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ライトブルーの表紙

書籍名

国際租税法 [第4版]

著者名

増井 良啓、 宮崎 裕子

判型など

344ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2019年12月20日

ISBN コード

978-4-13-032393-2

出版社

東京大学出版会

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国際租税法 [第4版]

その他

2019年12月20日第4版発売 (更新: 2019年12月)

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経済活動はグローバルに展開しています。しかし、税制はローカルです。各国がバラバラに税制を立法し執行すると、同一の経済活動に対して、複数の国が何度も課税したり、どの国も課税しなかったりする現象が生じます。これに対処するため、19世紀末から、各国の国内法と各国間の条約において、さまざまな工夫がなされてきました。これが、「国際租税法」と呼ばれる分野です。
 
本書は、国際租税法の入門書です。所得課税を中心に国際課税特有の言葉遣いやしきたりについて丁寧に解説し、入口でつまずかないよう心がけました。また、法令や条約の規定を読めばすぐにわかるような情報の羅列をできるだけ省き、はじめて学ぶときに理解しにくいところや、構造的に難しい勘所に力点を置いています。本書の原型は、2006年度冬学期に東京大学法科大学院で私たちが共同で担当した授業のための教材です。これを2008年に一書にまとめて公刊し、2011年に第2版とし、2015年に第3版としました。
 
本書には、学習上のねらいが2つあります。ひとつは、国内法と租税条約を立体的に理解することです。いまひとつは、課税ルールを事例にあてはめつつ、複数の論点相互の関係を横断的に理解するための訓練を行うことです。このねらいを具体化するため、章立てを次のように工夫しています。
 
まず、第1章と第2章で、国内法と租税条約の骨格を概観します。
 
第3章から第6章では、日本国が所得の「源泉地国」として課税する場合の課税ルールを学びます。ここでの中心的な問題は、外国企業が日本に進出して所得を稼得する場合に、日本の所得税や法人税の課税がどうなるかです。第6章は、大学院生のYさんと、国際租税法を教えているM先生が、事例をめぐってディープな対話を行う形式になっており、応用力を養うためにうってつけです。
 
第7章以降では、日本国が納税義務者の「居住地国」として課税する場合を検討します。第7章と第8章で日本企業の対外進出を扱い、第9章と第10章で多国籍企業の資金調達と移転価格に触れます。第11章の対話篇では、再びYさんとM先生が登場して、ここまで学んできたルールをさらに掘り下げつつ、国際課税の実務でしばしば登場する課題に取り組みます。
 
最後に、第12章は、国際的な企業再編を素材として、一段高いステップへの導入を行います。
 
こうして、この本の全体を通読した読者は、国際課税ルールの骨格について、国内法と条約の両面から立体的・横断的に把握できるようになっているでしょう。とりわけ、事例をめぐるYさんとM先生の対話を読むと、実務で欠かせない論点発見 (issue spotting) や問題解決 (problem solving) の訓練になります。これは、随所に配置したクイズ・練習問題・コラム・文献解題と相まって、本書の特色となっています。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 増井 良啓 / 2018)

本の目次

第1章  国際租税法への招待
第2章  租税条約
第3章  国内源泉所得
第4章  外国法人・非居住者の投資所得に対する源泉徴収
第5章  外国法人・非居住者の事業所得に関する申告納付
第6章  半歩先の法律談義1――AOA導入後の多国籍企業グループの日本進出
第7章  外国税額控除
第8章  内国法人の対外進出における外国子会社
第9章  移転価格税制
第10章  多国籍企業の資金調達
第11章  半歩先の法律談義2――内国法人による対外進出とハイブリッド・エンティティ
第12章  一歩先へ――国際課税における日本の租税法と外国法との相互作用
考え方のヒント
参考文献
判例索引
和文索引
英文索引
 

関連情報

書評 (初版):
青山慶二 評 『国際税務』28巻11号29頁
谷口勢津夫 評『自由と正義』60巻3号124頁
 
書評 (第2版):
渡辺裕泰 評『国際税務』32巻1号103頁
 
書評 (第3版):
仲谷栄一郎 評『日経産業新聞』2015年12月18日
 
本書の第3版は、ソウル市立大学校Jaeho LEE教授らのグループにより、韓国語に翻訳された。
국제조세법 / 増井良啓, 宮崎裕子저자 ; 조윤희[ほか]옮긴이 (서울 : 세경사 2017)
http://www.joseilbo.com/news/htmls/2017/06/20170627328621.html
 

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