
書籍名
レジリエンス工学入門 「想定外」に備えるために
判型など
160ページ、A5判
言語
日本語
発行年月日
2017年7月
ISBN コード
978-4-8171-9624-8
出版社
日科技連出版社
出版社URL
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レジリエンスとは弾性、しなやかさ,回復力といった意味を有する言葉であるが、専門用語としてのレジリエンスは、システムが変化や擾乱を吸収して正常な機能や平静を保つ能力を意味する。特に日本でレジリエンスが使われるようになったのは、2011年3月11日に東北地方を襲った東日本大震災とそれに伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故を経験して以降である。震災後に成立した安倍政権は、重要政策の1つとして災害や危機に強い国作りを目標とする国土強靭化をかかげているが、この政策の一貫として「国土強靭化基本法」が成立し、国や地方自治体が「国土強靭化基本計画」の策定と定期的見直しを行うことになった。政府はこの国土強靭化にナショナルレジリエンス (national resilience) の訳語をあてている。
大規模テロやリーマンショックを経験し、諸外国においても専門家や政策担当者の間でレジリエンスという用語が盛んに使われるようになった。現代社会を襲うさまざまな脅威は、国家の成長や国民生活へ深刻な障害となるという認識が国際社会で高まっており、国全体を単位としたナショナルレジリエンスの考え方が提唱され、その強化策が国際的な場で議論されるようになった。このようにレジリエンスは現代社会にとっての重要課題になりつつある。
東京大学大学院工学系研究科では、東日本大震災の直後に「震災後の工学は何をめざすのか」と題する提言を公表し、震災後の日本において工学の果たすべき使命を提示した。この中で、編著者らはレジリエンスをシステムに造り込むための方法論である「レジリエンス工学」の必要性を論じ、2013年4月にはレジリエンス工学の教育研究を主導するために、工学系研究科に「レジリレンス工学研究センター」を新設し、活動を開始した。この活動に関連する研究成果をふまえ、レジリエンス工学を俯瞰的に紹介することを目的として著したのが本書である。
レジリエンスを議論するためには、ハードな人工物に関する理工学系の分野はもちろん、人間、社会、経済、法制度などにまたがる分野横断的なアプローチが必要である。取り扱うテーマが広範囲に及び、レジリエンス工学がきわめて分野横断的である。本書では、このようなレジリエンス工学の分野横断的性質を現すような構成になっており、レジリエンス工学の誕生経緯を解説した後、自然災害、都市における重要社会インフラ、エネルギーシステム、金融マーケット、途上国投資に関するレジリエンスが取り上げられている。
(紹介文執筆者: 工学系研究科 教授 古田 一雄 / 2018)
本の目次
2. 自然災害とレジリエンス
3. 重要社会インフラのレジリエンス
4. エネルギーシステム
5. 強靭な金融システム
6. インフラ整備プロジェクトのレジリエントな制度設計