諸国の状況
15 中国人民共和国 -- 宋 迪煌 [藤田友敬 訳]
16 日本 -- 藤田友敬
17 大韓民国 -- 金 仁顯 [藤田友敬 訳]
18 シンガポール -- スティーヴン・ガーヴィン [藤田友敬 訳]
19 アメリカ合衆国 -- マイケル・スターレイ [藤田友敬 訳]

第II部 ワークショップ ロッテルダム・ルールズの解釈と運用 [藤田友敬・後藤 元・笹岡愛美 訳]

 設例1 運送人の義務: 現行船荷証券に挿入されている裏面約款条項の有効性
 設例2 責任期間
 設例3 運送人の義務・責任とFIO条項
 設例4 運送人の責任 (1): 基本的な問題
 設例5 運送人の責任 (2): 延着・滅失・不履行
 設例6 運送人の責任 (3): 物品にかかわるさまざまな責任と条約の規律
 設例7 運送人の特定
 設例8 運送契約をめぐる様々な関係人: 運送人、履行者、代理人等
 設例9 海事履行者の責任 
 設例10 複合運送と限定的ネットワーク原則 
 設例12 物品の受取義務
 設例13 物品の引渡し
 設例14 数量契約

資料 全部又は一部が海上運送による国際物品運送契約に関する国際連合条約 [池山明義 訳]

第III部 <資料> ロッテルダム・ルールズ条文対訳表

関連情報

英語版:
『The Rotterdam Rules in the Asia-Pacific Region』(英語版 アジア太平洋地域におけるロッテルダム・ルールズ) (商事法務刊 2014年11月)
https://www.shojihomu.co.jp/publishing/details?publish_id=2550&cd=2222&state=new_and_already2550

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