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グレーがかったベージュ一色の表紙

書籍名

平成財政史 平成元~12年度 第5巻 国債・財政投融資

著者名

財務省財務総合政策研究所財政史室編 (編)、 第1部: 国債 釜江 廣志 (執筆)、 第2部: 財政投融資 持田 信樹、 永廣 顕 (執筆)

判型など

596ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2015年12月17日

ISBN コード

978-4-7547-2278-4

出版社

大蔵財務協会

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第5巻 国債・財政投融資

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これまでわが国の大蔵省・財務省は、明治初めの同省設立から昭和の終わりに至るまでの同省の活動時歴を、絶えることなく記録した財政史のシリーズを刊行してきている。『明治財政史』、『明治大正財政史』、『昭和財政史 - 終戦から講和まで』などがそれである。このように近代国家成立以降の財政金融の歴史記録を財政当局が自ら一貫して記述刊行しているのは世界的にもほとんど例がなく、日本の誇るべき貴重な文化遺産となっている。本書は、その伝統を絶やすことなく受け継いで、平成元年から12年度までの財政活動を描きだすべく企画・実施された第7次シリーズ (全12巻) の一環として刊行されたものである。
 
対象期間となった12年間は昭和から平成への改元と、中央省庁再編の一環として大蔵省が財務省に変わったという財政史上の画期を考慮したもので、官庁の歴史叙述としては妥当な時期区分といえる。この期間はまた東西冷戦体制の崩壊とグローバリゼーションの急展開という世界の激動の中にあって、いわゆるバブル経済とその崩壊、それに続く失われた10年などと呼ばれる経済不況の継続と金融危機・財政難の時代であり、政治的には単独政権から多党並立の政治へ転回するなど、多事多端の年月であった。
 
その間の大蔵省理財局を中心とした国債・財政投融資の事務事業で記録されるべき重要な事柄について、本書は財務省やその他の各機関の所蔵する原資料にもとづいて、正確かつ詳細な歴史記述を行った。それには、行政上の参考とするのみならず、学術研究にも役立てることが意図されている。そのためにわれわれは最終的に実施された政策のみならず、政策立案過程についても可能な限り正確に記述することに務めた。
 
平成不況の時代、大蔵省理財局を中心にした国債・財政投融資の役割がいかに重要で、いかに知恵と工夫をこらして苦闘してきたかは、本書を読めば一目瞭然とするだろう。第1部「国債」では不況克服のため国債の大量発行が余儀なくされていった過程が克明に描かれている。この時代に求められたのは適切な国債管理政策であった。銘柄の多様化であるとか、先物・オプションなどの国債デリバティブ取引の進展などがそうであるが、これらについて本書は詳述している。
 
また第2部「財政投融資」は平成不況の時代に「第2の予算」である財政投融資がどのような役割を果たしたのかを原資料にもとづいて克明に記録すると同時に平成13年に結実した財投改革についてはじめて政策立案過程にまで踏み込んだ歴史記述を行っている。財投の制度改革は昭和末にはじまっていたが、抜本改革が実施されたのは平成13年4月である。それは戦後の財政史上の画期というべきものであり、行政上の参考とするのみならず、学術研究にも役立てることが期待される。
 

(紹介文執筆者: 経済学研究科・経済学部 教授 持田 信樹 / 2016)

本の目次

第1部 国債
 第1章 平成元年から平成12年度までの国債・政府保証債の推移
 第2章 国債発行をめぐって
 第3章 政府保証債その他の発行状況
 第4章 大量発行の持続
 第5章 市場との対話の進展
第2部 財政投融資
 序章 経済の長期停滞と財政投融資
 第1章 金利変動期の財政投融資
 第2章 平成不況期の財政投融資
 第3章 金融不安定期の財政投融資
 第4章 財政投融資の抜本改革

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