東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

上部が白、下部が朱色のシンプルな表紙

書籍名

ラテン語の世界

判型など

292ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2016年3月

ISBN コード

978-4-595-31609-8

出版社

放送大学教育振興会

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ラテン語の世界

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放送大学の教材として書かれ、15回のラジオ講座を補足する著書であるが、単独で通読することも想定されている。放送大学の授業としてラテン語が取り上げられるのは初めてということもあり、他の語学と比べてラテン語の特徴は何かという観点から、ラテン語 (文字、発音、文法、文学) の概観が歴史的背景と文化的意義を含めて論じられている。内容は著者自身の研究発表というより、最新の語学研究と教育経験に基づいた概観であるが、本書の構造は一般の語学教科書とは大いに異なっている。それは「ラテン語を学ぶ」というより「ラテン語について学ぶ」ことを目的としたからである。その内容と構造によって、この教科書は予備知識がなくラテン語について初めて読む読者のためにも、本格的なラテン語学習を目指す読者のためにも、そしてラテン語をすでに学んでその知識を深めながら整理したい読者のためにもそれぞれ得るところがあると思われる。
 
ラテン語の文字はいうまでもなく「ローマ字」である。その名称からも推測できるように、現在世界中の多くの言語に使われているローマ字はラテン語の文字にその起源を持ち、そのさまざまな字体と発音も時代とともに変化したラテン語の文字と発音とに無関係ではない。言い換えればラテン語の文字と発音とその歴史変化についての知識は欧米の文字文化と言語文化を知るためにも基礎的な意味を持つ。従ってこの著書では文字と発音に一つの重点を置き、それを複数の箇所でさまざまな観点から取り上げた。
 
もう一つの (ページの過半数を占める) 重点は文法の構造にある。ラテン語の語尾変化 (名詞・形容詞・代名詞の格変化と動詞の活用) と構文はイタリア語、フランス語、ドイツ語、英語などに比べてより複雑で、より「論理的」とも言われるが、その学習は現代ヨーロッパ諸言語の学習にも大いに役立つと言える。習得より概観を目指す本書では文法を従来の教科書と少し違う配列で整理した。それをもって読者は短時間でラテン語文法の特徴を把握することができる。
 
この二つの大きなテーマ以外にラテン語の古典文学のジャンルと主な作家を概観した。また古典文学の中で大きな割合を占める韻文を単独の章として取り上げ、その構成 (古代ギリシャ語の模倣から成立した、音節の長短に基づくリズム構造)、基本形式と文学ジャンルにおける応用を紹介した。
 

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 教授 ヘルマン・ゴチェフスキ / 2017)

本の目次

1. ラテン語事始め
2. ローマ字・母音・動詞の基礎
3. 文字 I (J) ・表音文字の発展・子音
4. 名詞・形容詞・代名詞の性・格・数とその応用の基礎 (I)
5. 名詞・形容詞・代名詞の性・格・数とその応用の基礎 (II)
6. 文字 V (U) ・音節・前置詞・受動文
7. 文字C/K/Q・長短母音と二重母音の歴史変化・分詞と動形容詞
8. 比較級と最上級・ラテン語の綴りの特徴と変化
9. 音節の長短とラテン語の単語のアクセント
10. 動詞の時制 (直説法)
11. 母音の変化、合併と消去・副詞と数詞
12. 古典の韻文の朗読法
13. 動名詞・動形容詞との関係・目的分詞・「対格 (主格) + 不定法」
14. 動詞変化の概観・接続法の形式と主文における応用
15. ラテン語の文

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